万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日本版CDC法案が示唆する忍び寄るリスク

2023年05月29日 13時12分55秒 | 国際政治
 今月5月18日、日本版CDC法とも称される「国立健康危機管理研究機構」を設立する法案が衆議院を賛成多数で通過しました。自民、公明、日本維新の会、国民民主各党など、日本国内の凡そ全ての政党が同法案に迷わず賛成票を投じたのですが、同法案に対して慎重な審議を促したり、疑問を呈する政党が殆ど存在していない現状にはどこか空恐ろしさが感じられます。何故ならば、同法案には、幾つかの問題点が潜んでいるように思えるからです。

 先ずもって指摘すべきは、同機構の設立は、日本国に対するアメリカによる内政干渉ではないか、という疑問です。日本版CDCの設立は、昨年5月23日に同国のバイデン大統領が訪日した際に、日米首脳会談後の記者会見の席で同大統領の口から公表されています。新型コロナウイルス感染症への対策として、日本国自らが発案したのではなく、いわば‘外圧’による押しつけられた形となります。ところが、露骨なまでの強要にも拘わらず、与野党問わず、日本国の政党は揃って従順な‘イエス・マン’に徹しているのです。

 第2に挙げるべき疑問点は、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の設立経緯から見出すことができます。そもそも、アメリカのCDCとは、第二次世界大戦後にあって、戦争分野におけるマラリア対策(Malaria Control in War Area: MCWA)のプログラムを引き継いで設立された機構です。マラリアは、蚊を介して感染しますので、同センターのプログラムではDDTといった殺虫剤の大量散布などが行なわれていました(蚊については、かのビル・ゲイツ氏も強い関心を示している・・・)。因みに、DDTには、開発当初は人体に対しては安全な殺虫剤とされ、戦後、日本国でもシラミ対策として散布もされましたが(都市部では軍用機による空中散布も・・・)、後に毒性が判明したことで多くの諸国で禁止されることになったという経緯があります。CDCは、その出発点からして戦争との関連性が見られるのです。

 もっとも、今日、CDCは、マラリアのみならず、ペストなど様々な感染症に活動領域が拡大すると共に、中心的な研究分野も、害虫駆除から医療やバイオテクノロジーに移っています。しかしながら、同センターは、その本質において感染症の研究に留まらず、MCWAから実践的な感染症対策を伴うという側面を引き継いでいます。今日、日本版CDC法案の成立に日本国民の多くが漠然とした不安感を覚えるのも、感染症対策の手段としてワクチン接種等が強制される事態が懸念されるからなのでしょう。実際に、同法案の第23条では、「国立健康危機管理研究機構」は、医療の提供(二)も、研究開発の成果の普及や政策提言(一一)もできるとされています。

 なお、CDCは軍事分野に始まったためか、同センターは、生物兵器に利用される可能性のある病原体について格付けを行なっています。最も危険なカテゴリーAとしては、は炭疽菌、ペスト菌、ボツリヌス菌、野兎病菌、天然痘ウイルス、各種出血熱ウイルスなどが挙げられています。CDCも含めてサル痘のリスクが警告されている中、天然痘ウイルスを保管しているのはロシア国立ウイルス学・生物工学研究センターとアメリカのCDCのみとされところも、どこか気に掛かります。

 ウイルスや細菌の研究は、人々の命を救うという天使の顔と生物兵器に使う、あるいは、マッチポンプ式のビジネスに悪用するといった悪魔の顔の両面を持ち得るのですが、CDCは、ウイルス研究機関としてバイオセーフティーレベル4(BSL4)の研究施設を備えています。BSL4は武漢ウイルス研究所でその危険性と存在が知られるようになりましたが、同法案によって「国立健康危機管理研究機構」に吸収される国立感染症研究所も、レベル4の研究施設です。新型コロナウイルスの流出が疑われている武漢でのウイルス研究にはアメリカが出資していたとする説やウクライナにも同様のバイオ研究所があったとする指摘もあり、全世界のウイルス研究は、世界権力のコントロール下に置かれているのかもしれません。この問題は、アメリカ、並びに、CDCの信頼性に深く関わるのですが、コロナ・ワクチンの健康被害を考慮しますと、日本国内でも悪魔が顔を覗かせるリスクが皆無なわけではありません。

 第3に指摘し得るのは、金融財閥の利権との関係です。MCWAが設立された第二次世界大戦当時、マラリアの撲滅については、国際連盟並びにロックフェラー財団が積極的に後押していたそうです。日本版CDCとなる「国立健康危機管理研究機構」の設立に際しても、バイデン大統領のさらに背後には、グローバルな医療・製薬利権の‘親玉’としての世界権力の意向が働いていたとも推測されます。因みに、「国立健康危機管理研究機構」は公益法人でありながら、どうしたわけか全額政府出資の資本金を有しており、この株式会社風の組織形態にも謎があります(民営化可能な形態?)。

 以上にCDCとの関係から「国立健康危機管理研究機構」の新設に際して懸念される問題点について述べてきたのですが、国民の命に直接的に関わるような重要法案でありながら、日本国の政界のあまりの無反応あるいは思考停止ぶりに、国民のあずかり知らぬところで何者かの思惑が蠢いているように思えてならないのです(つづく)。

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