万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

「イスラム国」問題-移民推進はハイリスク・ハイコストでは?

2014年08月31日 15時25分05秒 | 国際政治
ヤジディ教徒女性売られる=イスラム国拉致、結婚相手に(時事通信) - goo ニュース
 中東で勢力を増す「イスラム国」は、その構成員に欧米諸国出身者が多数含まれていることから、現在の国際社会の問題の一端を映し出してもいます。

 欧米諸国は人権先進国でもあり、ことの他、人々の基本的な権利や自由の保護に熱心です。ところが、「イスラム国」では、ヤシディ教徒の女性を拉致しては結婚相手として売っており、公然と人身売買が行われています。このことは、たとえ欧米諸国で高いレベルの教育を受けたとしても、その効果は限定的であり、むしろ西欧社会や文化への反感から極端な行動に走るケースがあることを示しています。おそらく、「イスラム国」に加わった欧米出身の若者は、自らの意思で移民した一世ではなく、二世や三世が多数を占めているのでしょう。しばしば指摘されているように、二世や三世ほど、社会的な疎外感を抱きやすく、自己のアイデンティティの模索の果てに、国籍国ではなく親の出身国やコミュニティーに帰属意識を持つケースが多いそうです。この結果、復讐心にも似た感情で国籍国を攻撃したり、出身国への回帰を図ることで自らの存在価値を取り戻そうとする若者が現れることになるのです。この問題は、「イスラム国」に限られたことではなく、世界各地に見られる現象です。多文化共生主義者は、異文化間や異民族間には摩擦がないことを想定していますが、現実の人間は、理想通りに行動するわけではありません。移民政策を推進すればするほど、社会が不安定化し、テロなどによる治安の悪化で人々の安全を護るにも相当のコストを要することになりかねないのです。

 この問題から推論できることは、移民推進は、ハイリスク・ハイコストではないか、ということです。各国とも、内部に、異質、かつ、攻撃的な集団や個人を抱え込んでしまうのですから。政治家の一部やマスコミは、移民推進の論陣を張っておりますが、目前で繰り広げられている理想とはかけ離れた現実を、しっかりと見据えるべきではないかと思うのです。

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4 コメント

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Unknown (ねむ太)
2014-08-31 19:48:41
こんばんは。欧州で普通の青年が、ある日いきなり自爆テロを実行した事がスポットニュースに流れていました。
欧州生まれの欧州育ちで、イスラームとは接触した事が無い・・・調査をしたところ、ネットを通じてイスラームの思想に取り込まれていたとか。
イスラム国を名乗る集団は、誘拐だけではなく、宗教の改宗を迫り従わない者は殺害しています。
脳天気に、多文化共生などと、宗教の持つ本当の怖さを知らない子供の戯言にしか過ぎません。
イスラームでも旅行者を教会に泊めたり、食事を振る舞ったりシてくれる宗派もありますが、イスラーム教の狂信者は宗派の違い、他宗教を絶対に認めない偏狭さがあります。
ジーハードを、我が国では聖戦と訳していますが、実際のジハードは、マホメットがメッカを目指す際に近くを通りかかった砂漠の隊商を襲い、金品を強奪した事を指します
数十年前に「悪魔の詩」を翻訳した人物が殺害された事件がありました。
狂信者の本当の怖さは、自由主義国では考えにくい事ですが、コーランの言葉一つ、マホメットの言葉一つの翻訳でも、彼らの意図することと違えば地の果てまで追われ殺されるという事です。
此のように厳密でなくても、民族によって生活習慣や文化の違いは存在し、こちらからすれば些細な事でも相手にとっては絶対に譲る事の出来ない事は多々有ります。
朝鮮通信使の行列を復活させようとする自治体が、いくつか有りますが、自治体や関係者が考えているのは、朝鮮通信使と言いながら、オランダやポルトガルの使節の行列であり、朝鮮通信使を歴史資料をもとに再現しますと韓国が激怒する事は目に見えた事です。
韓国に阿ろうとすれば、朝日新聞の書いたように「福島の事故で東電職員は逃げ出した」となりますし吉田調書を正確に読めば産経新聞の書いたように「福島の事故の際、げんばから逃げ出したのではなく、福島第二に待避した、所長命令を守った」という事になります。
朝日新聞のソウル支局には朴槿恵大統領から、韓国の名節の秋夕を祝う菓子折りが届いたとか。
産経新聞の支局長は検察の取調べ中。
朝日新聞が、どこの新聞社かよく分かるエピソードですね。
ほんの些細な行き違いでも民族の深刻な対立に発展する事があります。
我が国が移民や他民族に対して警戒心が薄いのは、島国ということもあり、大陸や他民族・他文化に対する憧憬が昔から強かったのかもしれません。
島国であった為に異国に憧れ、異国の文化を取り入れ、独自の工夫を凝らし、よりよいものを作り出す。
それが、外国からの旅人に喜ばれ世界に拡散してゆく。
此のように文化の面での融合は結構なのですが、それを拡大し、移民の受け入れや他文化共生などの寝言は、夢の中だけにしておくべきでしょう。
移民を言い出した、入管の坂中という無責任な官僚も「移民受け入れで、どのような混乱が生ずるか予測がつかない」と、無籍に極まりない発言をしています。
要するに、学歴だけの馬鹿が、欧州や米国の現状を見ることもなく、我が国を自分達の学んだ知識の社会実験に使おうというのが本音のようです。
これだから、試験馬鹿は使い物にならないのですが。
竹中センセのメイドを雇う・・・普通に考えてメイドやお手伝いさんが必要な住宅は、寝室が10以上あり、部屋数も多い豪邸ではないでしょうか。
3LDKや4LDKくらいのマンションであれば、人手を雇うより自分で掃除したほうが早い。
子供向けの、グリム童話やアンデルセン童話から始まって、古典文学は本で読むより、映画やアニメで済ませ、本を読む、ラノベと呼ばれる軽いタッチのSF小説程度・・・
竹中センセ程度の人間にに馬鹿にされても仕方ありませんね。
一番重要なのは、古典文学であり、小説といえども時代背景や舞台となる背景の描写から、それぞれの国の文化の違い、歴史的背景の違いを読み取り考えねばならないのです。
文化や歴史的背景を知る為に大切な文学を、アニメやビデオで済ませれば、地球は一つ、君も私も地球市民などという脳天気な人間が増えるのも当然です。
米国に今も根強く残る人種差別、欧州での深刻な民族対立、イスラム国の台頭による中東の混乱など、残酷すぎるほどの現実から目を逸らさず、移民だけではなく、国の安全保障のあり方についても真剣に考える事が大切です。
真面目に考えれば、民主党・社民・共産などには投票できないはずなのですが。
不思議です。

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ねむ太さま (kuranishi masako)
2014-08-31 20:14:41
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 移民とは、外部の対立を内部に持ち込む経路ですので、当然に、社会内部に民族や宗教などを軸とした様々な対立要因が増加します。この現象は、誰でも容易に理解できることなのですが、移民推進派の人々に限って、無視を決め込もうとしています。しかも、現実には失敗例の方が多く、この政策を選択した諸国では、自らの誤りを認めております。にも拘らず、聞く耳を持とうとしないのですから、狂信的ですらあります(あるいは、自らが移民であるのかもしれない…)。国民は、狂信者を政治家という公職に就けてはならなず、選挙に際しては、帰化の有無を含めて、候補者に対する的確な人物評価を行ってゆく必要がありそうです。
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オウム真理教に似ている (Unknown)
2014-09-01 09:06:18
 オウム真理教が仏教だと言われると、仏教徒は怒るのじゃないか?リクルートの仕方も似ている。移民の二世、三世とは限るまい。移民の問題と言うより、欧米青年の閉塞感のほうが影響している可能性が高い。そのうち、日本人も参加しているとわかるかもしれない。ユカワと言う人が対立するけど、やはり武装組織に参加していたのじゃないか?
 イベリアからチムールの領土まで支配すると主張しているので、欧米人の恐怖感を煽っている。これで、フフンと臭う。ペルシャ帝国、オスマン帝国、イスラム帝国は欧米人の恐怖の対象だ。イランを欧米、イスラエルが苛めるのは、ペルシャ帝国の幻影のためだ。親米の駒であったサダムを殺したのも大量破壊兵器のせいではない。ネブカドネザル、大バビロニア構想のためだ。ユダヤ人にとっては恐怖だろう?
 日本が戦争を仕掛けたのではないと主張するイギリス人記者がいたそうだ。本が出ている。五族協和、大東亜共栄圏構想にアメリカはモンゴル帝国の再来の可能性を見たのだ。欧米人、最大の恐怖だ。ポーランドまで行っていたが、クリルタイがなければイベリア半島までモンゴルに支配されたであろう?
 長大な規模で歴史を見ることだ。移民などと言う小さなことではない。
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Unknownさま (kuranishi masako)
2014-09-01 13:00:47
 仮に、欧米の方々が、ペルシャ帝国、イスラム帝国、オスマン帝国、モンゴル帝国…といった過去の帝国の復興を怖れているとしますと、移民こそ、大問題なのではないでしょうか。内側から切り崩され、外部の”帝国”に取り込まれてしまう可能性があるのですから。かの西ローマ帝国滅亡も、ゲルマン所属を含む多民族化による内部崩壊の歴史でもあります(末期には、”ローマ人”がいなくなる・・・)。歴史は、移民問題が、決して小さな問題ではないことを教えております。
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