万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

介護人材不足問題には別の解決方法があるのでは?-海外人材受け入れを既成事実化する日本国政府

2018年07月25日 15時13分13秒 | 日本政治
 本日の日経新聞の一面には、日本国政府が、介護士不足問題の解決策として、ベトナムとの間で締結されている経済連携協定(EPA)の技能実習生の受け入れ枠を拡大し、20年には1万人を受け入れる方向で、ベトナム政府と合意したとする記事が掲載されていました。外国人労働者という事実上の‘移民問題’については、日本国内では議論が始まったばかりのはずなのですが、政府の側は、既に諸外国に‘根回し’をし、着々と既成事実化を進めているようです。

 この方針、おそらく、日本国政府と言うよりも、何らかの事業者利益、あるいは、国際圧力が背後にあるものと推測され、既に「アジア健康構想」の名の下で、アジア各国から介護人材を受け入れる計画が進行しています。今後は、ベトナムのみならず、インドネシア、カンボジア、ラオスなどの東南アジア諸国からも受け入れを予定しているそうです。一般の日本国民が政府に頼んだわけでも、自民党が選挙公約に掲げたわけでもないにも拘わらず…。‘推定’の数値を付して介護人材不足を挙げれば、‘恩恵を受けるのは国民’というもっともらしい理由も付けられますので、政府は、国民の合意がないままに‘移民政策’を押し付けられると考えているのでしょう。

 しかしながら、介護人材不足の唯一の解決策は、外国人労働者の受け入れなのでしょうか。政府は、そのように決めつけていますが、最近の健康や長寿に関する医療、栄養学、リハビリ技術等の日進月歩の発展ぶりからしますと、要介護となる高齢者の数が劇的に減少する未来を描くこともできます。ネットやテレビ番組等では健康に関する情報が溢れており、様々な健康食品やサプリメント等を製造・販売する健康ビジネスも盛況です。健康志向は、国民一般に浸透してきており、社員食堂にメタボ等の生活習慣病を予防するメニューを導入することなども、なかば常識化していると言えます。こうした国民的な健康志向からしますと、高齢者の低栄養や安静状態をよしとした過去とは異なり、これからの高齢者は、案外、相当の年齢に至っても自分の足で歩き、認知症予防の徹底により、脳機能の衰えも遅らせることができるかもしれないのです。

 このように考えますと、外国からの介護人材の受け入れ拡大よりも、日本国政府は、学校教育に取り入れるなど、健康情報の積極的な国民への提供に加え、要介護者の数をできる限り減らすための画期的なイノベーションをも促すべく、健康寿命を延ばす研究・技術開発にこそ予算を配分すべきなのではないでしょうか。国民の意見も聞かず、他の可能性に対して頑なに耳を塞ぐ政府の態度は、‘移民’によって利益を貪る利権化した‘国際介護ビジネス’の存在をも疑わせますし、今後、要介護者の減少にともない、こうした移民たちが失業者となる可能性も指摘することができます。福祉事業という表看板の影に隠れて進められている移民政策は、一般の日本国民からの反発を買うのみなのではないかと思うのです。

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6 コメント

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政府は日本を滅ぼす (あずみ渚)
2018-07-26 09:23:37
おはようございます  
介護職は非常に高いコミュニケ-ション力を必要とされ
る職業です 外国人に続けられるとは思えないし彼らは日本へきたらさっさと逃亡するでしょう
人が集まらないのは賃金が低いから、賃上げしそれに百万人近くいるといわれる生活保護受給者やニートに就労してもらう手もあります

人を安く雇い長時間労働させる 政府や企業のさもしい考えには憤りを感じます。
外国人達がのちに強制連行・労働された謝罪と賠償よこせと、訴えを起こす事につながるでしょう

隣国には戸籍のない人間が数億人います。先生のおっしゃる通り我が国を余剰アジア人の捨て場にしたい勢力の仕業かもしれませんね。

けど観光客も含め外国人の流入はうなぎ上りで
今後日本は多民族国家になるのは間違いなさそうです

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あずみ渚さま (kuranishi masako)
2018-07-26 09:36:32
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 介護職は人手不足という理由は、どこか、’後付’のようにも思えます。何故ならば、人手不足のために高齢者が放置された、というお話は聞かないからです。サービスのレベルによっても違うのでしょうから、人手不足の解消策は、サービス内容を調整するといった方法でも不可能ではないようにも思えます(サービスレベルを挙げれば、無限に人手不足が発生する…)。何れにしましても、政府の多民族国家政策については、国民の大多数が反対しておりますし、今日の世界的な潮流は、移民政策反対の方向に向かっております。諦める必要はないのですから、国民は、政府に対して政策の変更を迫るべきではないかと考えております。
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介護だけではなく・・・🐵 (mobile)
2018-07-27 10:19:42
介護だけではございません。東京オリンピックに向け建設ラッシュが続く中で、建設業界をはじめ『3K(キツイ・危険・汚い)』と言われる職場では人手不足が続いています。農業ももはや海外からの研修生に名を借りた出稼ぎ労働者なしでは成り立たない状況です。
現代は人間が身体を使ってする労働が不当に貶められている時代ではないかと思うのです。賃金が不当に安過ぎるのです。人間以外のものが代わりにすることができないにもかかわらず、です。
政府が安い労働力を確保しようとすることをのみ追うからいけないのです。
もはや人を安く使う時代は終わった。
身体を使う労働の価値を見直して、これを正当に評価し、見合った賃金を保証するべきでしょう。
人々が『エアコンの効いた屋内で端末を操作して大金を動かす』ことばかりを望む、この風潮がいけないのです。
いまこそ肉体労働の復権を考えるべき時です。
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mobileさま (kuranishi masako)
2018-07-27 13:01:21
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 確かに、昨日、多摩で建設中の建物で火事が発生いたしましたが、インタヴューに応じていた作業員の方々の様子を見ますと、’過酷な労働で疲れ切った人々’というよりも、現場では生き生きと仕事をしていたように感じられました。誇りをもって働いている方も多いのですから、むしろ、Mobileさまのおっしゃるように、賃金レベルを上げると共に、アピールに努めることが大事なのかもしれません。安易に’移民’に頼り、社会不安が増すよりも、代替案を考えてゆく方が賢明なように思えるのです。
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健康寿命の延びが介護問題を解決するかという点 (のま)
2018-09-08 08:05:49
医師の話ですと、健康ブームのせいで医療費が高騰するとのことです。
何歳で死のうが、最後の10年は要介護のヘロヘロになる確率が高く、
最悪は85歳まで健康で元気だったのに、95歳まで生きてしまった場合。

最後の十年間は、起き上がれないどころか自分で水も飲めません。

なまじ健康で長生きするほど、その方の最後の10年間は大変な介護になります。

あまり言われていませんが医師の話だとそうなのです。
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のまさま (kuranishi masako)
2018-09-08 10:03:02
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 一説によりますと、体は元気であったのに、最後の10年に要介護となってしまうリスクが最も高いのは、脳卒中といった脳機能に深刻なダメージを受けるケースなそうです。私の父も、88歳にして昨年末、2度の心肺停止の危機を奇跡的に乗り越えましたが、幸いにして脳梗塞を併発せず、現在、介護サービスを受けずに生活しております。となりますと、この問題、医学の発展による脳系統の疾病の予防・治療・リハビリに解決の鍵があるのかもしれないとも思うのです。
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