国のための命を落とすことを余儀なくされていたとき、
生きることに執着し、周りから臆病とさげすまれても
生きて妻と子のところへもどると口にしていたゼロ戦パイトット宮部
それほどまでに生きることに執着したにもかかわらず
特攻に志願して命を落としたのはなぜか?
宮部の孫がその過去をひもといてゆく。
もう、こりゃダメだ。
涙なくしては読めない。
宮部のことを語る元海軍兵の話のたびに泣けてしょうがない。
戦争ってなんだったんだろうって、そんな根本的なことを思った。
戦場には行かない少しの高級参謀がの作戦に動かされて
失われたたくさんの命。
ここに書かれていることは小説なんだけど、
真実は小説より奇なり、って言葉があるように
想像つかないような悲しみや苦しみが、もっとたくさんあったに違いない。
宮部みたいな人がもっといたら、何かが変わっていたのかもしれない。
これだけたくさんの犠牲をはらって今の平和があるのに
大丈夫なのか、今の日本。
命と一緒に大和魂とか、誇りも一緒に失ってしまったのかもしれないね。
何て言っていいのか分からないけど、ゼロ戦はすごい戦闘機で、
それを操縦した人もまたすごい人たちだったんだなぁと思った。
ゼロ戦や航空戦のことが細かく書かれているけれど、
終盤の謎がとけていくところは物語としてひきこまれる。
狂った世の中に復讐したいと思ってやくざになったと語る
元海軍飛行兵の話も泣けた。
目の前におりてきた蜘蛛の糸をつかまなかった宮部のことを
この男にも伝えたかった。
誰かを思う強い思いは、たとえ思う人が姿をうしなってもなお
強く残って何かをひきおこすのかもしれない、って思った。
読んでよかった。