『大奥』に続き、またしても萌え映画か!
あ~いやいや、並べるには映画としてのレベルが違い過ぎる…
その日はジョージ(コリン・ファース)にとって特別な一日だった。
16年間共に暮らしたパートナー(マシュー・グード)が、交通事故で亡くなってから8カ月。
「愛する者がいない人生に意味はあるのか?」
日に日に深くなる悲しみを自らの手で終わらせようと決意したのだ。
ところが今日が人生最後の日だと決めて世界を眺めると、ほんの少しずつ違って見える。
英文学を教えるLAの大学の授業では、いつになく自らの信条を熱く語り、
鬱陶しいはずの隣の娘との会話で幸せを感じ、
かつての恋人で今は親友のチャーリー(ジュリアン・ムーア)を訪ねると、
やはり孤独な彼女に胸を痛めると同時に慰められる。そして、一日の終わりには、
彼の決意を見抜いていた教え子のケニーの思いがけない行動に心を揺さぶられる。
過去に生きていたジョージの瞳に、“今”が輝きだした運命の一日。
果たしてその幕切れは――。
(チラシより)
稀代のファッションデザイナー トム・フォードの監督デビュー作!!
と言われても、ファッションブランドには疎い自分、
それでも「グッチを立ち直らせ、イヴ・サンローラン・リヴ・ゴーシュを改革し…」と
ブランド名が並ぶと、ほうほうファッション界のカリスマですか、スゴイ人なんだというのは理解できます。
それより、コリン・ファースがゲイ映画!?に惹かれて観に行った次第で
やはりただの萌え映画ではありませんでした。
舞台は1960年代初頭のLA。
ケネディ大統領が活躍し、ヒッピーが現れる前のまだ健全なアメリカであった時代。
この頃は同性愛は犯罪であって、世間に知られてはならない事であったはず。
共に暮らしたパートナーが女性設定であってもなんら遜色ない作りですが、
そこは、監督自身がカニングアウトしたゲイであり、
原作はありますが(クリストファー・イシャーウッド著『A Single Man』)
自身を投影しているとすると、これはまた何とも切ない。
人生においての大切なもの、孤独、マイノリティである自身を
細部にわたり計算され凝りつくした映像美で表現していきます。
ジョージのファッションから部屋の小物、家そのもの、女性陣のファッションスタイル。
子供のワンピースからヒッチ・コックの『サイコ』の大看板の使い方。
何より、シーンによっての色調の変化――美しいです。
そして、コリン・ファースの静かな演技。
彼の目に人生の真実が読み取れるかも。