[4月2日22:28.天候:曇 東京都渋谷区千駄ヶ谷 バスタ新宿3F]
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、バスタ新宿に到着致します。お降りの際はお忘れ物、落し物の無いよう、よくお確かめください。……」〕
稲生達を乗せた高速バスがバスタ新宿3階の降車場に到着する。
稲生:「到着しましたよ、先生」
イリーナ:「んあっ……?ああ、着いたのね」
稲生:「はい」
大きなエアーの音がしてドアが開く。
乗客達は一斉にドアの方に列を成した。
稲生:「ちゃんとバッグの中に入ってないとダメだよー」
稲生は普通に通路を歩こうとするミク人形とハク人形に言った。
マリア:「全くもう……」
マリアは両手で自作の人形を抱き抱えた。
稲生:「それじゃ、ここで乗り換えです」
バスを降りた稲生達。
マリア:「何線?」
稲生:「山手線です。外回り」
イリーナ:「おお。もしかしたら、向こうの似たような電車に乗る機会があるかもだねー」
稲生:「魔界高速電鉄……通称アルカディアメトロの環状線ですか?それだったら面白いですね」
JR山手線を一周すると、約1時間掛かる。
それに対し、アルカディアメトロ環状線は各駅停車で2時間掛かる。
その為、向こうでは半周速達運転の準急電車や一周速達の急行電車が運転されている。
マリア:(師匠の使い魔と会いに行くのに、乗る機会あるのか?)
マリアは懐疑的だった。
少なくとも今のイリーナの発言は、予言ではなく、単なる予想にしか聞こえなかったからだ。
[同日22:41.天候:曇 JR新宿駅]
平日なら未だに混雑する時間帯。
日曜日の夜は、そこまで混雑しているわけではない。
しかし、そこは眠らない街の中心駅。
賑わいはそれなりだ。
〔「15番線、ご注意ください。池袋、上野方面行きが参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください」〕
山手線オリジナルのE231系500番台が風を切って入線してきた。
因みに新宿駅の山手線ホームには、まだホームドアが設置されていない。
同じ東京の繁華街である渋谷方面からやってきた外回り電車は、そこそこ混んでいた。
〔「ご乗車ありがとうございました。新宿、新宿です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。ドア付近のお客様は……」〕
ぞろぞろと降りてくる乗客達。
稲生達は最後尾の車両に乗り込んだ。
バスタ新宿から乗り換えようとすると、どうしてもそうなってしまう。
バスタ新宿は新宿駅の南側(特に新南口に接続)にあるため。
また、東京中央学園に行く際、上野駅の北側ということもあり、その方が都合が良い。
何より、先頭車より最後尾の方が空いている。
マリア:「師匠また寝るといけないから、立たせておいた方がいいんじゃないか?」
イリーナ:「えー」
稲生:「いや、いいでしょう」
イリーナ:「そうそう。どうせ、また一周戻ってくるしw」
マリア:「いや、ダメでしょ!」
稲生:「さすがにそれは困ります」
ホームに軽快な発車メロディが鳴り響く(曲名:twilight)。
〔15番線の山手線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕
〔「15番線、この辺りでドアが閉まります。お体、お荷物を強くお引きください」〕
ドアチャイムを3回鳴らしながらドアが閉まる。
ホームドアが無い為、ちゃんと全扉が閉まるとすぐに発車した。
駅の大規模改良が予定されている駅においては、ホームドアは設置されないことになっているという。
〔この電車は山手線外回り、池袋、上野方面行きです。次は新大久保、新大久保。お出口は、右側です。……〕
稲生:「うーん……」
稲生は鞄の中から魔界高速電鉄の路線図を取り出した。
これもまた日本語版が存在する。
そこの環状線はきれいな楕円形をしているのだが、山手線で新宿駅に当たる部分はインフェルノタウン駅という名前であり、中央線も交差するという点においては非常によく似ている。
急行電車も停車するし、地下鉄や路面電車も乗り入れている。
電鉄中央線は中野駅に相当する辺りでプッツリと切れているのだが、実際はその先も線路は繋がっており、冥界鉄道公社専用線である。
マリア:「どうした?」
稲生:「本当、よく似てるなぁと思いまして……」
マリア:「内戦で壊滅した町を再建した際、安倍春明首相は日本の東京を真似て街づくりをしたそうだ。だからだろう」
アルカディア王国の国土の形が東京都に似ているのも、何も無い魔界において暫定的に国境の形を決める際、東京都の形を参考にしたからだという。
稲生:「あれ?でも、町田市の部分が【禁則事項です】。あれ、何だこれ?」
マリア:「どうした?」
稲生:「いや、よく見たらアルカディア王国、東京都の形に似ているのに、何故か町田市の部分が【禁則事項です】。何だ、この規制?町田市ってK【ぴー!】県?」
マリア:「ユウタ、どうもこれ以上その先を言うと、何かマズいことになるようだ。変な魔法掛かってる」
稲生:「そ、そうですか」
[同日23:07.天候:曇 JR上野駅]
電車が池袋を出てから電車は段々と空いて来た。
日曜日の夜で、しかも繁華街から離れて行くにつれて人も少なくなるのだろう。
〔「まもなく上野、上野です。お降りの際はお忘れ物、落し物にご注意ください。ご乗車ありがとうございました」〕
電車が上野駅のホームに滑り込む。
上野駅にはホームドアがあるので、停車してから数秒のブランクがあってドアが開いた。
〔「ご乗車ありがとうございました。上野、上野です。3番線の電車は山手線外回り、東京、品川方面行きです」〕
稲生達は電車を降りると、後ろ側の階段を登った。
マリア:「ちょっとトイレ行ってきます」
イリーナ:「お、じゃ私も行こうかね」
稲生:「僕も行ってきます」
マリア&イリーナ:「どうぞどうぞw」
稲生:「どこのお笑いですか!」
で、戻って来るのは稲生が1番早い。
稲生:(女性はトイレゆっくりだからな……)
稲生は近くの自販機で飲み物を買うと、魔女2人が戻って来るまでスマホを見ることにした。
稲生:「ん?」
稲生は何かの気配を感じ取り、周囲を見渡したが誰もいなかった。
その気配は魔女のものというよりは、妖気や霊気に近かった。
妖気は陽気、霊気は冷気。
既に魔界の穴は開いている状態であり、そこを通れる資格のある者を招いているということなのだろうか。
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、バスタ新宿に到着致します。お降りの際はお忘れ物、落し物の無いよう、よくお確かめください。……」〕
稲生達を乗せた高速バスがバスタ新宿3階の降車場に到着する。
稲生:「到着しましたよ、先生」
イリーナ:「んあっ……?ああ、着いたのね」
稲生:「はい」
大きなエアーの音がしてドアが開く。
乗客達は一斉にドアの方に列を成した。
稲生:「ちゃんとバッグの中に入ってないとダメだよー」
稲生は普通に通路を歩こうとするミク人形とハク人形に言った。
マリア:「全くもう……」
マリアは両手で自作の人形を抱き抱えた。
稲生:「それじゃ、ここで乗り換えです」
バスを降りた稲生達。
マリア:「何線?」
稲生:「山手線です。外回り」
イリーナ:「おお。もしかしたら、向こうの似たような電車に乗る機会があるかもだねー」
稲生:「魔界高速電鉄……通称アルカディアメトロの環状線ですか?それだったら面白いですね」
JR山手線を一周すると、約1時間掛かる。
それに対し、アルカディアメトロ環状線は各駅停車で2時間掛かる。
その為、向こうでは半周速達運転の準急電車や一周速達の急行電車が運転されている。
マリア:(師匠の使い魔と会いに行くのに、乗る機会あるのか?)
マリアは懐疑的だった。
少なくとも今のイリーナの発言は、予言ではなく、単なる予想にしか聞こえなかったからだ。
[同日22:41.天候:曇 JR新宿駅]
平日なら未だに混雑する時間帯。
日曜日の夜は、そこまで混雑しているわけではない。
しかし、そこは眠らない街の中心駅。
賑わいはそれなりだ。
〔「15番線、ご注意ください。池袋、上野方面行きが参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください」〕
山手線オリジナルのE231系500番台が風を切って入線してきた。
因みに新宿駅の山手線ホームには、まだホームドアが設置されていない。
同じ東京の繁華街である渋谷方面からやってきた外回り電車は、そこそこ混んでいた。
〔「ご乗車ありがとうございました。新宿、新宿です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。ドア付近のお客様は……」〕
ぞろぞろと降りてくる乗客達。
稲生達は最後尾の車両に乗り込んだ。
バスタ新宿から乗り換えようとすると、どうしてもそうなってしまう。
バスタ新宿は新宿駅の南側(特に新南口に接続)にあるため。
また、東京中央学園に行く際、上野駅の北側ということもあり、その方が都合が良い。
何より、先頭車より最後尾の方が空いている。
マリア:「師匠また寝るといけないから、立たせておいた方がいいんじゃないか?」
イリーナ:「えー」
稲生:「いや、いいでしょう」
イリーナ:「そうそう。どうせ、また一周戻ってくるしw」
マリア:「いや、ダメでしょ!」
稲生:「さすがにそれは困ります」
ホームに軽快な発車メロディが鳴り響く(曲名:twilight)。
〔15番線の山手線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕
〔「15番線、この辺りでドアが閉まります。お体、お荷物を強くお引きください」〕
ドアチャイムを3回鳴らしながらドアが閉まる。
ホームドアが無い為、ちゃんと全扉が閉まるとすぐに発車した。
駅の大規模改良が予定されている駅においては、ホームドアは設置されないことになっているという。
〔この電車は山手線外回り、池袋、上野方面行きです。次は新大久保、新大久保。お出口は、右側です。……〕
稲生:「うーん……」
稲生は鞄の中から魔界高速電鉄の路線図を取り出した。
これもまた日本語版が存在する。
そこの環状線はきれいな楕円形をしているのだが、山手線で新宿駅に当たる部分はインフェルノタウン駅という名前であり、中央線も交差するという点においては非常によく似ている。
急行電車も停車するし、地下鉄や路面電車も乗り入れている。
電鉄中央線は中野駅に相当する辺りでプッツリと切れているのだが、実際はその先も線路は繋がっており、冥界鉄道公社専用線である。
マリア:「どうした?」
稲生:「本当、よく似てるなぁと思いまして……」
マリア:「内戦で壊滅した町を再建した際、安倍春明首相は日本の東京を真似て街づくりをしたそうだ。だからだろう」
アルカディア王国の国土の形が東京都に似ているのも、何も無い魔界において暫定的に国境の形を決める際、東京都の形を参考にしたからだという。
稲生:「あれ?でも、町田市の部分が【禁則事項です】。あれ、何だこれ?」
マリア:「どうした?」
稲生:「いや、よく見たらアルカディア王国、東京都の形に似ているのに、何故か町田市の部分が【禁則事項です】。何だ、この規制?町田市ってK【ぴー!】県?」
マリア:「ユウタ、どうもこれ以上その先を言うと、何かマズいことになるようだ。変な魔法掛かってる」
稲生:「そ、そうですか」
[同日23:07.天候:曇 JR上野駅]
電車が池袋を出てから電車は段々と空いて来た。
日曜日の夜で、しかも繁華街から離れて行くにつれて人も少なくなるのだろう。
〔「まもなく上野、上野です。お降りの際はお忘れ物、落し物にご注意ください。ご乗車ありがとうございました」〕
電車が上野駅のホームに滑り込む。
上野駅にはホームドアがあるので、停車してから数秒のブランクがあってドアが開いた。
〔「ご乗車ありがとうございました。上野、上野です。3番線の電車は山手線外回り、東京、品川方面行きです」〕
稲生達は電車を降りると、後ろ側の階段を登った。
マリア:「ちょっとトイレ行ってきます」
イリーナ:「お、じゃ私も行こうかね」
稲生:「僕も行ってきます」
マリア&イリーナ:「どうぞどうぞw」
稲生:「どこのお笑いですか!」
で、戻って来るのは稲生が1番早い。
稲生:(女性はトイレゆっくりだからな……)
稲生は近くの自販機で飲み物を買うと、魔女2人が戻って来るまでスマホを見ることにした。
稲生:「ん?」
稲生は何かの気配を感じ取り、周囲を見渡したが誰もいなかった。
その気配は魔女のものというよりは、妖気や霊気に近かった。
妖気は陽気、霊気は冷気。
既に魔界の穴は開いている状態であり、そこを通れる資格のある者を招いているということなのだろうか。