報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「斉藤秀樹からの最後の電話」

2025-02-23 21:11:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月9日11時30分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階リビング→愛原学探偵事務所2階]

 日曜日は生憎の雨。
 それでも、今週中に梅雨が明ける見込みとのこと。
 その後はゲリラ豪雨や、台風の雨になるというわけか。
 雨なので私は外出せず、家にいた。
 リサは傘を差して出掛けて行った。
 『魔王軍』メンバーが受験勉強に入ったので、受験勉強とは無関係のレイチェルと遊びに行くとのこと。

 パール「先生、お昼ご飯ですが、何に致しましょう?」
 愛原「そうだな……。日曜日だから、朝食も遅かったからな……。サンドイッチで宜しく。BLTサンドで」
 パール「かしこまりました」

 そこへ私のスマホに電話が掛かって来る。
 画面を見ると、斉藤元社長からだった。

 愛原「も、もしもし!?」
 斉藤「愛原さん、こんにちは。これが最後の電話となります」
 愛原「えっ、どういうことですか!?」
 斉藤「まだ、警察には捕まってませんよ。今、徳島港を出たところです」
 愛原「徳島港!?四国にいらっしゃったんですか!?」
 斉藤「そうです。さすがに四国はノーマークだったでしょう?」
 愛原「四国に、何かあるんですか?」
 斉藤「あるかもしれないし、無いかもしれない。別に、徳島港はただの寄港地であって、私がそこで何かを探索したわけではありません。当然、船からも降りていません」
 愛原「な、何だ……。ん?今、徳島港を出たということは、1日がかりですね!?」
 斉藤「はい。なので、明日、東京港に着いて、警視庁に出頭するつもりです。船はもうどこにも寄港しませんからね」
 愛原「船なら、途中で捕まるんじゃないですか?海上保安庁が臨検してきたり、BSAAがヘリで上空から降下して来たり……」
 斉藤「乗客の安全第一を考えるなら、このまま東京まで運航させてくれた方が幸せだと思いますがねぇ……」
 愛原「ど、どういうことですか!?」
 斉藤「さっきも言った通り、私が乗った船は、もうどこにも寄港しません。私の警視庁出頭を信用できないのなら、この船の到着地で待っていれば宜しい。デイライトさんには、そのようにお伝えください。もっとも、今日は日曜日なので、繋がりますかね」

 まさか斉藤元社長、それを狙っていたのか?

 愛原「船に乗っているのは、斉藤さんだけですか?」
 斉藤「一般のフェリーなので、他にも乗客はいますよ?」
 愛原「そうじゃなくて、斉藤さんの仲間は乗り合わせているのですか?」
 斉藤「ああ、そういうことですか。それなら、私1人です」
 愛原「明日に、東京港に到着するのですね」
 斉藤「はい」
 愛原「フェリー会社と、東京港到着時刻は何時ですか?」
 斉藤「オーシャン東九フェリー。東京港着は朝の5時30分とのことです」

 どうやら斉藤さんは、包み隠さず話す気のようだ。

 愛原「私が、白井伝三郎からの『転生の儀』対象から逃れるには、どうしたら良いですか?」
 斉藤「まずは、白井に鬼の血を提供した者を探し出してください。その鬼の血より強力な鬼の血を飲めば、上書きされて、『転生の儀』の対象から外れるはずです」
 愛原「そんなバカな……!」

 鬼の血なんか口にしたら、私まで鬼になってしまうのではないか!?

 斉藤「今のところ、私が考えられる対策はそれしか……」
 愛原「…………」
 斉藤「おっと!そろそろ沖合に出るようなので、電波も着れてしまいます。それでは、ごきげんよう。もしも面会できたり、手紙のやり取りができれば、宜しくお願いしますよ」
 愛原「斉藤さん……」

 しかし、電話は切れてしまった。

 パール「御主人様からですか?」
 愛原「ああ。テラセイブの出番ではないだろうがな」
 パール「そのようですね」
 愛原「ちょっと、下の事務所に行ってくる。サンドイッチが出来たら教えてくれ」
 パール「かしこまりました」

 私はリビングを出ると階段を下り、2階の事務所に向かった。
 そして、事務所の照明を点灯させ、冷房を入れる。
 冷房が効くまでの間、蒸し暑い事務所の中で臨時の事務作業を行うことになる。
 天井に埋め込まれたエアコンが、フルパワーで稼働する音が響く中、私は自分の席に座り、PCを立ち上げた。
 そして、今の斉藤元社長とのやり取りを録音したデータを、PCに落とし込む。
 善場係長のPCメールにそのデータを送信した。
 それからスマホを取り出し、善場係長のスマホにその旨のメールを送った。
 やはり日曜日なのか、すぐには返信は来なかった。

 愛原「まだ、少し時間があるか……」

 私はPCで少しネット検索を行った。
 事務作業が終わる頃には、冷房も効き始めて涼しくなっている。

 愛原「山に行きたいか……」

 鬼が山に棲んでいる理由は、いくつかある。
 鬼ヶ島みたいに、海に近い所に棲んでいる方が珍しい。
 実はもう、そこまで行く為の電車のキップは確保してある。

[同日12時00分 天候:雨 愛原学探偵事務所2階→愛原家3階]

 ポー♪と甲高いブザーが鳴る。
 これは内線電話の呼び出し音だ。

 愛原「はいはい」

 初めて警備会社で働き始めた頃、派遣された先が随分と古いビルで、エレベーターも古く、非常呼び出し音のブザーが随分と甲高い音であった。
 それを思い出す。

 愛原「はい」
 パール「あ、先生、お疲れ様です。昼食ができました」
 愛原「ありがとう。今行く」

 私は壁掛け式の受話器を戻した。
 その横には、正面玄関やガレージ内のインターホンの受信機も付いている。
 私はPCの電源を落とし、照明やエアコンも切ると、事務所をあとにした。
 もちろん、事務所のドアも施錠するのを忘れない。
 それから階段を昇って、3階に向かった。

 パール「どうぞ、こちらです」
 愛原「悪いね」

 私はダイニングテーブルに就いた。

 パール「一応、テラセイブの本部には連絡しておきました。デイライトの方はどうですか?」
 愛原「今のところ、まだ返信は来ていない。それで、テラセイブはどうするって?」
 パール「警視庁に連絡するそうです。もっとも、警視庁がテラセイブの事を知っているかどうかですが……」
 愛原「あー……」

 知らないと、イタズラだと思われるかもしれないってことか。
 私は取りあえず、サンドイッチを口に運んだ。

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