報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「夜中の銃撃戦」

2021-09-06 20:07:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月26日02:12.天候:雷雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 愛原:「うーん……」

 私は雷鳴と雷光で目が覚めた。
 どうやら今更ゲリラ豪雨が降って来たらしい。
 この時期は大気の状態が不安定になりがちだから、いつゲリラ豪雨が降って来てもおかしくはない。
 私は用を足そうとベッドから起き上がり、トイレに向かった。
 時折、遠くで雷鳴が轟いたり、それが近かったりする。
 こんな時でも停電しないものだな。
 だが、しばらくして、雷鳴に混じって銃声の音がしたような気がした。
 確かに雷鳴など、花火や砲弾が爆発する音に似てはいるが、銃声とは……?

 高橋:「先生」
 愛原:「おわっ、高橋か!?」

 トイレから出ると、高橋が部屋から出て来た。
 いきなりだったもので驚いた。

 高橋:「サーセン。俺も雷かと思ったんですけど、何か銃声が聞こえたような気がして……」
 愛原:「オマエもそう思うか」

 その時、外からパトカーのサイレンの音が聞こえて来た。
 何だか反響しているので、新大橋通り(都道50号線)から聞こえているのか、裏手の駐車場から聞こえているのかが分からなかった。

 愛原:「高橋、取りあえず電気を消せ」
 高橋:「は、はい」

 私はトイレに行く為にダイニングの電気を点けていた。
 もしも銃声が本物だとしたら、テロリストが私達を狙いに来たのかもしれない。
 この雷雨に乗じて。
 しかし、パトカーのサイレンが聞こえて来たということは……。

 リサ:「……先生……?」

 リサも部屋から出て来た。
 照明は消して真っ暗だが、リサは第1形態に戻っていた。
 その為、暗闇にボウッと赤い瞳が浮かんでいる。

 愛原:「オマエは部屋に戻ってろ。そして第0形態に戻るんだ」
 リサ:「何か、ピストルの音がしたけど……」
 愛原:「ああ。どうやらテロリストが来たらしい。だけど、警察も来たみたいだ」

 高橋は玄関のドアのスコープから外を見た。
 そこには電球色の灯りが灯った廊下が映っているだけだというが……。

 高橋:「何か薄暗いっスね……」
 愛原:「薄暗い?」
 高橋:「こんな暗かったかな……」
 愛原:「どれ?」

 私もスコープから外を覗いて見た。
 確かにいつもより廊下が薄暗いような気がする。

 愛原:「ああ、分かった」

 どうやら天井灯が1つ消えているらしい。
 それで薄暗いのだ。
 玉切れでも起こしたか?
 確か、このマンションの照明は全てLEDだと聞いたのだが……。

 愛原:「!?」

 その時、私の部屋からスマホの着信音が流れて来た。

 愛原:「はいはいはい」

 私は急いで部屋に戻り、枕元に置いたスマホを手に取った。
 画面を見ると、善場主任からだった。

 愛原:「はい、もしもし?」
 善場:「あっ、愛原所長。夜分遅くに申し訳ありません」
 愛原:「いえいえ。さっきから起きてましたから」
 善場:「所長方は御無事でしょうか?」
 愛原:「……それは、先ほど聞こえて来た銃声と関係があるのですね?」
 善場:「私の部下達がテロリストと思しき者を捕捉しました。が、すんでの所で逃亡されました。今、警察が緊急配備を敷いています」

 善場の話によると、こんな真夜中にマンションの前に佇む怪しい男を発見したので、警戒していたのだそうだ。
 車から降りて正体を確かめようとした時、いきなり撃ってきたらしい。
 その後、短い銃撃戦となった。
 最初に声掛けしようとした部下が、相手の弾に被弾したらしい。
 掠り傷だというが、念の為病院に搬送されることになった。
 確かにパトカーのサイレンに混じって、救急車のサイレンも聞こえて来た。
 銃撃戦の時、弾が何発かマンションに被弾したという。
 それで分かった。
 そのうち1発が廊下の照明に当たったのだろう。
 それでそこだけが消えた……って!?

 愛原:「……ここ、5階ですよ?普通、銃ってよほど相手が上にいない限り、上に向かって撃ったりはしませんよね?」
 善場:「威嚇射撃としては有り得る話ですが、この場合は違いますね。部下の話ですと、たまたま5階の廊下を歩く住人の方がいたらしく、犯人はそれに向かって撃ったとのことです」

 同じフロアの住人さん、巻き添えかい!?

 愛原:「それでその住人さんは……?」
 善場:「慌てて部屋に逃げ込んだそうです。ケガは無いようでした」

 まあ、照明に当たるくらいだから、住人さんには被弾していないのだろう。
 恐らく銃声が聞こえて来たものだから、様子を見に出てきたのだろう。
 そしたら、ガチの銃撃戦だったと。

 愛原:「それは良かった。……ああ、因みに私達も無事です」
 善場:「それは良かったです。犯人はまだ見つかっておりませんので、所長方も絶対に外には出ないでください。オートロックのマンションとはいえ、油断はできませんから」
 愛原:「はい」

 私は電話を切った。

 愛原:「やはり、テロリストっぽいのが来てたらしい。善場主任の部下の人達で銃撃戦だ。さっきの銃声はそれだ」
 高橋:「それで犯人は射殺されたんスね!?」
 愛原:「アメリカンポリスじゃないぞ」

 因みに死刑制度が廃止された州の警察ほど、凶悪犯を射殺したりするそうだ。
 死刑制度を廃止するということは、そういうことだぞ?死刑制度反対者の皆様?

 愛原:「むしろ逃げられたそうだ。善場主任の部下の1人が被弾して病院へ運ばれた」
 高橋:「何やってんスか!とっとと射殺すりゃいいのに!」
 愛原:「相手がゾンビなら、部下の人達もそうしただろうさ。俺達もそうする。違うか?」
 高橋:「当たり前っスよ!」

 日本国憲法で保障されている『基本的人権』とは、『生きている人間』にしか適用されない。
 ゾンビとは『活性死者』のことで、医学的には死んでいる状態だと公式に発表され、つまりゾンビは死人と同じだから人権は無い。
 だから、フルボッコにしても人権侵害にはならないという理屈だ。

 愛原:「とにかく、まだ犯人はこの辺りをうろついているらしいから、俺達は外に出ないようにとのことだ。少なくとも、犯人は俺達の部屋までどこか分かっている感じではないようだ」
 高橋:「はい。事務所はどうします?」
 愛原:「朝までに捕まってくれりゃいいんだがな……」

 取りあえず私達は部屋に戻ることにした。
 時折パトカーのサイレンの音が聞こえているので、どうやら本当に警察が動いているようだ。
 警察が動いているのだから、あとは民間人の我々は余計なことはしない方がいいだろう。
 それこそ、善場主任の指示に従っていれば良い。

 愛原:「この分だと犯人が捕まった時は連絡があるだろう。もしも無いようなら、改めて電話してみるさ。事務所に行っても大丈夫かってな」
 高橋:「確かに都合良く捕まってくれるか、射殺される方が楽でいいっスねぇ……」
 愛原:「だから射殺は無いって。多分」
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“私立探偵 愛原学” 「テロリストの影」

2021-09-06 11:47:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月25日19:00.天候:晴 東京都墨田区江東橋 テルミナ]

 錦糸町駅の駅ビルであるテルミナで夕食を取る。
 その間に、善場主任から電話が掛かって来た。

 愛原:「はい、もしもし?」
 善場:「愛原所長、お疲れ様です。メール、拝見しました」
 愛原:「何だか怪しいですよね?警察に連絡した方が良かったですか?それとも、善場主任からしてくれましたか?」
 善場:「いえ、不審者情報だけでは警視庁は本格的には動かないでしょう。せいぜい、近隣の交番勤務の巡査にパトロールを強化させるといったところでしょうか。もしもその不審者がテロ組織の者であるのなら、警察官のパトロール強化くらいどうってことありません」
 愛原:「なるほど。では、どうされますか?」
 善場:「まずは警視庁が持っているデータと照合します。指名手配犯や行方不明者リストなどですね。それと所長、今はまだ錦糸町ですね?」
 愛原:「そうですが?」
 善場:「私の同僚達が張っているかもしれませんが、どうかお気になさらず。これも、テロリストを検挙する為です」
 愛原:「それって主任、もしかして……?」
 善場:「愛原リサが東京中央学園上野高校に通っていることが知られたということは、所長の住所や事務所の所在地も割れている恐れがあるということです。もしもそうなら、逆にチャンスです。テロリストの検挙に、御協力をお願い致します」
 愛原:「それは構いませんが、何だか怖いですな。このまま帰っていいものかどうか……」
 善場:「大丈夫ですよ。もう既に配備は完了していますから」
 愛原:「早っ!?どうしてあのメールだけで、そこまで判断できたのですか?」
 善場:「もちろん、あのメールだけではないんですけどね。色々な情報が入ってきまして、それを総合的に判断したといったところでしょうか」
 愛原:「それで私達は、具体的には何をすればいいのでしょう?」
 善場:「普通に帰って頂ければ結構です。所長達が何も知らない体(てい)でいてくださることが肝心です」
 愛原:「分かりました」
 善場:「あっ、一応、途中で襲われたりしないように、帰りはタクシーを使ってください。もちろん、正式なタクシー乗り場に並んでいるタクシーに乗ってくださいね」
 愛原:「分かりました」

 私はそこで電話を切った。

 高橋:「姉ちゃんは何て?」
 愛原:「善場主任達、仕掛けるみたいだぞ」
 高橋:「マジっスか!?」
 愛原:「俺達は囮になればいみたいだ」
 高橋:「囮役っスか……」
 愛原:「そんな顔するなよ。相手はテロリストだ。所詮俺達、民間人が正面から堂々と戦って勝てる相手じゃないさ。だけど、善場主任達は違う。正面から堂々と戦って勝てる人達だ。そういう人達に任せればいいさ」
 高橋:「うス……」
 愛原:「これでテロリストが逮捕されれば、俺達には協力金がもらえるかもな?」
 高橋:「そりゃいいっスね!」
 愛原:「というわけで、さっさと帰ろうや」
 高橋:「はい!」

 リサがトイレを済ませた後、私達はテルミナを後にした。

 高橋:「あれ?バスで帰るんじゃないんスか?」
 愛原:「いや、途中で襲われるとアレだからタクシーで帰れって言われた」

 駅前の人通りの多い中、私達はタクシー乗り場に向かった。
 そして、ようやくタクシーに乗り込む。

 愛原:「菊川1丁目……までお願いします」
 運転手:「菊川1丁目……ですね」

 運転手がナビに私が言った住所を打ち込んだ。

 運転手:「では、ナビの通りに行きます」
 愛原:「お願いします」

 駅前ロータリーから通りに出る所の信号で止まる。
 私は周囲を見回した。
 タクシーは何の変哲も無い法人タクシーで、車種も最近主流になってきたトヨタ・ジャパンタクシーである。
 これだと後ろのドアのガラスはプライバシーガラスになっており、外からはよく見えない。
 それが狙いだ。
 テロ組織の狙いはリサ。
 リサは運転席の後ろに座らせているが、もちろん運転席の後ろのドアの窓もプライバシーガラスである。
 まだロータリーを出ていないので周囲の歩道は人通りが多いが、どこにテロリストがいて、どこに善場主任の同僚さん達がいるか分からなかった。
 もしかしたら歩道上にはいなくて、車かもしれないし。
 或いは、テロリストの中にはゴルゴ13みたいなのがいて、ビルの屋上から狙っているかもしれない。
 普通、動いている車を狙撃することは難しいが、ゴルゴ13みたいな腕前であれば可能だろう。

[同日19:15.天候:晴 同区菊川1丁目某所 愛原のマンション]

 車はだいたい10分ほどで私のマンションの前に到着した。

 運転手:「こちらでよろしいですか?」
 愛原:「はい、ここで」
 運転手:「ありがとうございます。……」

 私は現金で料金を払った。
 その間、助手席に乗っていた高橋が先に降りてタクシーのハッチを開け、そこから荷物を降ろしている。
 私はお釣りと領収書を受け取ると、リサと一緒にタクシーを降りた。

 高橋:「先生、そこの駐車場に、姉ちゃんの仲間と思われる車が止まっています」

 高橋が小声で私に言った。
 なるほど。
 マンションの向かいにはコインパーキングがあるのだが、そこに1台の黒塗りアルファードが止まっていた。
 チラッと見た感じ、運転席や助手席に誰かが乗っていそうな感じだ。

 愛原:「入る時、気をつけろよ?入る時に襲われるってパターン、結構多いんだから」
 高橋:「了解です」

 私達は慎重にマンションの中に入った。
 エレベーターに乗る時もである。

 愛原:「玄関のドアを開けて入った瞬間、ホッとする。暴漢はその隙を突いて襲って来るんだ」
 高橋:「いましたね!俺が少刑にいた時、その手口で女を襲ってたってヤツ!」
 愛原:「だろ!?」
 高橋:「『鍵を開けてドアを開けた瞬間が狙い目なんだ』って言ってましたよ」
 愛原:「かなり凶悪犯っぽいけど、それでも少年刑務所で済んだんだ?」

 因みに少年刑務所といっても、本当に少年犯罪者だけを収容しているわけではない。
 大人であっても軽罪(懲役または禁錮数年)で収容される場合がある。
 大人が収容される場合は軽罪だが、少年が収容される場合は重罪(少年院では更生できないと判断されたほど)であることが多い。
 高橋の場合、少年院退院後も警察の御厄介になったので、最後は少年刑務所に送られたわけである。

 高橋:「いや、その後、余罪がバレたんで、再び拘置所&裁判所行きです。しかもリサみたいなJKとかJCとかも襲ってたみたいで、2度と少刑に戻ってくることはありませんでした」
 愛原:「当たり前だ!」
 高橋:「風の噂じゃ、宮城刑務所に行ったとか何とか……」
 愛原:「あそこって、なかなかの凶悪犯を収容する刑務所じゃなかったっけ?」
 高橋:「そうッスね。無期懲役とか、懲役2ケタの連中が入ってるらしいっスね」

 そんなことを話しながら、普通に玄関のドアを開けて入った私達だったが、特に何も起こらなかった。
 テロリストであっても、数人で行動している時は警戒して襲ってこないのだろうか。
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