[7月26日02:12.天候:雷雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]
愛原:「うーん……」
私は雷鳴と雷光で目が覚めた。
どうやら今更ゲリラ豪雨が降って来たらしい。
この時期は大気の状態が不安定になりがちだから、いつゲリラ豪雨が降って来てもおかしくはない。
私は用を足そうとベッドから起き上がり、トイレに向かった。
時折、遠くで雷鳴が轟いたり、それが近かったりする。
こんな時でも停電しないものだな。
だが、しばらくして、雷鳴に混じって銃声の音がしたような気がした。
確かに雷鳴など、花火や砲弾が爆発する音に似てはいるが、銃声とは……?
高橋:「先生」
愛原:「おわっ、高橋か!?」
トイレから出ると、高橋が部屋から出て来た。
いきなりだったもので驚いた。
高橋:「サーセン。俺も雷かと思ったんですけど、何か銃声が聞こえたような気がして……」
愛原:「オマエもそう思うか」
その時、外からパトカーのサイレンの音が聞こえて来た。
何だか反響しているので、新大橋通り(都道50号線)から聞こえているのか、裏手の駐車場から聞こえているのかが分からなかった。
愛原:「高橋、取りあえず電気を消せ」
高橋:「は、はい」
私はトイレに行く為にダイニングの電気を点けていた。
もしも銃声が本物だとしたら、テロリストが私達を狙いに来たのかもしれない。
この雷雨に乗じて。
しかし、パトカーのサイレンが聞こえて来たということは……。
リサ:「……先生……?」
リサも部屋から出て来た。
照明は消して真っ暗だが、リサは第1形態に戻っていた。
その為、暗闇にボウッと赤い瞳が浮かんでいる。
愛原:「オマエは部屋に戻ってろ。そして第0形態に戻るんだ」
リサ:「何か、ピストルの音がしたけど……」
愛原:「ああ。どうやらテロリストが来たらしい。だけど、警察も来たみたいだ」
高橋は玄関のドアのスコープから外を見た。
そこには電球色の灯りが灯った廊下が映っているだけだというが……。
高橋:「何か薄暗いっスね……」
愛原:「薄暗い?」
高橋:「こんな暗かったかな……」
愛原:「どれ?」
私もスコープから外を覗いて見た。
確かにいつもより廊下が薄暗いような気がする。
愛原:「ああ、分かった」
どうやら天井灯が1つ消えているらしい。
それで薄暗いのだ。
玉切れでも起こしたか?
確か、このマンションの照明は全てLEDだと聞いたのだが……。
愛原:「!?」
その時、私の部屋からスマホの着信音が流れて来た。
愛原:「はいはいはい」
私は急いで部屋に戻り、枕元に置いたスマホを手に取った。
画面を見ると、善場主任からだった。
愛原:「はい、もしもし?」
善場:「あっ、愛原所長。夜分遅くに申し訳ありません」
愛原:「いえいえ。さっきから起きてましたから」
善場:「所長方は御無事でしょうか?」
愛原:「……それは、先ほど聞こえて来た銃声と関係があるのですね?」
善場:「私の部下達がテロリストと思しき者を捕捉しました。が、すんでの所で逃亡されました。今、警察が緊急配備を敷いています」
善場の話によると、こんな真夜中にマンションの前に佇む怪しい男を発見したので、警戒していたのだそうだ。
車から降りて正体を確かめようとした時、いきなり撃ってきたらしい。
その後、短い銃撃戦となった。
最初に声掛けしようとした部下が、相手の弾に被弾したらしい。
掠り傷だというが、念の為病院に搬送されることになった。
確かにパトカーのサイレンに混じって、救急車のサイレンも聞こえて来た。
銃撃戦の時、弾が何発かマンションに被弾したという。
それで分かった。
そのうち1発が廊下の照明に当たったのだろう。
それでそこだけが消えた……って!?
愛原:「……ここ、5階ですよ?普通、銃ってよほど相手が上にいない限り、上に向かって撃ったりはしませんよね?」
善場:「威嚇射撃としては有り得る話ですが、この場合は違いますね。部下の話ですと、たまたま5階の廊下を歩く住人の方がいたらしく、犯人はそれに向かって撃ったとのことです」
同じフロアの住人さん、巻き添えかい!?
愛原:「それでその住人さんは……?」
善場:「慌てて部屋に逃げ込んだそうです。ケガは無いようでした」
まあ、照明に当たるくらいだから、住人さんには被弾していないのだろう。
恐らく銃声が聞こえて来たものだから、様子を見に出てきたのだろう。
そしたら、ガチの銃撃戦だったと。
愛原:「それは良かった。……ああ、因みに私達も無事です」
善場:「それは良かったです。犯人はまだ見つかっておりませんので、所長方も絶対に外には出ないでください。オートロックのマンションとはいえ、油断はできませんから」
愛原:「はい」
私は電話を切った。
愛原:「やはり、テロリストっぽいのが来てたらしい。善場主任の部下の人達で銃撃戦だ。さっきの銃声はそれだ」
高橋:「それで犯人は射殺されたんスね!?」
愛原:「アメリカンポリスじゃないぞ」
因みに死刑制度が廃止された州の警察ほど、凶悪犯を射殺したりするそうだ。
死刑制度を廃止するということは、そういうことだぞ?死刑制度反対者の皆様?
愛原:「むしろ逃げられたそうだ。善場主任の部下の1人が被弾して病院へ運ばれた」
高橋:「何やってんスか!とっとと射殺すりゃいいのに!」
愛原:「相手がゾンビなら、部下の人達もそうしただろうさ。俺達もそうする。違うか?」
高橋:「当たり前っスよ!」
日本国憲法で保障されている『基本的人権』とは、『生きている人間』にしか適用されない。
ゾンビとは『活性死者』のことで、医学的には死んでいる状態だと公式に発表され、つまりゾンビは死人と同じだから人権は無い。
だから、フルボッコにしても人権侵害にはならないという理屈だ。
愛原:「とにかく、まだ犯人はこの辺りをうろついているらしいから、俺達は外に出ないようにとのことだ。少なくとも、犯人は俺達の部屋までどこか分かっている感じではないようだ」
高橋:「はい。事務所はどうします?」
愛原:「朝までに捕まってくれりゃいいんだがな……」
取りあえず私達は部屋に戻ることにした。
時折パトカーのサイレンの音が聞こえているので、どうやら本当に警察が動いているようだ。
警察が動いているのだから、あとは民間人の我々は余計なことはしない方がいいだろう。
それこそ、善場主任の指示に従っていれば良い。
愛原:「この分だと犯人が捕まった時は連絡があるだろう。もしも無いようなら、改めて電話してみるさ。事務所に行っても大丈夫かってな」
高橋:「確かに都合良く捕まってくれるか、射殺される方が楽でいいっスねぇ……」
愛原:「だから射殺は無いって。多分」
愛原:「うーん……」
私は雷鳴と雷光で目が覚めた。
どうやら今更ゲリラ豪雨が降って来たらしい。
この時期は大気の状態が不安定になりがちだから、いつゲリラ豪雨が降って来てもおかしくはない。
私は用を足そうとベッドから起き上がり、トイレに向かった。
時折、遠くで雷鳴が轟いたり、それが近かったりする。
こんな時でも停電しないものだな。
だが、しばらくして、雷鳴に混じって銃声の音がしたような気がした。
確かに雷鳴など、花火や砲弾が爆発する音に似てはいるが、銃声とは……?
高橋:「先生」
愛原:「おわっ、高橋か!?」
トイレから出ると、高橋が部屋から出て来た。
いきなりだったもので驚いた。
高橋:「サーセン。俺も雷かと思ったんですけど、何か銃声が聞こえたような気がして……」
愛原:「オマエもそう思うか」
その時、外からパトカーのサイレンの音が聞こえて来た。
何だか反響しているので、新大橋通り(都道50号線)から聞こえているのか、裏手の駐車場から聞こえているのかが分からなかった。
愛原:「高橋、取りあえず電気を消せ」
高橋:「は、はい」
私はトイレに行く為にダイニングの電気を点けていた。
もしも銃声が本物だとしたら、テロリストが私達を狙いに来たのかもしれない。
この雷雨に乗じて。
しかし、パトカーのサイレンが聞こえて来たということは……。
リサ:「……先生……?」
リサも部屋から出て来た。
照明は消して真っ暗だが、リサは第1形態に戻っていた。
その為、暗闇にボウッと赤い瞳が浮かんでいる。
愛原:「オマエは部屋に戻ってろ。そして第0形態に戻るんだ」
リサ:「何か、ピストルの音がしたけど……」
愛原:「ああ。どうやらテロリストが来たらしい。だけど、警察も来たみたいだ」
高橋は玄関のドアのスコープから外を見た。
そこには電球色の灯りが灯った廊下が映っているだけだというが……。
高橋:「何か薄暗いっスね……」
愛原:「薄暗い?」
高橋:「こんな暗かったかな……」
愛原:「どれ?」
私もスコープから外を覗いて見た。
確かにいつもより廊下が薄暗いような気がする。
愛原:「ああ、分かった」
どうやら天井灯が1つ消えているらしい。
それで薄暗いのだ。
玉切れでも起こしたか?
確か、このマンションの照明は全てLEDだと聞いたのだが……。
愛原:「!?」
その時、私の部屋からスマホの着信音が流れて来た。
愛原:「はいはいはい」
私は急いで部屋に戻り、枕元に置いたスマホを手に取った。
画面を見ると、善場主任からだった。
愛原:「はい、もしもし?」
善場:「あっ、愛原所長。夜分遅くに申し訳ありません」
愛原:「いえいえ。さっきから起きてましたから」
善場:「所長方は御無事でしょうか?」
愛原:「……それは、先ほど聞こえて来た銃声と関係があるのですね?」
善場:「私の部下達がテロリストと思しき者を捕捉しました。が、すんでの所で逃亡されました。今、警察が緊急配備を敷いています」
善場の話によると、こんな真夜中にマンションの前に佇む怪しい男を発見したので、警戒していたのだそうだ。
車から降りて正体を確かめようとした時、いきなり撃ってきたらしい。
その後、短い銃撃戦となった。
最初に声掛けしようとした部下が、相手の弾に被弾したらしい。
掠り傷だというが、念の為病院に搬送されることになった。
確かにパトカーのサイレンに混じって、救急車のサイレンも聞こえて来た。
銃撃戦の時、弾が何発かマンションに被弾したという。
それで分かった。
そのうち1発が廊下の照明に当たったのだろう。
それでそこだけが消えた……って!?
愛原:「……ここ、5階ですよ?普通、銃ってよほど相手が上にいない限り、上に向かって撃ったりはしませんよね?」
善場:「威嚇射撃としては有り得る話ですが、この場合は違いますね。部下の話ですと、たまたま5階の廊下を歩く住人の方がいたらしく、犯人はそれに向かって撃ったとのことです」
同じフロアの住人さん、巻き添えかい!?
愛原:「それでその住人さんは……?」
善場:「慌てて部屋に逃げ込んだそうです。ケガは無いようでした」
まあ、照明に当たるくらいだから、住人さんには被弾していないのだろう。
恐らく銃声が聞こえて来たものだから、様子を見に出てきたのだろう。
そしたら、ガチの銃撃戦だったと。
愛原:「それは良かった。……ああ、因みに私達も無事です」
善場:「それは良かったです。犯人はまだ見つかっておりませんので、所長方も絶対に外には出ないでください。オートロックのマンションとはいえ、油断はできませんから」
愛原:「はい」
私は電話を切った。
愛原:「やはり、テロリストっぽいのが来てたらしい。善場主任の部下の人達で銃撃戦だ。さっきの銃声はそれだ」
高橋:「それで犯人は射殺されたんスね!?」
愛原:「アメリカンポリスじゃないぞ」
因みに死刑制度が廃止された州の警察ほど、凶悪犯を射殺したりするそうだ。
死刑制度を廃止するということは、そういうことだぞ?死刑制度反対者の皆様?
愛原:「むしろ逃げられたそうだ。善場主任の部下の1人が被弾して病院へ運ばれた」
高橋:「何やってんスか!とっとと射殺すりゃいいのに!」
愛原:「相手がゾンビなら、部下の人達もそうしただろうさ。俺達もそうする。違うか?」
高橋:「当たり前っスよ!」
日本国憲法で保障されている『基本的人権』とは、『生きている人間』にしか適用されない。
ゾンビとは『活性死者』のことで、医学的には死んでいる状態だと公式に発表され、つまりゾンビは死人と同じだから人権は無い。
だから、フルボッコにしても人権侵害にはならないという理屈だ。
愛原:「とにかく、まだ犯人はこの辺りをうろついているらしいから、俺達は外に出ないようにとのことだ。少なくとも、犯人は俺達の部屋までどこか分かっている感じではないようだ」
高橋:「はい。事務所はどうします?」
愛原:「朝までに捕まってくれりゃいいんだがな……」
取りあえず私達は部屋に戻ることにした。
時折パトカーのサイレンの音が聞こえているので、どうやら本当に警察が動いているようだ。
警察が動いているのだから、あとは民間人の我々は余計なことはしない方がいいだろう。
それこそ、善場主任の指示に従っていれば良い。
愛原:「この分だと犯人が捕まった時は連絡があるだろう。もしも無いようなら、改めて電話してみるさ。事務所に行っても大丈夫かってな」
高橋:「確かに都合良く捕まってくれるか、射殺される方が楽でいいっスねぇ……」
愛原:「だから射殺は無いって。多分」