報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「帰京の旅」 2

2021-09-01 20:19:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月25日10:54.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 JR仙台駅・在来線地上ホーム]

 

〔まもなく3番線に、当駅止まりの列車が参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。この列車は、4両です。折り返し、11時10分発、快速、仙台空港行きとなります〕

 地下鉄からJRへと乗り換えた私達。
 乗換改札も地下を通って来た。
 これでテロリスト達の目を欺けたはずだ。
 もっとも、新幹線乗り場だけを警戒しているとは限らないから、ここにいつまでも留まるわけにはいかない。
 切り欠きホームの3番線に、仙台空港鉄道の列車がやってきた。
 2両で1編成の電車を2編成繋いだ4両編成である。
 運用は共通なのだろう。
 折り返し前2両となる編成は仙台空港鉄道の車両、後ろ2両はJRの車両だった。
 但し、基本的な構造はどちらも同じである。
 違うのは外見の塗装と、座席の模様などの内装だけ。
 JRの車両はまるで首都圏の常磐線快速電車のような緑と水色の塗装が特徴だが、仙台空港鉄道の方は青を基調とした塗装である。
 座席の方もJRは他の線区で運用されている車両と同じ、光のページェントをイメージしたもので、頭が当たる部分はレザーになっている。

 

 仙台空港鉄道の方は、ツツジの花をイメージしたのだろうか、ピンク色に近いモケットが貼られていた。
 私達が乗ったのは先頭車の方だから、仙台空港鉄道の方だ。
 小牛田の時はロングシートの701系にしか乗れなかったが、ようやっとボックスシートに乗れることとなる。
 もっとも、快速だから乗車時間は短いのだが、それでも私達はボックスシートに座った。

〔この電車は仙台空港アクセス線、快速、仙台空港行きです〕
〔This is the Sendai Airport Access line rapid service train for Sendai Airport.〕
〔「11時10分発、仙台空港アクセス線、快速電車、仙台空港行きです。停車駅は名取と終点仙台空港です。停車駅にご注意ください。発車までご乗車なり、お待ちください」〕

 4両編成でも仙台空港鉄道ではワンマン運転が行われている。
 JR線内の名取までツーマンということはなく、全区間ワンマンだ。
 というのは、車両は相互乗り入れという形を取っているが、乗務員もまた通しで乗務する形態を取っているからである。
 尚、多客期には更にもう1編成増結して6両編成で運転することもあるという。
 しかも、その時でさえもワンマン運転を貫き通すらしい。
 但し、コロナ禍でそのようなことはしばらく無いだろう。

 高橋:「先生」
 愛原:「何だ?」
 高橋:「空港では長く留まることになりますけど、その時に見つかったりしませんかね?」
 愛原:「恐らく大丈夫だろう。今のBOW探知機やアプリは、そんなに高性能じゃない。実際そのBOWがいるとされる施設や狭いエリアを探索する際、近くにいるのを発見する為のものだ。テロリスト達が実際に仙台空港にでもいなければ、その探知機でもってリサを遠くから発見することは不可能だそうだ」
 高橋:「なるほど。そうですか」
 愛原:「とはいえ、ここは仙台駅だ。発車するまでは、まだ油断できないがな」
 高橋:「そうですね」
 愛原:「発車すれば、これはもう快速だから、一気に市外脱出ができる」

 次の停車駅は隣町の名取市の中心駅である名取駅だ。

[同日11:10.天候:晴 仙台空港アクセス線3330M列車先頭車内]

 ホームに発車メロディが鳴り響く。
 ファンキーな曲調だが、曲名をモンキーマジックの “Around The World ”という。
 どこかで聞いたことあるような気がするのは、実際にテレビドラマ“西遊記”で使われたからだろう。

〔3番線から仙台空港アクセス線、快速、仙台空港行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください〕
〔駆け込み乗車は、おやめください。無理なご乗車は、おやめください〕

 ワンマン運転だが、運転士が乗務員室の窓から顔を出してホームの監視をしている。
 全部のドアが閉まる。
 コロナ禍で半自動ドアではなく、換気促進の為、自動ドアでの運用が行われている。
 JRではワンマン運転の時は不正乗降防止の為に半自動ドアを続けているが、仙台空港鉄道ではワンマン運転でも自動ドア運用だ。
 これは途中駅に無人駅が無いからである。
 そして、電車はゆっくりと発車した。
 切り欠きホームは副線ホームなのか、本線に出る為にポイントを通過する。
 その為の低速運転だ。

〔今日も仙台空港アクセス鉄道をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は仙台空港アクセス線、快速、仙台空港行きです。停車駅は名取、終点仙台空港です。次は、名取です。……〕

 本線に出ると、電車は加速を始める。
 リサはフードを被りつつも、窓の外は見ていた。
 本当はブラインドやカーテンでも閉めて外から見えないようにするべきなのだろうが、最近の電車はUVカットガラスを採用する代わりにそういった物を廃止する傾向にあり、この電車も例外ではなかった。
 例外なのは首都圏の中距離電車のグリーン車とか、新幹線や特急車両くらいだろう。
 まあ、あれは特別料金を払っているからだろうが。

 リサ:「先生。お昼ご飯は?」
 愛原:「仙台空港にレストランとかあるから、そこで食うことになる」
 リサ:「おー!」
 高橋:「あれだけ朝食ったくせに、もう昼飯の話かよ」
 愛原:「まあまあ。まだ、土産とか買ってない。本当は仙台駅で買って行くつもりだったけど、予定変更して仙台空港で買って行こう」
 高橋:「分かりました。斉藤社長へのお土産ですか」
 愛原:「そうだな。あとは善場主任にも買って行くか」

 ベタな“萩の月”とかかな。
 箱入りだと高いが、しかし無難な土産であることに変わりは無い。
コメント (1)
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“私立探偵 愛原学” 「帰京の旅」

2021-09-01 11:20:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月25日10:11.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 仙台市地下鉄広瀬通駅→地下鉄仙台駅]

〔1番線に、富沢行き電車が到着します〕

 ホテルをチェックアウトした私達は、その足で最寄りの地下鉄広瀬通駅へと向かった。
 検討に検討を重ねた結果、空港へは鉄道で向かうのが良いと判断した。
 1番楽なのはタクシー。
 首都圏には羽田空港や成田空港への料金定額サービスがあるのと同様、仙台空港にも地元のタクシー会社による定額サービスは行われている。
 だが、それとて高速を通った際にテロ組織に見つかる恐れがあるのと、さりとて一般道経由も相手に隙を見せるようで何だか不安なのだ。
 よく、ハードボイルドな洋画を観ていれば分かるだろう。
 主人公達が敵の組織から車で逃げる際、ハイウェイで見つかってカーチェイスが行われるシーンとか。
 大抵、同行しているヒロインなどのメインキャラクターが、そこで敵の組織の者に銃撃されたり、車がクラッシュして死んだりするんだよな。
 鉄道も隙だらけではないのかと思われるだろうが、逆に市井の人々に紛れ込むことができる。

〔1番線から、富沢行き電車が発車します。ドアが閉まります〕

 電車に乗り込む。
 それと、地下鉄を利用するのはけして悪くない。
 そもそもテロ組織の目的は、リサの強奪。
 奴らがどうやってリサを見つけるのかを考えた時に、上級BOWが放つ微弱な電波を感知する機械が発明されたと聞いた。
 BSAAや“青いアンブレラ”でも一部で実用化されているという。
 テロ組織がそれを手に入れていても何ら不思議ではない。

〔次は仙台、仙台です。東西線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕
〔The next stop is Sendai station.Please change here for the Tozai line,the JR lines and the Sendai airport access line.〕
〔日蓮正宗佛眼寺へは愛宕橋で、冨士大石寺顕正会仙台会館へは終点富沢でお降りください〕

 地下鉄を利用したのは、以前に善場主任が言っていたのを思い出したからだ。
 その文明の利器を持ってさえ、地下では通用しないのだと。
 それではリサは地下では何の監視もされていないのかというと、そうでもない。
 リサにもスマホを与えており、そのGPSは地下にいても通じる。
 善場主任らはそのGPSを把握しているので、リサが地下にいる間、何の監視も無いというのは間違いである。
 しかし、テロ組織は上級BOWの気配を探知する装置しか持っていない為、地下にいるリサを探すことは不可能だろう。

〔仙台、仙台。出入口付近の方は、開くドアにご注意ください。……〕

 たった一区間だけなので、すぐ下車駅に到着する。
 仙台市で初めて開通した南北線であるが、市街地のトンネルは驚くほど深く、堅固な層にまで掘った上で通しているんだよ。
 何故だと思う?
 第2次世界大戦で使われた爆弾のうち、不発弾が落ちた勢いで地面に埋まり、後年になって発見されたというのはよくあることだ。
 その不発弾が埋まって来るより下に掘ることで、第3次世界大戦に備えたとされる。
 仙台市地下鉄南北線の開通が1980年代後半であること(東西冷戦)を考えると……納得の行く話だ。
 おかげで東日本大震災の時は殆ど被害は無かったし、今はこうしてBOW探知機が役に立たない所にいられるわけだ。

〔仙台、仙台。東西線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 ドアが開いて、多くの乗客が電車を降りる。
 もちろん、私達もその中に紛れた。

 愛原:「こっちだ」

 多くの乗客達は地上や東西線ホームに向かった。
 私達も地上に向かう方なのであるが、すぐには向かわない。

 愛原:「よし、ここで時間調整だ」

 改札口を出ると、駅構内にある地下鉄定期券売り場の所に行く。
 仙台駅の定期券売り場は2ヶ所あるが、私達がいるのは東西線開通後にできた新しい方である。
 ここには待合所も併せて設けられており、自販機コーナーもある。
 私達は空いているベンチに座った。

 高橋:「時間調整とは、一体……?」
 愛原:「リサを狙う組織がBOW探知機を持っているのなら、今頃リサは行方不明になっている」

 私は自分のスマホを出した。
 善場主任らが開発したアプリがインストールされており、このアプリもまた“BOW探知アプリ”なのである。
 このアプリを起動させると……画面が真っ赤になった。
 強力なBOWがすぐ近くにいるという警告だ。
 ……そりゃそうか。
 だって、すぐ横にいるんだもの。
 いや、私が期待したのは、『探知できません』という表示だったのだが。
 地下だとBOWが放つ微弱な電波をキャッチできず、探知機が役に立たないと聞いていたのだが、アプリなら可能なのだろうか。
 まあ、いいや。
 善場主任に、今回のルートをメールで送っている。
 善場主任からは承認された。
 恐らく、よほど変なルートでなければ、それがバスであろうとタクシーであろうと承認してくれたかもしれない。

 高橋:「先生、コーヒーをどうぞ」
 愛原:「ああ、すまない」

 高橋が自販機コーナーで缶コーヒーを買ってきてくれた。
 リサにはジュースだ。

 愛原:「善場主任が言うには、あまり地下に留まっていると、奴らも気づいて地下鉄を探して来る恐れがあるということだ」
 高橋:「でしょうね。或いは、高速のトンネルの中とか?」
 愛原:「ダメだな。東北自動車道は、仙台から東京に向かおうとすると、トンネルは福島県内に1つしかない」
 高橋:「な、なるほど」
 愛原:「にも関わらず、長時間探知できないということは、あえて地下にいると見るだろう。そうなると、地下鉄などを怪しむのは人情だ」
 高橋:「はいはい」
 リサ:「そのテロ組織って、外人さん?」
 愛原:「日本人の協力者もいるだろうが、大抵は海外のテロ組織だろうな」
 高橋:「山口組とかのヤーさんが、金もらって捜してくるってのは有り得ますか?」
 愛原:「よほど金積まれないとやらないだろう。しかも、海外マフィアじゃなくてテロ組織だからな。取引するかな?」
 高橋:「半グレだったら、金積まれりゃ何でもやりますよ」
 愛原:「とはいうものの、すぐに来ないだろう。よほど引き付けて、それから離れるんだ」
 高橋:「分かりました」
 愛原:「リサは悪いけど、顔隠しててな?」
 リサ:「分かった」

 リサはグレーのパーカーを羽織り、フードを被っている。
 さすがに夏なので、パーカーの袖は捲くっていた。
 コロナ禍のおかげで、マスクをしていても何の不思議ではない。
 因みにテディベア2体は先ほど、ホテルから宅配便で送っておいた。
 さすがに嵩張って動きにくいのと、あと目立つので。

 愛原:「前の電車が出発した時点で移動するぞ。あとは快速で移動だ」
 高橋:「分かりました」
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