[7月26日13:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
三井記念病院からタクシーで事務所に戻った私達。
ビルの中に入ると、私達はそのまま中を通り過ぎて、反対側の駐車場へ抜けた。
というのは、タクシーで戻る途中、善場主任から電話があったからだ。
こういう時、タクシーだとすぐに電話に出れるから助かる。
で、その電話というのは、リサのウィルス検査をしたいので、戻り次第、ビルの駐車場に向かって欲しいというものだった。
あえて駐車場前ではなく、新大橋通り側にタクシーを着けてもらったのは、まだどこかでテロリストが見ているかもしれないという警戒感からだ。
善場:「愛原所長、お疲れさまです」
駐車場に行くと、そこには1台の救急車のような車が止まっていた。
『のような』というのは、消防署から出動する救急車はワンボックスタイプが一般的なのに対し、そこにいたのは2トントラックをベースに製造された特殊な救急車だったからだ。
見た目は救急車というよりは、献血バスのようにも見える。
もっとも、献血バスは、それこそ大型バスからマイクロバスくらいのサイズの車種が主流で、今時はトラックベースの物は余り見かけない。
とにかく、8ナンバー車の特殊車両であることは間違いない。
それでも救急車っぽく見えるのは、キャブの屋根の上に赤色灯が搭載されているからだろう。
別に緊急出動してきたわけではないのか、普通に駐車場に止まっているだけで、赤色灯は点灯させていない。
愛原:「善場主任、お疲れ様です」
善場:「リサのお友達がテロリズムに巻き込まれてしまったようで、お気の毒です」
リサ:「大丈夫。サイトーは体は元気だから」
愛原:「それより主任、いきなりリサのウィルス検査をするというのは、どういうことなんですか?」
善場:「そのお友達が入院している病院、昨今のコロナ禍の影響で、彼女にもウィルス検査をしたのですよ」
愛原:「あー、PCR検査ですよね」
善場:「それだけではありませんよ。とにかくその結果、高濃度のTウィルスやGウィルスが検出されたということです」
リサ:「……ごめんなさい。それ、私の影響」
善場:「1つ屋根の下で暮らしている愛原所長や高橋助手が感染しているのは想定内ですし、友人関係においても感染者はいるでしょう。しかし、リサにはそのウィルスを活性化させないように伝えてあります」
リサ:「聞いてます」
活性化しない限り、TウィルスやGウィルスはただの居候ということになる。
しかも、他のウィルスを食い倒してくれる役割も持つ。
善場:「しかし、いくら活性化させていないとはいえ、想定外の高濃度のウィルスが検出されたので、病院側から私共に通報が入ったのです。もしかしたら、リサの体内でウィルスが変異している可能性があるので、こうして緊急検査を行うというわけです」
リサ:「えーと……」
善場:「あなたに拒否権はありませんよ。採尿と採血、それから検便に【その他もろもろ】やりますからね」
よく見るとこの救急車っぽい車、小さく『BSAA』と書かれている。
どうやら普段は、自衛隊の駐屯地の奥に止まっている移動診療車のようだ。
善場主任の所属する組織がBSAAの医療部隊に手を回し、この車を用意させたのだろう。
移動診療車ということもあって、中で検査ができるようだ。
リサ:「お注射やだー!」
善場:「注射ではなく、採血です。10本は取りますからね」
リサ:「10本も!?」
ブスッ!(注射針がリサの腕に刺さる音)
リサ:「きゃーっ!」
有無を言わさない検査だな。
きっと、日本アンブレラの実験はこれよりもっと非人道的だったのだろう。
善場:「次は採尿です!」
リサ:「オシッコ出ないよー!」
善場:「嫌なら尿道カテーテル突っ込んで、強制採尿します!」
リサ:「それも嫌ーっ!」
トイレまでは移動診療車に付いていないので、ビル1階のトイレを使わせてもらうことになる。
このビルには各階共用トイレが付いているのだが、1階のトイレだけは多目的トイレしかない。
逆に言えば、他の階には多目的トイレが無いのだが。
リサ:「うぅ……先生見ないで。恥ずかしい……」
愛原:「オマエ、前に俺に『オシッコ引っ掛ける』とか言ってなかったか?」
リサ:「『1番』が先生にそうやってマーキングしたんだもん!だったら、私もそうして上書きしてやるって思ったの」
愛原:「はいはい。あれはもうとっくに洗い流してるよ」
で、採尿の次は……。
善場:「次は検便です!」
リサ:「ウ○○出ないよー!」
善場:「はい、これ」
愛原:「主任、そ、それは……」
リサ:「何でお浣腸持ってるの!?」
善場:「それは緊急検査だからです」
リサ:「ワケ分かんないよーっ!」
高橋:「てか、よく浣腸って分かったな?」
リサ:「学校の保健室にもあるから。ひどい便秘でお腹が苦しくなって保健室に行くコとかいるから、それで常備してるんだって」
愛原:「オマエには要らないシロモノだな」
リサ:「そうなの。で、そういうコには私が触手を突っ込んで、老廃物を根こそぎ頂く……はっ!」
善場:「このおバカ!そうやって学校にウィルスばら撒いたのね!!」
リサ:「で、ででで、でも、活性化はさせてないし……」
善場:「そういう問題じゃありません!とにかく、さっさと検便してきなさい!」
リサ:「はーい!」
リサは市販の浣腸を持ってトイレへ駆け込んだ。
さすがのリサも、リサ・トレヴァーの先輩には頭が上がらないか。
善場主任は厳密に言えば、今はリサ・トレヴァーではない。
人間に戻れた元リサ・トレヴァーで、OGとも言える。
どこの世界でも、OB・OGの力は強い。
こりゃ後で、リサは説教の刑を食らうことになりそうだ。
実はリサが食人しない代わり、老廃物を吸い取る行為については黙認されていた。
それで食人衝動が抑え切れず、暴走されるよりは……という考えからだった。
しかし、リサはあまりにも学校内で『獲物』を取り過ぎた。
さすがの善場主任達も、先述の理由から見て見ぬフリをしていたが、直接報告が入ってしまった以上は動かざるを得なかったというわけだ。
愛原:「見た限り、リサには何の変化もありませんがね?」
善場:「見た限りは、ですね。でも実際、体内では何がしかの変化が起こっているかもしれませんし、何より……リサには調子に乗ると、こういう目に遭うという警告にもなりますので」
愛原:「な、なるほど……」
善場:「BSAAの車両をレンタルできた時点で、お察し頂ければと思います」
愛原:「は、はい」
BSAAでもうちのリサの動きについて、何か怪しいとでも思ったのだろうな、きっと。
まあ、窓口機関でもあるデイライトがまずは出動してみて、何も無ければそれで良いということだろう。
そして、そういう判断をするのは、現場の長である善場主任なのだ。
三井記念病院からタクシーで事務所に戻った私達。
ビルの中に入ると、私達はそのまま中を通り過ぎて、反対側の駐車場へ抜けた。
というのは、タクシーで戻る途中、善場主任から電話があったからだ。
こういう時、タクシーだとすぐに電話に出れるから助かる。
で、その電話というのは、リサのウィルス検査をしたいので、戻り次第、ビルの駐車場に向かって欲しいというものだった。
あえて駐車場前ではなく、新大橋通り側にタクシーを着けてもらったのは、まだどこかでテロリストが見ているかもしれないという警戒感からだ。
善場:「愛原所長、お疲れさまです」
駐車場に行くと、そこには1台の救急車のような車が止まっていた。
『のような』というのは、消防署から出動する救急車はワンボックスタイプが一般的なのに対し、そこにいたのは2トントラックをベースに製造された特殊な救急車だったからだ。
見た目は救急車というよりは、献血バスのようにも見える。
もっとも、献血バスは、それこそ大型バスからマイクロバスくらいのサイズの車種が主流で、今時はトラックベースの物は余り見かけない。
とにかく、8ナンバー車の特殊車両であることは間違いない。
それでも救急車っぽく見えるのは、キャブの屋根の上に赤色灯が搭載されているからだろう。
別に緊急出動してきたわけではないのか、普通に駐車場に止まっているだけで、赤色灯は点灯させていない。
愛原:「善場主任、お疲れ様です」
善場:「リサのお友達がテロリズムに巻き込まれてしまったようで、お気の毒です」
リサ:「大丈夫。サイトーは体は元気だから」
愛原:「それより主任、いきなりリサのウィルス検査をするというのは、どういうことなんですか?」
善場:「そのお友達が入院している病院、昨今のコロナ禍の影響で、彼女にもウィルス検査をしたのですよ」
愛原:「あー、PCR検査ですよね」
善場:「それだけではありませんよ。とにかくその結果、高濃度のTウィルスやGウィルスが検出されたということです」
リサ:「……ごめんなさい。それ、私の影響」
善場:「1つ屋根の下で暮らしている愛原所長や高橋助手が感染しているのは想定内ですし、友人関係においても感染者はいるでしょう。しかし、リサにはそのウィルスを活性化させないように伝えてあります」
リサ:「聞いてます」
活性化しない限り、TウィルスやGウィルスはただの居候ということになる。
しかも、他のウィルスを食い倒してくれる役割も持つ。
善場:「しかし、いくら活性化させていないとはいえ、想定外の高濃度のウィルスが検出されたので、病院側から私共に通報が入ったのです。もしかしたら、リサの体内でウィルスが変異している可能性があるので、こうして緊急検査を行うというわけです」
リサ:「えーと……」
善場:「あなたに拒否権はありませんよ。採尿と採血、それから検便に【その他もろもろ】やりますからね」
よく見るとこの救急車っぽい車、小さく『BSAA』と書かれている。
どうやら普段は、自衛隊の駐屯地の奥に止まっている移動診療車のようだ。
善場主任の所属する組織がBSAAの医療部隊に手を回し、この車を用意させたのだろう。
移動診療車ということもあって、中で検査ができるようだ。
リサ:「お注射やだー!」
善場:「注射ではなく、採血です。10本は取りますからね」
リサ:「10本も!?」
ブスッ!(注射針がリサの腕に刺さる音)
リサ:「きゃーっ!」
有無を言わさない検査だな。
きっと、日本アンブレラの実験はこれよりもっと非人道的だったのだろう。
善場:「次は採尿です!」
リサ:「オシッコ出ないよー!」
善場:「嫌なら尿道カテーテル突っ込んで、強制採尿します!」
リサ:「それも嫌ーっ!」
トイレまでは移動診療車に付いていないので、ビル1階のトイレを使わせてもらうことになる。
このビルには各階共用トイレが付いているのだが、1階のトイレだけは多目的トイレしかない。
逆に言えば、他の階には多目的トイレが無いのだが。
リサ:「うぅ……先生見ないで。恥ずかしい……」
愛原:「オマエ、前に俺に『オシッコ引っ掛ける』とか言ってなかったか?」
リサ:「『1番』が先生にそうやってマーキングしたんだもん!だったら、私もそうして上書きしてやるって思ったの」
愛原:「はいはい。あれはもうとっくに洗い流してるよ」
で、採尿の次は……。
善場:「次は検便です!」
リサ:「ウ○○出ないよー!」
善場:「はい、これ」
愛原:「主任、そ、それは……」
リサ:「何でお浣腸持ってるの!?」
善場:「それは緊急検査だからです」
リサ:「ワケ分かんないよーっ!」
高橋:「てか、よく浣腸って分かったな?」
リサ:「学校の保健室にもあるから。ひどい便秘でお腹が苦しくなって保健室に行くコとかいるから、それで常備してるんだって」
愛原:「オマエには要らないシロモノだな」
リサ:「そうなの。で、そういうコには私が触手を突っ込んで、老廃物を根こそぎ頂く……はっ!」
善場:「このおバカ!そうやって学校にウィルスばら撒いたのね!!」
リサ:「で、ででで、でも、活性化はさせてないし……」
善場:「そういう問題じゃありません!とにかく、さっさと検便してきなさい!」
リサ:「はーい!」
リサは市販の浣腸を持ってトイレへ駆け込んだ。
さすがのリサも、リサ・トレヴァーの先輩には頭が上がらないか。
善場主任は厳密に言えば、今はリサ・トレヴァーではない。
人間に戻れた元リサ・トレヴァーで、OGとも言える。
どこの世界でも、OB・OGの力は強い。
こりゃ後で、リサは説教の刑を食らうことになりそうだ。
実はリサが食人しない代わり、老廃物を吸い取る行為については黙認されていた。
それで食人衝動が抑え切れず、暴走されるよりは……という考えからだった。
しかし、リサはあまりにも学校内で『獲物』を取り過ぎた。
さすがの善場主任達も、先述の理由から見て見ぬフリをしていたが、直接報告が入ってしまった以上は動かざるを得なかったというわけだ。
愛原:「見た限り、リサには何の変化もありませんがね?」
善場:「見た限りは、ですね。でも実際、体内では何がしかの変化が起こっているかもしれませんし、何より……リサには調子に乗ると、こういう目に遭うという警告にもなりますので」
愛原:「な、なるほど……」
善場:「BSAAの車両をレンタルできた時点で、お察し頂ければと思います」
愛原:「は、はい」
BSAAでもうちのリサの動きについて、何か怪しいとでも思ったのだろうな、きっと。
まあ、窓口機関でもあるデイライトがまずは出動してみて、何も無ければそれで良いということだろう。
そして、そういう判断をするのは、現場の長である善場主任なのだ。