8ヶ月ほど前に交通事故で「大」怪我を負った友人が「ほぼ完治した」というので、祝いの会を開いた。
まだ手足の痺れが残るとはいうが、よく復活したものである。
事故発生の翌々日、病院に駆けつけたが、面会することは出来なかった。
親御さんは憔悴し切っていて、もう歩けないんじゃないか・・・と泣いていたくらいだもの。
頭もぱっくり、割れちゃったそうである。
そんな男が8ヵ月後、煙草を吸って酒を呑み、ガハハと笑えるようになるのだから、ひとの身体って、そして現代医学って素晴らしい。
とはいっても酒も8ヶ月ぶりだそうで、そこそこ呑めるヤツだったのに、1杯目のビールで完全に酔いどれ、自分にからんできやがった。
よかろうよかろう、それもよかろう。
いちどは死んだ命? だ、いくらでもからめばよい。
「―なぁまっき~、初めて『スピード』のジェフ・ダニエルズの気持ちが分かったよ」
「どういう意味?」
「最初のエレベーター事故で、生き残った彼がいうでしょ、“ツキだ”って」
…………………………………………
※映画『スピード』(94)の、そのシーンを我流翻訳で@まっき~
「俺たちが生き残ったのは、ツキがあったからだ」
「ツキ?」
「そうだ、ツキがなかったら、俺たちはあの世行き」
「・・・」
「そういうもんだろ、ボス?」
…………………………………………
「・・・ツキがあったから復活出来たと?」
「そう思うよ、マジで」
「なるほどね、あんまり簡単にそう思うとかいうのもちがうけれど、なんとなく分かるよ」
「だってさ、(小声で)きのう、風俗行ってきたんだけど、」
「(笑う)いいじゃない」
「まーーーず、素晴らしかったよ。もう一生出来ないと思ったからね」
「うん」
「昇天したとき、あぁ、俺はラッキーだったんだなって」
「いつ死んでもいいように、身辺整理はしておいたほうがいいよ」
「よくいわれるよね、そういうこと」
「とくにまっき~なんか、私生活がアレだろ?」
「(笑う)まぁ、アレだわな」
「べつに孤独死は老人だけに起こるわけじゃないし」
「うん」
「お前は模範的なチャリダーかもしれんけど、事故に巻き込まれる場合だってある」
「そりゃそうだ」
「第一発見者がなんていうかね、AVとエロ本に囲まれたお前の部屋を見て」
「俺はいいんだよ、そういう羞恥心はどこかに置いてきちゃったし」
「そうなん?」
「うん、まぁ身内はちょっと恥ずかしい思いをするかもしれんけど」
「ほかにもさ、たとえばお前の部屋には大量の原稿があるだろ。ほとんど公開されているんだろうけれど、なかには非公開のもない?」
「・・・あるっちゃあ、あるよ」
「なぜに非公開?」
「まぁ草稿であるとか、単に失敗であったとか」
「そういうの、読まれてもいいの?」
「・・・う~~ん」
「よくラブレター書いてたろ?」
「まあね」
「そういう下書きとか、ないの?」
「・・・あ、結局は渡せなかったやつが、ひとつ残ってる」
「なぜ捨てない?」
「・・・どうしてなんだろうね、なんとなく残してる」
「ほら、そういうの、すげー恥ずかしいでしょ」
「確かにそれは恥ずかしい」
「(笑う)どんなこと書いてあるの?」
「(苦笑)あなた見てるだけで、気分が高揚するとか」
「はずかしー!」
「(笑う)」
「それくらい、捨てておきなよ」
「そうだね」
「ところで、なんで渡せなかったの?」
「・・・まぁ、ヘタレだったんだろうよ、自分が」
「ふーん、恥も外聞もないというヤツが、珍しい」
「お前のサイトにさ、小学生のころに書いた自分宛の葉書が、2000年に届くというのがあったろ?」
「あぁ、あった」
「あれなんか俺、公開する意味が分かんない」
「(笑う)」
これのことね。
まぁ確かに恥ずかしいが、誰かが笑ってくれれば、それでいい。
Aのヤツ、ビール1杯で散々自分のことを冷やかし、二次会に突入する前に完全に伸びてやんの。
彼の自宅から近いところで呑んだので、仕方なくおぶってあげた。
このトシになって、73kgのチューネンをおんぶするとは思わなかったよ。柔道の試合でもないのに。
しかしまぁ、彼のことばに嘘や誇張はなかったはずで。
自宅に帰還し、DVDで『スピード』を流しながら、自分宛の葉書を見て苦笑するのだった・・・。
つまりあれだ、ちょっと強引だが、やっぱり人生は素晴らしいって話だ。
羞恥心をどこかに置いてきたとしても。
そう思って呑み直したビールは、いつもよりちょっとだけ苦かった。
…………………………………………
本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
前ブログのコラムを完全保存『macky’s hole』
…………………………………………
明日のコラムは・・・
『シネマしりとり「薀蓄篇」(35)』
まだ手足の痺れが残るとはいうが、よく復活したものである。
事故発生の翌々日、病院に駆けつけたが、面会することは出来なかった。
親御さんは憔悴し切っていて、もう歩けないんじゃないか・・・と泣いていたくらいだもの。
頭もぱっくり、割れちゃったそうである。
そんな男が8ヵ月後、煙草を吸って酒を呑み、ガハハと笑えるようになるのだから、ひとの身体って、そして現代医学って素晴らしい。
とはいっても酒も8ヶ月ぶりだそうで、そこそこ呑めるヤツだったのに、1杯目のビールで完全に酔いどれ、自分にからんできやがった。
よかろうよかろう、それもよかろう。
いちどは死んだ命? だ、いくらでもからめばよい。
「―なぁまっき~、初めて『スピード』のジェフ・ダニエルズの気持ちが分かったよ」
「どういう意味?」
「最初のエレベーター事故で、生き残った彼がいうでしょ、“ツキだ”って」
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※映画『スピード』(94)の、そのシーンを我流翻訳で@まっき~
「俺たちが生き残ったのは、ツキがあったからだ」
「ツキ?」
「そうだ、ツキがなかったら、俺たちはあの世行き」
「・・・」
「そういうもんだろ、ボス?」
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「・・・ツキがあったから復活出来たと?」
「そう思うよ、マジで」
「なるほどね、あんまり簡単にそう思うとかいうのもちがうけれど、なんとなく分かるよ」
「だってさ、(小声で)きのう、風俗行ってきたんだけど、」
「(笑う)いいじゃない」
「まーーーず、素晴らしかったよ。もう一生出来ないと思ったからね」
「うん」
「昇天したとき、あぁ、俺はラッキーだったんだなって」
「いつ死んでもいいように、身辺整理はしておいたほうがいいよ」
「よくいわれるよね、そういうこと」
「とくにまっき~なんか、私生活がアレだろ?」
「(笑う)まぁ、アレだわな」
「べつに孤独死は老人だけに起こるわけじゃないし」
「うん」
「お前は模範的なチャリダーかもしれんけど、事故に巻き込まれる場合だってある」
「そりゃそうだ」
「第一発見者がなんていうかね、AVとエロ本に囲まれたお前の部屋を見て」
「俺はいいんだよ、そういう羞恥心はどこかに置いてきちゃったし」
「そうなん?」
「うん、まぁ身内はちょっと恥ずかしい思いをするかもしれんけど」
「ほかにもさ、たとえばお前の部屋には大量の原稿があるだろ。ほとんど公開されているんだろうけれど、なかには非公開のもない?」
「・・・あるっちゃあ、あるよ」
「なぜに非公開?」
「まぁ草稿であるとか、単に失敗であったとか」
「そういうの、読まれてもいいの?」
「・・・う~~ん」
「よくラブレター書いてたろ?」
「まあね」
「そういう下書きとか、ないの?」
「・・・あ、結局は渡せなかったやつが、ひとつ残ってる」
「なぜ捨てない?」
「・・・どうしてなんだろうね、なんとなく残してる」
「ほら、そういうの、すげー恥ずかしいでしょ」
「確かにそれは恥ずかしい」
「(笑う)どんなこと書いてあるの?」
「(苦笑)あなた見てるだけで、気分が高揚するとか」
「はずかしー!」
「(笑う)」
「それくらい、捨てておきなよ」
「そうだね」
「ところで、なんで渡せなかったの?」
「・・・まぁ、ヘタレだったんだろうよ、自分が」
「ふーん、恥も外聞もないというヤツが、珍しい」
「お前のサイトにさ、小学生のころに書いた自分宛の葉書が、2000年に届くというのがあったろ?」
「あぁ、あった」
「あれなんか俺、公開する意味が分かんない」
「(笑う)」
これのことね。
まぁ確かに恥ずかしいが、誰かが笑ってくれれば、それでいい。
Aのヤツ、ビール1杯で散々自分のことを冷やかし、二次会に突入する前に完全に伸びてやんの。
彼の自宅から近いところで呑んだので、仕方なくおぶってあげた。
このトシになって、73kgのチューネンをおんぶするとは思わなかったよ。柔道の試合でもないのに。
しかしまぁ、彼のことばに嘘や誇張はなかったはずで。
自宅に帰還し、DVDで『スピード』を流しながら、自分宛の葉書を見て苦笑するのだった・・・。
つまりあれだ、ちょっと強引だが、やっぱり人生は素晴らしいって話だ。
羞恥心をどこかに置いてきたとしても。
そう思って呑み直したビールは、いつもよりちょっとだけ苦かった。
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