Cape Fear、in JAPAN

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『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

シネマしりとり「薀蓄篇」(34)

2013-03-18 00:15:00 | コラム
とにーもんた「な」→「な」いとおんざぷらねっと(ナイト・オン・ザ・プラネット)

複数の物語を紡いで一本の映画にする―というオムニバスは、映画のありかたとしては面白いけれど、Aは傑作、しかしBは駄作、Cはまあまあ、、、その結果、全体としても「まあまあ」といった風に評価そのものまで平均で求めてしまうため、けっこうリスクを伴うものだと思う。

黒澤の『夢』(90)にしても、前半と後半のエピソードは素晴らしいけれど、真ん中が・・・といった評が多く、全体の感想では「惜しい!」となってしまう。さすがに8つのエピソードは多過ぎたのかもしれない、、、なんて。

個人的なオムニバス三傑を挙げるとするならば・・・

スコセッシ・アレン・コッポラの三巨匠がニューヨークを捉えた『ニューヨーク・ストーリー』(89)、
ジム・ジャームッシュによる『ナイト・オン・ザ・プラネット』(91)、
日本映画の『BUNGO~ささやかな欲望~ 告白する紳士たち』(2012)だろうか。

『ニューヨーク・ストーリー』にしても、三つの物語すべてが素晴らしいといえるような出来ではなかった。
スコセッシとアレンが気負わず「さすが!」な物語を展開させたのに対し、コッポラは空回り、なにをどうしたかったのかさえ分からず、「すべての能力を、70年代に使い切ったのか?」なんて批判が聞かれたほどだった。


『ナイト・オン・ザ・プラネット』の原題は『Night on Earth』で、ほぼ同じ意味である「Earth」を「Planet」に変えた邦題は巧いと思った。響きがね、日本人としては「プラネット」のほうがいいと思うんだ。

五ヶ国―ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキ―を舞台に、タクシードライバーとその乗客の「ちょっといい話」を紡ぐ小品である。

ロサンゼルス篇のドライバーはウィノナ・ライダー、乗客はジーナ・ローランズ。(トップ画像)

ニューヨーク篇のドライバーはアーミン・ミューラー=スタール、乗客はジャンカルロ・エスポジートとロージー・ペレス。

パリ篇のドライバーはイザック・ド・バンコレ、乗客はベアトリス・ダル。

ローマ篇のドライバーはロベルト・ベニーニ、乗客はパオロ・ボナチェリ。

ヘルシンキ篇のドライバーはマッティ・ペロンパー、乗客はサカリ・クオスマネンとカリ・ヴァーナネン。

最も有名なのはロサンゼルス篇だが、
最もインパクトを残すのはローマ篇で、最も切ないのがパリ篇だろうか。

ローマ篇の乗客、パオロ・ボナチェリは神父に扮している。
ロベルト・ベニーニ演じるドライバーは、神父なんだからと勝手に懺悔を始めるが、その内容はおそろしくくだらない自慰話ばかり。心臓の弱い神父は薬を飲もうとするが、乱暴な運転のために薬を落としてしまい・・・という物語。
ドライバーをコメディアンのベニーニに演じさせた時点で「勝ち」だったのだろう、とにかく、ひたすら笑えるエピソードに仕上がっている。

パリ篇のベアトリス・ダルは盲目の女性で、乗せた直後は態度のでかい彼女に立腹したバンコレも、目の見える自分以上にこの世を「ちゃんと見ている」ように感じられる彼女と対峙し、なんともいえない感情に襲われるのだった・・・。

テーマの統一、舞台の統一、シチュエーションの統一。
などなど、オムニバスにはいろんなパターンがあるけれど、この映画を観ると「シチュエーションの統一こそ」オムニバスに最も適しているのではないか、、、と思わせてくれる。


きょうの動画は、そんなベアトリス・ダルの演技を





次回のしりとりは・・・
ないとおんざぷらねっ「と」→「と」おやまきょおこ。

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明日のコラムは・・・

『39歳 VS 15歳、運動神経で前者が勝つこともあるのだよ。』

コメント (1)
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