むーんりっとない「と」→「と」にーもんたな(トニー・モンタナ)
『シャブ極道』(96)っていう、身も蓋もないタイトルを持つ日本映画がある。
一時期、日本映画界は「役所広司だらけ」状態となったが、役所さんが人気者になる直前に出た怪作であり、と同時にこれは、疑いようのない傑作でもあった。
しかし。
このタイトルのために、ちょっとした問題が起こった。
「シャブ」は、そのまんま「覚醒剤」の意味で、劇場公開時はこのタイトルが許された―しかしながら、覚醒剤の描写が多過ぎて成人指定は喰らっている―のに、ビデオ倫理協会からNGを宣告され、『大阪極道戦争 白の暴力』というタイトルに変更されたのだった。
これに怒った監督の細野辰興は粘り強く抗議を続け、その結果、DVD発売の際には元のタイトルを取り戻せた。
ただ個人的にはこの経緯よりも、どこかの批評家が発した「じゃあ、『シャブシャブ極道』なら通るんじゃね?」というジョークのほうが印象に残っている。
面白いじゃない、ひとを喰った感じでさ。
確かに審査を通ったであろうし、二度繰り返すことによって、主人公のシャブ中具合がどれくらいなのか表現出来ている、、、ともいえるし。
そのくらい『シャブ極道』の役所さんは、いっちゃっている。
粉をぶっかけて、スイカを食べるんだからね。塩の代わりにシャブなんて、そーとーきてますよ。
麻薬中毒者・ジャンキーといえば、「虚ろな目⇔狂気の目」の反復、そして、真っ赤なお鼻だろう。
その描写の過激さから映画のなかのジャンキー「ベストワン」に、役所さん演じる真壁を選出・・・したいところだが、そうはならない。
残念ながら、真壁は4位である。
3位は『グッドフェローズ』(90)のヘンリー・ヒル(レイ・リオッタ)、
2位は『ブロウ』(2001)のジョージ・ユング(ジョニー・デップ)、
そして1位は、2位以下に倍以上? の得票数で差をつけたトニー・モンタナできまり。
ブライアン・デ・パルマとアル・パチーノが組んだ、『スカーフェイス』(83)の主人公である。
32年の名作『暗黒街の顔役』のリメイクだが、映画史的にも知名度的にもリメイクのほうが「格上」という珍しい例を作り出した快作。
上記のジャンキーランキングはあくまでも「個人的なもの」、
しかし映画小僧1000人にアンケートを取ってみても、この1位は変わらないのではないか。そのくらいモンタナの人気は高い。
どのくらい高いかというと、彼の頭文字をデザインにした、こんなキャップが作られるくらいなのである。
これは友人ふたりにプレゼントして「そーとー」喜ばれたし、自分もほしくて買った、つまり自分だけでみっつも購入しているのだった。
オリバー・ストーンによる脚本も、デ・パルマによる演出も素晴らしい・・・のだが、この映画を支えているのはアル・パチーノの熱演である。
演技過剰といっていいほどで、油ギッシュ過ぎて観ているだけで汗をかくくらい。眩暈を起こすくらい。
「裏」アメリカン・ドリームを夢見て、キューバからやってきたモンタナの成功と「あっという間の」挫折を170分をかけて描く。
映画としては、そんなモンタナの後半生を描いたような『カリートの道』(93)のほうが優れているのだが、
完成度なんか知ったことか! という、闇雲なエネルギーに包まれた映画にどうしようもなく魅かれてしまうところもあって。
熱く生きて「すぐに」破滅するという、ほとんど自爆のようなシニザマが素敵。
それどころか、ヒロイン役のミシェル・ファイファーが「とことん」野暮ったく、そういうところまで素敵に思えてくる。
これが、映画のマジックというやつか。
もちろん隣人だったら引っ越すにかぎるのだが、スクリーンの向こう側の話である、この熱さに乗っかってしまえばいいのだ。
あすのしりとりは・・・
とにーもんた「な」→「な」いとおんざぷらねっと。
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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
前ブログのコラムを完全保存『macky’s hole』
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明日のコラムは・・・
『シネマしりとり「薀蓄篇」(34)』
『シャブ極道』(96)っていう、身も蓋もないタイトルを持つ日本映画がある。
一時期、日本映画界は「役所広司だらけ」状態となったが、役所さんが人気者になる直前に出た怪作であり、と同時にこれは、疑いようのない傑作でもあった。
しかし。
このタイトルのために、ちょっとした問題が起こった。
「シャブ」は、そのまんま「覚醒剤」の意味で、劇場公開時はこのタイトルが許された―しかしながら、覚醒剤の描写が多過ぎて成人指定は喰らっている―のに、ビデオ倫理協会からNGを宣告され、『大阪極道戦争 白の暴力』というタイトルに変更されたのだった。
これに怒った監督の細野辰興は粘り強く抗議を続け、その結果、DVD発売の際には元のタイトルを取り戻せた。
ただ個人的にはこの経緯よりも、どこかの批評家が発した「じゃあ、『シャブシャブ極道』なら通るんじゃね?」というジョークのほうが印象に残っている。
面白いじゃない、ひとを喰った感じでさ。
確かに審査を通ったであろうし、二度繰り返すことによって、主人公のシャブ中具合がどれくらいなのか表現出来ている、、、ともいえるし。
そのくらい『シャブ極道』の役所さんは、いっちゃっている。
粉をぶっかけて、スイカを食べるんだからね。塩の代わりにシャブなんて、そーとーきてますよ。
麻薬中毒者・ジャンキーといえば、「虚ろな目⇔狂気の目」の反復、そして、真っ赤なお鼻だろう。
その描写の過激さから映画のなかのジャンキー「ベストワン」に、役所さん演じる真壁を選出・・・したいところだが、そうはならない。
残念ながら、真壁は4位である。
3位は『グッドフェローズ』(90)のヘンリー・ヒル(レイ・リオッタ)、
2位は『ブロウ』(2001)のジョージ・ユング(ジョニー・デップ)、
そして1位は、2位以下に倍以上? の得票数で差をつけたトニー・モンタナできまり。
ブライアン・デ・パルマとアル・パチーノが組んだ、『スカーフェイス』(83)の主人公である。
32年の名作『暗黒街の顔役』のリメイクだが、映画史的にも知名度的にもリメイクのほうが「格上」という珍しい例を作り出した快作。
上記のジャンキーランキングはあくまでも「個人的なもの」、
しかし映画小僧1000人にアンケートを取ってみても、この1位は変わらないのではないか。そのくらいモンタナの人気は高い。
どのくらい高いかというと、彼の頭文字をデザインにした、こんなキャップが作られるくらいなのである。
これは友人ふたりにプレゼントして「そーとー」喜ばれたし、自分もほしくて買った、つまり自分だけでみっつも購入しているのだった。
オリバー・ストーンによる脚本も、デ・パルマによる演出も素晴らしい・・・のだが、この映画を支えているのはアル・パチーノの熱演である。
演技過剰といっていいほどで、油ギッシュ過ぎて観ているだけで汗をかくくらい。眩暈を起こすくらい。
「裏」アメリカン・ドリームを夢見て、キューバからやってきたモンタナの成功と「あっという間の」挫折を170分をかけて描く。
映画としては、そんなモンタナの後半生を描いたような『カリートの道』(93)のほうが優れているのだが、
完成度なんか知ったことか! という、闇雲なエネルギーに包まれた映画にどうしようもなく魅かれてしまうところもあって。
熱く生きて「すぐに」破滅するという、ほとんど自爆のようなシニザマが素敵。
それどころか、ヒロイン役のミシェル・ファイファーが「とことん」野暮ったく、そういうところまで素敵に思えてくる。
これが、映画のマジックというやつか。
もちろん隣人だったら引っ越すにかぎるのだが、スクリーンの向こう側の話である、この熱さに乗っかってしまえばいいのだ。
あすのしりとりは・・・
とにーもんた「な」→「な」いとおんざぷらねっと。
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明日のコラムは・・・
『シネマしりとり「薀蓄篇」(34)』