Cape Fear、in JAPAN

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怒れる牡牛の物語

2013-07-13 03:02:48 | コラム
第16部「デヴィッド・クローネンバーグの物語」~第3章~

前回までのあらすじ


「『デッドゾーン』の結末は本質的には自殺です。マックス・レンは『ビデオドローム』の最後で自殺します。『ザ・フライ』の最後でブランドルフライはとどめを刺してくれと願い、マントル兄弟は基本的には二重自殺として『戦慄の絆』を閉じます。あなたの最近作4本はいずれも自殺で終わっていることからも、あなたがその点について思いめぐらせているのがわかります」(デヴィッド・プレスキン)

「自殺が、エレガントに正しく人生を構築する行為だというのは―ありうることだ、ある意味では」(デヴィッド・クローネンバーグ)

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グーグルの検索ボックスに「スティーブン」とだけ入れてみると・・・
最初に出てくるのは「スピルバーグ」ではなく「キング」だった。

ネット文化が80年代に到来したのであれば「スピルバーグ」だったのだろうが、現在ではちがう。
映画小僧にとっては「永遠の映画少年」でありつつ「畏怖の存在」として一目置くべき人物でも、一般的にはそうではないのかもしれない。
そんな現実に軽い衝撃を受けつつ、さて、キングについて記してみたい。

現代作家で最も自作が映画化されている人気者―このひとのすごさは、その人気が一過性で終わらないこと。
時代や流行にさえ無関係で、発表された直後から映像化の話が進むのだから、なんとも羨ましい存在である。

米エンターテインメント・ウィークリー誌が面白い企画を載せていて、題して「スティーブン・キング原作の映画化、そのベストとワースト」。

以下が、そのランキングである。


【ベスト10】

『ショーシャンクの空に』(94)
『シャイニング』(80)
『ミザリー』(90)
『スタンド・バイ・ミー』(86)
『キャリー』(76)
『ザ・スタンド』(94)
『デッドゾーン』(83)
『グリーンマイル』(99)
『ダーク・ハーフ』(93)
『クジョー』(83)

【ワースト5】

『マングラー』(95)
『シャイニング』(ドラマ版、97)
『地獄のデビルトラック』(86)
『ニードフル・シングス』(94)
『スティーブン・キング 痩せゆく男』(96)


ベスト・ワーストともに、概ね納得。

面白いのは、キング自身が監督をした『地獄のデビルトラック』がワーストに入っていること。

確かに凡作というか失敗作で、
しかしガッカリしたというより、あぁキングは小説の才能は抜群でも映画を撮るセンスはないのだな、よかったよかったと、なんとなく安心してしまうのだった。

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筆者選出のキング原作映画の3本は、『キャリー』『デッドゾーン』『ペット・セメタリー』(89)の順になる。(ちなみにワーストは、『ニードフル・シングス』だろうか)

上位2本が扱うのは「超能力」で、キングはほかにも『シャイニング』の少年や『炎の少女チャーリー』(84)、そして『グリーンマイル』など、特殊な能力を持ったキャラクターの「哀しき性」を描くことが多い。

とくに『キャリー』への個人的な思い入れは強く、年内に公開されるリメイク作の出来が気になってしかたがないほどなのだった。

主演のキャリー役には、キャリーにしては「可憐に過ぎる」クロエ・モレッツ。

リメイクは往々にして・・・とか、オリジナルがどうこうかとか、そういう否定的な意見をいうつもりはない。
失敗してほしくない、どうか成功しますように―と、祈っているだけなのである。




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『デッドゾーン』は、『キャリー』で作家デビューを飾った5年後に発表された長編小説である。

高校教師ジョニーは交通事故により、長い昏睡状態が続く。
5年後に目覚めると母は死に、恋人はほかの男と結婚していた。さらに事故の後遺症であろう、重い脳障害により苦悩の日々を送ることになる。

この脳障害(=デッドゾーン)と引き換えに、ジョニーは特殊な能力を授かる? ことになる。
他者や物に触れただけで、それらの過去や未来が見えるようになったのだ。

何度も人助けをしたにも関わらず、ふさぎ込むジョニー。
こんな超能力は要らない、ふつうの生活がしたい・・・しかし政治家グレッグと握手をした際、この男がのちに大統領となり、核戦争を起こすビジョンが見えてしまう。

それを止めることが出来るのは、俺だけだ。
ジョニーは暗殺者となり、グレッグを殺そうとするのだが・・・。

映像化に適した「壮大で哀しい」物語だが、余分な贅肉を刈り取った映画版もじつに素晴らしく、キング自身も『キャリー』と『デッドゾーン』だけは悪口ひとついわずに絶賛している。

しかし『デッドゾーン』は一般的な評価が高いいっぽうで、クローネンバーグ好きの一部は「マトモに過ぎる」といって否定的である。

それはそれで、なんとなく分かる。

この映画には人体の破壊や変態などが一切描かれないのだから。

クールな本人もキング原作で多少の緊張はあったか、解放されたクローネンバーグは目一杯に変態化? し、『ザ・フライ』(86)と『戦慄の絆』(88)を発表する。
これにファンは大喜びしたが、クローネンバーグは既に「その先」を見据えていた。


90年代、クローネンバーグの第二ステージの始まり。

どうやったら映像化出来るのか誰も分からなかった・・・というか、映像化の発想さえなかったであろうウィリアム・バロウズの奇書、『裸のランチ』を映画化するのである。

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つづく。

次回は、8月上旬を予定。

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本シリーズでは、スコセッシのほか、デヴィッド・リンチ、スタンリー・キューブリック、ブライアン・デ・パルマ、塚本晋也など「怒りを原動力にして」映画表現を展開する格闘系映画監督の評伝をお送りします。
月1度の更新ですが、末永くお付き合いください。
参考文献は、監督の交代時にまとめて掲載します。

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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』

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明日のコラムは・・・

『異常な状況で結ばれたものたちは、長続きしないのよ by アニー』

コメント (2)
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