Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

夜の夢こそ、まこと―2日遅れの金魚忌

2013-07-27 02:18:41 | コラム
位牌もない我流の仏壇ではあるが、毎日、線香をあげている。

ふだんは水を取り替え、手を合わせる程度。
ビールを呑むときは乾杯するジェスチャーを取ってから口をつけるし、当たり前だが、自慰をする前は扉(というか、襖)を閉めておく。

ギャラが入れば、果物などを供える。

それを、かーちゃんが死んでからずっと続けてきた―にも関わらず、今月の頭、25日が命日(=金魚忌)にあたることを思い出さないでいた。
初めてのことなので軽いショックを受けたが、最近、長時間の取材が増えたから・・・などと、都合のいいイイワケで自分を納得させようとした。

思い出したのは、命日の4日前から3日連続で見た夢による。

目覚めるとすぐ、扉(というか、襖)を開けて手を合わせた。

ごめんよ、ごめん、かーちゃん。忘れていたわけじゃないからね、、、なんて話しかけながら。


塀の上からダイブするかーちゃんをキャッチすることが出来なかったり、
止まらない観覧車に乗るかーちゃんを助けられなかったり・・・かーちゃんの夢はよく見るが、大抵は残酷な内容で、これは自分が抱える罪悪感が生む映像なのか。

しかし、今回の夢はちがう。
まるで、大林宣彦による映画『異人たちとの夏』(88)の「前半」のような、ファンタジックで穏やかなものだった。

脚本家(!)の主人公、風間杜夫が亡くなったはずの両親―片岡鶴太郎、秋吉久美子―に出会う。

両親を奪った交通事故は、彼が12歳のときに起こった。
彼は恐怖を抱くことはなくうれしさを感じ、両親の住む家に通い始めるようになるが、彼は次第に衰弱していく・・・という物語。

山田太一の原作小説を、市川森一が脚本化した佳作である。

※予告編




ジョギングを終えてシャワーを浴び、ビールを呑んでいると台所に人影が見えた。

それが、かーちゃんだった。

かーちゃんは、亡くなるころのかーちゃんではなかった。
たぶん自分が中学生のころの、まだ糖尿病で苦しむ前のかーちゃんである。

しかし自分は、現在の自分。
それが夢の面白くて自由なところだが、自分も『異人たちとの夏』の主人公と同様、恐怖心を抱くことはなく、ただただうれしくて、台所に立つかーちゃんの後ろ姿を見つめ続けるのだった。

「鶏の唐揚げと、ポテトサラダと・・・ほかに、なにがいい?」
「もう、それだけでオッケー。それだけで」
「あんたの好みは、ずっと変わらないんだね。もうオジサンって呼ばれる年齢なんじゃないの?」
「(苦笑)そうだけどね、かーちゃんの唐揚げ、最高だから」
「ご飯は?」
「食べる、食べる」
「同時に出していい?」
「いいよ、いいよ」

いつだって饒舌なはずの自分は口数が少なく、逆に口数はけっして多くなかったかーちゃんのほうが、よく喋っていた。

数分後―。
皿からこぼれそうになるほどの唐揚げとポテトサラダ、大盛りご飯をテーブルに置いたかーちゃん・・・だったが、台所に戻った瞬間に姿を消してしまう。

そこで、目が覚めた。
3日間、細部は異なるが内容は「ほぼ」同じ夢である。


前述した残酷な夢とはちがうから飛び起きることもなければ、寝汗もかいていない。
いないが、その夢で金魚忌が近いことを思い出した自分は少し後ろ暗くなり、急いで扉(というか、襖)を開けて自家製仏壇に手を合わせたのだった。


・・・・・というような内容のことを20代のころに書けば可愛らしくもあるが、このトシになって「かーちゃん」を連発したりしていると、マザコンのように思われるよ―と、友人からじつに真っ当な指摘を受けた。

のだが、まぁ実際にマザコンであろうから気にしない。

あぁそうさ、自分はロリコンでマザコンさ、だからどうした・・・とまで書くと、かーちゃんも嫌がるかな。


ともかく。
金魚忌を直前まで思い出さなかったという事実が、自分にとってショックだった。
それを思い出させたのが夢、、、というのが、かーちゃんに「気づいてよ」といわれているようで、これまたショックである。

罪滅ぼしのつもりか、
仏壇には上等な桃とマンゴーを供えた。

そうして、その夜、、、というか、昼夜逆転生活だから、昼―。

3日連続だったのだから、きょうも夢のなかで出会えるのではないかな・・・と期待し、酒の量を少なめにして寝てみたのだが、かーちゃんは現れなかった。


目覚めて、一服。

こんど会えるのは、来年のこの時期なのかもしれない。

敢えて忘れていたほうが、夢のなかで会えたりして―などと、バチアタリなことを考える39歳の夏であった。


かーちゃんの年齢に追いつくまで、あと10年・・・とりあえず、合掌。

…………………………………………

本館『「はったり」で、いこうぜ!!』

前ブログのコラムを完全保存『macky’s hole』

…………………………………………

明日のコラムは・・・

『映画だ、わっしょい。音楽だ、わっしょい。』

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする