Cape Fear、in JAPAN

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『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

シネマしりとり「薀蓄篇」(140)

2015-09-30 05:58:54 | コラム
はーとにひをつけ「て」→「て」いくつー(テイクツー)

どれだけ台詞を噛んでも、まちがえても、「間」がおかしくても、日常ってリアリティってそういうものだから、、、と、一発OKを出す監督が居る。

北野武がそうだし、アドリブを許す・楽しむスコセッシも(おそらく)そう。

いっぽうで、NGとOKの差が(誰にも)分からないほど、何度も何度も撮り直しを要求する監督が居る。

小津や、キューブリックがそうであった。


どちらも「らしいなぁ!」と思えるので、正しいとか正しくないとかの問題ではない。
テイクが少ないほど経済的かもしれないが、映画ってそれだけではないしね。


キアヌ・リーヴスが若手だったころのエピソードに、こんなのがある。

大御所アル・パチーノと組んだ、『ディアボロス』(97)。



前日―完璧に台詞を覚えたはずなのに、当日にまったく台詞が出てこない。
キアヌは、パチーノに緊張してしまったのである。

最初は「いいんだ、いいんだ。リラックスしよう」と優しかったパチーノであったが、それを3度も4度も5度も繰り返すので、とうとう怒ってしまったと。

1日だけの話ではない。
これが、最終日まで「ほぼ」継続された。

しまいには監督も呆れ果て、キアヌとパチーノの仲は険悪になっていく。
ここからは真実かどうか分からないが、「今後、君とは共演しない」といわれたのだとか?

プロフェッショナルというもの・・・とは思うが、ちょっとキアヌに同情したりして。

たとえばデ・ニーロとパチーノ、キャリア的に差異はないが、怒られて怖いのはパチーノだと思う。
三船と仲代だったら、後者のほうが(じつは)怖い。

そういうこと。


さて。
映画史上で最もテイク(=撮影)を重ねた作品といえば、おそらくチャップリンの『街の灯』(31)になるのだろう。

盲目の花売り娘に、浮浪者チャーリーを「金持ち」だと勘違いさせるためには、どういう展開を創り出せばいいのか。

(1)チャーリーが道を渡ろうとすると、
(2)道路は渋滞中、おまけにバイクに乗った(宿敵の)警官が居る、
(3)仕方なくチャーリーは高級車のドアを開けて乗り込み(!)、
(4)反対側に出る

(5)ドアの重たい音を聞いて、花売り娘はチャーリーを金持ちと勘違いする

※30秒からのシーン




この結論に辿り着くまで、368日間を要した。

そうしてNGの回数は、342回に及んだのである。


完璧主義者、そうして、スターゆえに許された時間・金の使いかただな~。

黒澤やチャップリン、キューブリックでは「らしい!」といって頷いてくれるけど、これを新人監督がやったら即クビになりそう。

こういうエピソードを知る度に、いいなぁ映画ってロマンがあるよなぁ!! と思うのである。


※撮影風景をまとめた動画…重苦しくないので、キアヌは羨ましがるかな笑





次回のしりとりは・・・
ていく「つー」→「つー」たっく。

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明日のコラムは・・・

『ハーフパンツ野郎の秋ファッション + 9月コラムの目次』

コメント (1)
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