うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

白の丘

2017年02月19日 | 真面目な日記

この部屋も、幾分か暖かくなってきて、

日が差す南側の窓を開けてやると、

我が家の猫達は、こぞって、日向ぼっこをしにやって来た。

 

 

私が勤めている会社の近くにも、

猫が日向ぼっこをするに、格好な場所がある。

 

昼間は、ほとんど人間の出入りのない駐車場のすぐ脇が、

人の背丈ほど土地が高くなっており、

その続きに、工場が建っている。

その工場の壁際の、ほんの狭い幅の土地には、草や木が生えており、

そこだけを切り取って見てみると、まるで小高い丘のようだ。

寒い冬には、工場の壁が風よけになり、

天気のいい日は、日向ぼっこには最適な場所だ。

 

その小高い丘は、以前は、白かーさんの棲み処だった。

白かーさんという猫は、用心深く、頭の良い猫で、

そのくせ、甘く可愛い声で鳴く、真っ白で美しい猫だった。

 

私が初めて、白かーさんを見た時は、白かーさんは人間と暮らしていた。

その家の前を通りかかると、

玄関先で、よく日向ぼっこをする姿を見たものだ。

 

数年経って、白かーさんを見た時は、白かーさんは家を失い、

棲み処を、あの小高い丘に移していた。

それ以来、白かーさんは、

助けたいと願う人間達から、

食べ物を貰って命を繋いだ。

 

ある夏の日、白かーさんは、

幼い我が子を、あの丘のふもとに残して、

道路の上で、一瞬にして散った。

私は、涙を流す事さえ出来ず、だた呆然とするだけだった。

 

それでも、

その時、あの小高い丘には、

まるで弔いのように、真っ白なユリが咲いていた。

 

寒さが続く中、

ある日の昼下がり、あの丘に眼をやると、

見慣れない猫が2匹やってきた。

どこから来たのだろうと不思議に思い、

双眼鏡で覗いてみると、2匹の首には、色違いの首輪が付いていた。

2匹で転がってじゃれながら、日向ぼっこを楽しんでいる。

それを、しばらく微笑ましく見ていると、

今度はよく見かける野良猫が、やって来た。

楽しそうな2匹の横を通り過ぎ、

少し離れた所で腰を下ろし、じっと佇む。

私は、構えていた双眼鏡を、ただ下ろすだけだった。

 

それでも、

あの時、太陽は、

この3匹の体を、分け隔てなく温かく包んでいた。