昔は、強くて怖かった母さんが、
最近は、喧嘩すると、すぐ弱気になって、
「お前に、わしの気持ちなんて、分からんのや」
なんて、小さな声で言う。
おはようございます。
そんな母さんに、私は大きな声で、ピシャンと言ってやったんだ。
「なーに言ってんだ。
母さんみたいな、じゃじゃ馬で破天荒なド天然こそ、
私の事なんて、分からんだろーが!」ってね。
そのまま、勝ち誇ったような顔で、実家を後にしてやったんだ。
私が小さい頃、いじめられてた事を、母さんは知ってるか?
泥だらけで、家に帰った時、母さんは居なかった。
パチンコ屋でフィーバーしてたんだ。
ヒャッヒャ言いながらフィーバーだ。
持ち帰ってきた景品は、ポテトチップス、うすしお味だ。
ちがう、母さん!
私の好きなのは、コンソメパンチ味だ!
私が、酷い風邪を引いた時の事、母さんは覚えてるか?
母さんは、寝起きで不機嫌なまま、
「病院、行ってこい」とだけ言って、二度寝した。
え?独りで?
私、9歳だけれども?
私が、子供会のスキー合宿に行った時の事、思い出してよ。
ペラッペラの黄色いカッパを持たせてくれたよな。
中は、普通にジャージだった。
首に巻いたタオルで、かろうじて生き延びたよ。
母さん、私、雪山が怖い!
私が、実はグレてた事、気付いてたか?
17歳の頃、派手な格好で朝帰りして帰って来たら、母さんは、
「お前は、横道に反れる可能性あるで、わし、眼を光らせとるんや」
と言った。
母さん?この姿を見てよ。
こんなデーハーなミニスカート履いて朝帰りする17歳は、
もうすっかり、反れてます。
右に反れて、そろそろ左にも行ってみよっかなっていう段階だ、
むしろ、もう手遅れだよ、母さん。
これじゃ埒が明かないと思って、私は早めに、お嫁に行ったんだ。
ある日、具合が悪くって、
それでも、一日中、姑さんに叱られながら、
蒼い顔して用事を済ませ、布団に倒れ込んだ夜、
初めて、母さんが恋しくなって泣いた事を、
母さんは知らない。
母さんだったら、気付いてくれるのにって、
そう思って、泣いたんだっけ。
母さんなら、分かってくれるのにってっさ・・・
きくさん、あんたも弱くなったよな
いっちょ、やるか?
なんだい?
ぜんぜん、痛くないぞ。
まだまだ
ほれ、どや?
もっと、やるか?
もう?
もう終わりなのか?
きく「婆さんに、謝れよ。」
なーに、
明日になれば、知らん振りして、笑っているのさ、母さんは。
きく「スキありー!」
うっわ、やられたー。
明日も、遊ぼうな。