朝、実家に行くと、
どこかから子供の泣き声が聞こえた。
私には、耳に入ってくるだけだったが、
母さんは、寒いのに窓を開けて、
その泣き声を注意深く聞いていた。
おはようございます。
しばらくすると、泣いていたはずの子供の笑い声が聞こえてきて、
母さんは、安心したように窓を閉めた。
そして、やっと自分のご飯を食べ始めようとするから、
私は、「母さん?入れ歯、入れんと食べれんぞ~」と笑った。
よく、総入れ歯を入れ忘れたまま、ご飯を食べようとする老人が、
小さな子供の泣き声は、放っておけないのかと思い、私は感服した。
その後、出勤して仕事をしていると、
隣のデスクの熟女さんが、なにやらチラシを見ながら聞いてきた。
「ねえ、錦織健というオペラ歌手、知ってる?」と。
私は、はいはい、あれね!と思い、
千の風になってという有名な曲を歌い始めた。
「わたしが~ おばさんに~なぁぁぁって~」と。
ここまでを、かなり大きな声で、歌い上げた直後、
一旦、時が止まった。
そして、熟女は、はっと気づいた。
「やだも~、もうやだ~。
それは森高千里の私がおばさんになってもぉ~でしょ~?やだ~」
熟女はそう嘆いて、デスクに突っ伏し、しばらく泣いていた。
泣くほど、笑っていた。
私も突っ伏そうかと思った瞬間、
「千の風は、秋川雅史ね」と社長に指摘され、
突っ伏す機会を失い、私は天を仰いで泣いた。
涙を流しながら、笑った。
しかし、これで良かったんだと思う。
あのまま放っておかれたら、間違いに気づかす、
きっと私は、この生涯で、あと何度かは、
「わたしが~ おばさんに~ なぁぁぁって~」と
千の風になっての旋律に乗せて歌う事になっただろうから。
よろしければ、皆さんも歌ってみて欲しい。
全く違和感ないから。
そんな我が家にも、放っておけないヤツがいる。
こんな格好で寝ていたら、放っておけない。
「どうしたの?」と聞くしかない。
おたまは、他の猫より、うんと運動神経が鈍い。
可笑しな言い方だが、走り方もヘタクソだ。
ジャンプもヘタクソ、横っ飛びに至ってはできない。
食べ方も下手だし、甘え方もヘタクソだ。
猫のくせに、小さな音は聞こえない。
だからって、大きな声で呼ぶと、逃げて行っちゃうんだもんな。
そのくせ、こんな顔で、私の前に立つもんだから、
さすがに、放っておけないよな
おたま「おばちゃん、おらを触るなよ~」
とか言っちゃって~
おたま「や~め~ろ~、むーーーん」
ほら~、気持ちよくて、むーんってなっとるやん。
お前ったら~、もうやだ~やだも~
放っておけんやないかーーーい!