あの日の空には、
鳥は1羽も飛ばなかった。
その代わりに、ヘリコプターのプロペラ音が
何層にも重なって響いていた。
鳥も私も、きっとみんな、その音に怯えていた。
おはようございます。
その時、私の勤め先の近くにある、
養豚場の豚の殺処分が行われていたのだ。
理由は、豚コレラという病気が見つかったからだそうだ。
6000頭以上の豚が殺処分されると知り、
私は、可哀そうにと、反射的に呟いた。
養豚場の前の道には、車もたくさん止まっていた。
大きなアンテナのついた車や、黒塗りの車に、
トラックや、重機もあった。
養豚場の建物に目を移すと、全身白い人間が歩いているのが見えた。
私は、その時も、やっぱり反射的に、可哀そうにと呟いた。
そして、
今、私は考えている。
何を可哀そうだと思ったのだろうかと。
しかし、答えは導き出せない。
私は、答えの出せない、矛盾の中で生きている。
命の重さに違いはない。
そんな言葉に縋りながら、矛盾の中で生きている。
笑ったり、怒ったり、泣く事もあれど、
いつも生きる希望を求めている。
私を一人生かすために、どれほどの命が消えているのか、
それさえ、数えることも出来ないまま、
自分勝手なわがままを言いながら、生きている。
そんな事を考えると、私は、ごめんなさいとしか呟けないのだ。
こんな事でも起こらなければ、すっかり忘れて不感症になる。
空に再び鳥が飛び始めれば、きっと、私は忘れてしまう。
忘れたふりをして、生きていくんだ。
ただ、
私は、圧し潰されそうな重さを背負って生きぬく、
それだけは、決して忘れたくない。
うんこさん?
君は、いつも本気だな
ん?
はいはい
これな。
重い君も守り抜いて、生き抜くぞ。