うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

マアコとの約束 3

2025年01月22日 | マアコのこと

マアコを病院へ預け、社へ戻ると、

車庫の奥から大きな声が響いていた。
 
 
おはようございます。
 
「デッカ!」
 
名前を呼ぶと、物陰からこそっと顔を覗かせるが出ては来ない。
 
マアコが戻るのは翌朝だ。
 
「デッカ、お母さんは明日戻ってくるからね。」
 
そう声を掛けて社内へ入った。
 
デッカは生後4カ月のオスだ。
 
マアコの避妊の予約をするため行った動物病院の獣医は、
 
「親子共、手術できますよ。
 
と言ったが、私は、
 
「子猫は、捕まえられたら連れて来ます。」
 
と答えた。
 
 
今回、マアコの避妊を依頼したのは、
 
我が家の猫らを診てもらっている、メスや針を持つと目が輝くサイコパス先生ではなく、
 
野良猫の保護やTNRに協力的で猫の扱いにも慣れた獣医だ。
 
非常に早口で決して人の目を見ない。
 
こちらが質問すると、一旦挙動不審になる。
 
かなりコミュ障チックだ。
 
しかし、どんな事でも親身に考えてくれるし、腕も間違いないと評判だ。
 
その上、様々なケースのTNRを扱っているから話が早い。
 
早口だから、本当に早い。
 
早過ぎる。
 
なので、この獣医に初めて会った際は、少し悩んだ。
 
「オペ好きのサイコパスか、猫好きのコミュ障か、どっちがいいんだ?」
 
そして、こう思った。
 
「どっちにしてもクセは強い・・・」
 
ええい、だったら、結論は会社から近い方!
 
よって、コミュ障先生に依頼した。
 
 
 
マアコの入院中、
 
デッカは延々、車庫の奥で泣きじゃくっていた。
 
大きな声で泣くくせに、車庫の奥から全く出て来られない。
 
私はデッカが不憫で、夜の間も2度、会社に様子を見に行った。
 
泣きじゃくるデッカを呼びながら、翌朝のシュミレーションを考えてもいた。
 
「リターンは、マアコがデッカを確認できるまで待ち、出来たと思えたら扉を開けることにしよう。」
 
捕獲された野良猫は、リターン直後は闇雲に走り去ってしまうことが多い。
 
そして、戻って来る猫もいれば、戻って来ない猫もいる。
 
それなりに馴れた野良猫なら、その翌日か翌々日に戻って来ることがほとんどらしいが、
 
マアコは、そこまで懐っこい猫じゃない。
 
ご飯の最中でも、私以外の人の足音がすれば、一旦逃げ隠れる。
 
せめて、我が子の存在を思い出せば、少しは落ち着いてリターン出来るのではと考えた。
 
それでも、
 
リターン後、翌々日までにマアコが戻ってこなければ、
 
どうやってもデッカを捕まえて保護しなければと覚悟した。
 
「車庫から出られないようじゃ、単独で生きるのは、まだまだ無理だ。」
 
マアコとの約束よりも、デッカの安全が優先だ。
 
我が家の猫らにも、相当な負担を強いることになるだろうが、やるしかない。
 
 
 
翌朝、
 
私は会社にいるデッカのもとへ、我が家のおじさんは動物病院にいるマアコのもとへ向かった。
 
デッカは相変わらず泣いていたが、流石に腹が減ったようで、
 
泣きながら車庫の奥から出てきた。
 
「もうすぐ、マアコが戻って来るからね。」
 
デッカは、ウップウップと嗚咽を漏らしながらフードを食べた。
 
私はデッカが食べ終わったら、すかさず猫じゃらしをデッカの前で振って見せた。
 
「ほら、デッカ、遊ぼう。」
 
腹が満たされて少し安心したのか、
 
デッカは泣くのを忘れて遊びに夢中になった。
 
その時、おじさんの車が到着した。
 
「来た。デッカ、マアコ来たよ。」
 
 
マアコは無事、避妊手術を終えて帰って来た。
 
ここからだ。
 
マアコはデッカを認識できるだろうか。
 
それどころか、扉を開けてしまったら、一生の別れになるかもしれない。
 
私は体をこわばらせたまま、
 
車からケージを降ろし、デッカの居る車庫から見える場所に置き、包んでいた布をはいだ。
 
「デッカ、デッカ!マアコだよ。」
 
呼ぶと、デッカは大きな声で泣き、物陰から顔を覗かせた。
 
猫の視力は、それほど良くないはずだが、
 
それでもデッカは、マアコに気付いたのか、泣きながら物陰から出てきた。
 
「マアコ、分かるね。デッカの声だよ。」
 
そう声を掛けたても、マアコはピクリとも動かない。
 
とはいえ、パニックに陥っている様子はない。
 
よし、今だ。
 
今かな?
 
今なのかな?
 
結局、マアコがデッカを確認できたのか、全く分からん!
 
それでも、私は意を決してケージの扉を開けた。
 
 
「マアコ、おかえり。」
 
扉を開けてやっても、すぐには動こうとはしない。
 
「そうだ、マアコ。チュール持ってくるね。」
 
そう言って離れた途端、マアコはケージから飛び出して行った。
 
 
デッカを車庫に置き去りにして行ってしまった。
 
 
マアコは、いつ戻って来るだろうか。
 
マアコ、戻ってこい。
 
私は、いつまで待つことになるのだろうと考えたら、目眩がした。
 
 
続く
 
じれったい記事が続いております。
 
大変、申し訳ありません。
 
次回4で、完結すると思いますので、
 
コメントは、お気遣いなく~。
 
 

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