家庭教師の老先生、美しい王妃(本当に美人!エレーナ・パジェーノワ)、友人たち、道化といった芸達者、美人揃いのダンサーたちの自然な振る舞いにどんどん宮廷絵巻に引き込まれていくわたくし。
一幕から充実の舞台。これが一流、ロシアの誇る皇帝直属の歴史と典雅なスタイルを誇るバレエ団の底力か・・・とタメ息。
もちろん、それもイーゴリ・ゼレンスキーの高雅な王子振りがあってのことですが。
わたくし、彼を誤解していたのかもしれません。
そう、今まで何度か新国立劇場にザハロワと客演したときなど、何度かその演技を拝見していたのですが・・・。190cmの長身を活かしたソロでも魅せる回転やジャンプの直線的な切れ味の良さ、とダンスール・ノーブルと定評の高い押さえた演技(というか演技しなさすぎ!)が魅力な反面、いかんせん心の中が見えづらい・・・。と、失礼を承知で大根役者呼ばわりをしたことなぞもありましたっけ(あぁ、ごめんなさい)。
今回の彼は、王子と言っても世間知らずのお坊ちゃまではありません。
30台後半の落ち着きと責任感を持ち合わせた王位継承者。
母王妃に対する礼を尽くした控えめな愛情表現、酔いつぶれた家臣にさわやかにきりりと祝杯を上げて思わず居住まいを正させる場面など、小さな仕草の積み重ねから、この宮廷を日常としてそこで生きている、育ちが良く思慮深い王子像がくっきりとその輪郭を現し始めます。
ある意味今のゼレンスキーならではの造形、ナチュラルなリアルさを持った存在感ある王子と言っても良いかもしれません。
一幕2場、白鳥の湖で、彼は美しい姫、白鳥に身を変えたオデットに出会います。
心に描いていた理想の女性。高貴にして優美、知性も感じさせる大人の女性。それでありながらなんとメランコリックな悲劇性を纏っているのでしょう。自分がなんとかしてあげたい、お話ください、お救い致します・・・とゼレ王子がおびえる彼女を静かに説得します。
定評のあるロパートキナのオデット、「白鳥に姿を変えた王女」という設定ながら、今まで幾多のバレリーナが”鳥類”だったりただの”王女”だったり、とメタモルフォーゼの妙をを感じさせてくれない造形にとどまっていたことでしょう。
ロパートキナの俗世間に身を沈めることの出来ない高い精神性、典雅な踊りの質がぴったりと嵌る役どころ。ソロも素晴らしいが、静かに支えるぜレンスキー王子の愛を感じて腕の中で寄り添う表情の美しさに息を呑んだ今回のロパートキナでした。
さて、2幕のオディールは・・・。
長い手足が意志を秘めて翻ります。
オデットと同じ美しい顔ながら、時折眼をカッと見開き、そこにオディールのたくらみごとを遂行せんとする意志の力を見て取らせつつも王子を翻弄。
花嫁候補を選ぶ際には、でも僕には心に決めた人が・・・いるのだよ・・・と母から渡された花嫁にささげる白い花束を最後道化のところで落とす所作も、大きなことは何もしていないのに気持ちの伝わるゼレ王子、オディールが登場してからはもう周りが見えていません。
ところでこの場面の民族舞踊のディベルティスマン、ロシアのバレエ団の面目躍如と思わせることが多いのですが、マリインスキーもさすが。
とりわけスペインの踊りで 金髪でラインの美しい王子的容姿でシャープな踊りを見せるアレクサンドル・セルゲーエフと、多分ベテランキャラクテールで、スペインの踊りはしっかり身体に入っている、といわんばかりの圧倒的なパフォーマンスを魅せたガリーナ・ラフマーノワのペアは見事でした。
最終章で、許しを請うゼレ王子と裏切りにあった悲しみが哀切なオデット、そして彼女をかばう美しい白鳥たち・・・。
ひたすらに許しを求め、そんな彼の真摯な愛情に徐々に心和らげるオデット・・・がこの幕の要で、鋭くジャンプで切り込む悪役ロットバルトは只々愛のデュエットを踊る二人の姿に勝手に弱ってゆき、思いついたように向き合って肩に手をかけたゼレ王子の手にはいつの間にかロットバルトの片羽が。羽をもがれ悶絶のロットはその羽を身体に落とされただけで息絶える・・・という、何もにもしていないのにゼレ王子勝利!という不自然さが否めないラストではありましたがそれを許してあまりある神々しい2人の寄り添う姿。
3時間5分の上演時間を長いと思わせない充実の舞台。
もしかすると自己BESTの「白鳥」に今夜出会えたのかも・・・と熱い思いでデマチ決行!
一時間後にゼレ王子サイン会、そして並びなおしてロパートキナ・・・ゼレ王子の優しい笑顔とふうわりした握手にうっとり。
ロパートキナのまたしても美しい笑顔に満足感いっぱい。
とにかく2人の化学反応の素晴らしさに感動したソワレでございました・・・!
そういえば、東京バレエ団で春に白鳥を務める予定の上野水香ちゃんが幕間のロビーで注目を浴びていました。彼女も173cmのロパートキナに勝るとも劣らないプロポーションの持ち主ではありますが、前回彼女のオデットを観たときには、イギリスの湖水地方で観たリアルな白鳥が蘇ったほど生き物としての白鳥らしさ万全で姫度が低かった覚えが・・・オディールはコケティッシュで魅力的でしたが。
ロパートキナをお手本にがんばれ~
一幕から充実の舞台。これが一流、ロシアの誇る皇帝直属の歴史と典雅なスタイルを誇るバレエ団の底力か・・・とタメ息。
もちろん、それもイーゴリ・ゼレンスキーの高雅な王子振りがあってのことですが。
わたくし、彼を誤解していたのかもしれません。
そう、今まで何度か新国立劇場にザハロワと客演したときなど、何度かその演技を拝見していたのですが・・・。190cmの長身を活かしたソロでも魅せる回転やジャンプの直線的な切れ味の良さ、とダンスール・ノーブルと定評の高い押さえた演技(というか演技しなさすぎ!)が魅力な反面、いかんせん心の中が見えづらい・・・。と、失礼を承知で大根役者呼ばわりをしたことなぞもありましたっけ(あぁ、ごめんなさい)。
今回の彼は、王子と言っても世間知らずのお坊ちゃまではありません。
30台後半の落ち着きと責任感を持ち合わせた王位継承者。
母王妃に対する礼を尽くした控えめな愛情表現、酔いつぶれた家臣にさわやかにきりりと祝杯を上げて思わず居住まいを正させる場面など、小さな仕草の積み重ねから、この宮廷を日常としてそこで生きている、育ちが良く思慮深い王子像がくっきりとその輪郭を現し始めます。
ある意味今のゼレンスキーならではの造形、ナチュラルなリアルさを持った存在感ある王子と言っても良いかもしれません。
一幕2場、白鳥の湖で、彼は美しい姫、白鳥に身を変えたオデットに出会います。
心に描いていた理想の女性。高貴にして優美、知性も感じさせる大人の女性。それでありながらなんとメランコリックな悲劇性を纏っているのでしょう。自分がなんとかしてあげたい、お話ください、お救い致します・・・とゼレ王子がおびえる彼女を静かに説得します。
定評のあるロパートキナのオデット、「白鳥に姿を変えた王女」という設定ながら、今まで幾多のバレリーナが”鳥類”だったりただの”王女”だったり、とメタモルフォーゼの妙をを感じさせてくれない造形にとどまっていたことでしょう。
ロパートキナの俗世間に身を沈めることの出来ない高い精神性、典雅な踊りの質がぴったりと嵌る役どころ。ソロも素晴らしいが、静かに支えるぜレンスキー王子の愛を感じて腕の中で寄り添う表情の美しさに息を呑んだ今回のロパートキナでした。
さて、2幕のオディールは・・・。
長い手足が意志を秘めて翻ります。
オデットと同じ美しい顔ながら、時折眼をカッと見開き、そこにオディールのたくらみごとを遂行せんとする意志の力を見て取らせつつも王子を翻弄。
花嫁候補を選ぶ際には、でも僕には心に決めた人が・・・いるのだよ・・・と母から渡された花嫁にささげる白い花束を最後道化のところで落とす所作も、大きなことは何もしていないのに気持ちの伝わるゼレ王子、オディールが登場してからはもう周りが見えていません。
ところでこの場面の民族舞踊のディベルティスマン、ロシアのバレエ団の面目躍如と思わせることが多いのですが、マリインスキーもさすが。
とりわけスペインの踊りで 金髪でラインの美しい王子的容姿でシャープな踊りを見せるアレクサンドル・セルゲーエフと、多分ベテランキャラクテールで、スペインの踊りはしっかり身体に入っている、といわんばかりの圧倒的なパフォーマンスを魅せたガリーナ・ラフマーノワのペアは見事でした。
最終章で、許しを請うゼレ王子と裏切りにあった悲しみが哀切なオデット、そして彼女をかばう美しい白鳥たち・・・。
ひたすらに許しを求め、そんな彼の真摯な愛情に徐々に心和らげるオデット・・・がこの幕の要で、鋭くジャンプで切り込む悪役ロットバルトは只々愛のデュエットを踊る二人の姿に勝手に弱ってゆき、思いついたように向き合って肩に手をかけたゼレ王子の手にはいつの間にかロットバルトの片羽が。羽をもがれ悶絶のロットはその羽を身体に落とされただけで息絶える・・・という、何もにもしていないのにゼレ王子勝利!という不自然さが否めないラストではありましたがそれを許してあまりある神々しい2人の寄り添う姿。
3時間5分の上演時間を長いと思わせない充実の舞台。
もしかすると自己BESTの「白鳥」に今夜出会えたのかも・・・と熱い思いでデマチ決行!
一時間後にゼレ王子サイン会、そして並びなおしてロパートキナ・・・ゼレ王子の優しい笑顔とふうわりした握手にうっとり。
ロパートキナのまたしても美しい笑顔に満足感いっぱい。
とにかく2人の化学反応の素晴らしさに感動したソワレでございました・・・!
そういえば、東京バレエ団で春に白鳥を務める予定の上野水香ちゃんが幕間のロビーで注目を浴びていました。彼女も173cmのロパートキナに勝るとも劣らないプロポーションの持ち主ではありますが、前回彼女のオデットを観たときには、イギリスの湖水地方で観たリアルな白鳥が蘇ったほど生き物としての白鳥らしさ万全で姫度が低かった覚えが・・・オディールはコケティッシュで魅力的でしたが。
ロパートキナをお手本にがんばれ~