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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

Kバレエ「くるみ割り人形」

2006-12-25 01:59:40 | BALLET
23日の土曜日に、熊川哲也率いるK Ballet Companyのクリスマス公演「The Nutcracker」を観に、府中の森芸術劇場に行って参りました。

今年のバレエ収め。そして、ロイヤルバレエ団プリンシパルダンサーの吉田都さんが定評あるくるみ割り人形のコンペイトウの精(熊川版ではマリー姫)役で、一日だけ出演される貴重な公演。
この配役が発表された翌日、手を尽くしてGETしたプラチナチケット。1F席の最後列ですがセンター。府中の森の劇場は新しいので、席が互い違いに配されており、スロープもしっかりついているので、視界良好。しっかりと全体と細部を楽しむことが出来ました。

Kバレエは、舞台装置にお金を惜しまない(笑)ことで定評があり、とりわけこの「くるみ割り人形」はヨランダ・ソナベンドの幻想的で豪華な美術で評判の高いもの。バレエ団としては新興ですが、プロとして客を呼べる公演をコンセプトに、観客の目を楽しませる豪華なセットや衣装に対して ダイレクトに資金投資をしている姿勢には好感が持てます。
今、日本のバレエ団で最多の公演回数を誇るだけあり、天才ダンサー熊川の営業的才覚もまた花開いているといえましょう。割高、とされるチケット代も、そういう文化事業に対する個人的サポートとして捕らえて応援しているファンが多いようで、これはこれで大変結構なことだと思います。

果敢に、古典の全幕もののバレエを「熊川版」として再構成・再振付した作品を、次々に繰り出し、かつチケットも裁けている、という安定した経営を基盤に、英国ロイヤルバレエのレパートリーである、フレデリック・アシュトン振付の作品など、日本ではあまり公演される機会の少ない名作も紹介して行こうとする姿勢も、商売一辺倒ではない理念が感じられて好感。
今回、吉田都さんが、日本での活動拠点としてこのバレエ団を選んだのも、古典のレパートリーが豊富でアシュトン作品も踊れる、ということが決め手となったとか・・・。

この日のCASTは都さんを迎えての初の全幕(小品「2羽の鳩」では11月にすでにKバレエDebut済)ということと、12月のKバレエ全国ツアーの楽日であるということで、Kバレエ渾身のBEST CAST(多分)。
くるみ割り人形と王子の2役は座長・熊川哲也。ドロッセルマイヤーはロイヤル時代の同輩でKバレエの正団員として定着しているスチュアート・キャシディ。
少女クララは小林絹恵。オリジナルバージョンですとお菓子の国で出会う、クララの憧れのプリンセス、コンペイトウの精に相当する、熊川版では「マリー姫」と設定されている主役は吉田都さん。

熊川版では、ねずみの呪いで王子はくるみ割り人形に、王女はねずみ頭にされてしまうが、おもちゃの兵隊対ネズミの戦いに勝利して、純粋な少女が大きな金のくるみを割るとその呪いが解ける・・・という設定。
バレエ「くるみ割り人形」の一幕は、シュタールバウム家のクリスマスの情景から始まるのが常ですが、熊川版では、その前に、ネズミに呪いをかけられるシーンが挿入されており、充分にそのストーリーが観客にわかるような演出になっているのが特色。
この新解釈は、舞踊評論家など一般には素晴らしい解釈とされてすでに受け入れられていますが、わたくしにはちょっと気になることが・・・。
全幕でバレエ作品を観ることの楽しみのひとつに、素晴らしい音楽と踊りの世界の一体感に浸る・・・という喜びがあるのですが、熊川版は物語を優先させるが為に、随所で音楽の流れを断ち切っており、場合によっては(ラストのコンペイトウの精のグラン・パ・ド・ドゥの後に挿入されるクララとドロッセルマイヤーのPDDには眠りの森の美女の音楽一部流用)他の曲を入れたりしているので、チャイコフスキーの音楽が染み付いている耳にはちょっと違和感も・・・。

人形王国の王様・后は人間世界のシュタールバウム夫妻が2役で務めます。
王妃役は、もとタカラジェンヌ・天野裕子さん。王はギャビン・フィッツパトリック。
クララの弟フリッツ役のアレクサンドル・プーベルも、ですが、Kバレエは意外とインターナショナル。
コールド、ソリストの男性は外国籍のダンサーも多く、(なぜか女性は日本人)通常主役2人は外国人スター脇を国内のバレエ団が固める、あるいは海外のバレエ団の来日公演のメンバーに1人2人日本人が・・・という構図を見慣れた目には新鮮。