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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

TAKARAZUKA雪組公演「マリポーサの花」

2008-10-26 22:56:47 | TAKARAZUKA
続くお芝居は正塚晴彦作・演出の「マリポーサの花」



一言、ハードボイルド・ワールド!でした。
レイモンド・チャンドラーやゴルゴ13、ジョン・ル・カレの冷戦時代のスパイ小説などがお好きな方なら間違いなく嵌まります
(以降ネタバレありですので、これからご覧になるかたはご注意ください)

お話はとある中南米のアメリカ資本に搾取される独裁政権の小国・・・とありがちな設定ですが、主人公がその政権を樹立するに当っての功労者である元軍人、表の顔は高級クラブのオーナー、裏の顔は大統領に賄賂を送って密貿易で稼ぎ、その稼ぎをプランテーションオーナーを名義に病院・学校事業に流すという善意の現実主義者。
過去と陰と自分だけの確固たる価値観をもつヒーロー、ネロは勿論雪組TOPの水夏希。
信念を持つ経営者、プランテーションオーナー、イスマヨールを専科の未沙のえるがさすがの余裕で演じます。
その娘でお互い一目見て運命的な出会いを感じるヒロイン・セリアは娘役TOPの白羽ゆり。
男通しの友情・葛藤がテーマのこの作品の中で、ヒロインの占める位置は極小。娘役の活躍する場面は皆無に等しく、この2人の愛は、あくまで寡黙な、使命感に燃えるヒーローに対して自分の愛の占める場所が彼の心にはないのかも・・と苦しむヒロインの見せ場はあまりありません。が、その台詞に込められた真情、舞台姿の美しさでダークな男のドラマに咲く一輪の花としての存在感をさりげなく示しているのはさすが。
メゾソプラノ~アルトの声が大人の女性らしく、好感が持てます。
主役2人のダンスシーンは息がぴったり。



セリアの弟、大学生のリナレスは男役3番手の音月桂。音楽好きで明るい彼はネロのクラブに歌の上手い姉とともに出演しますが、大統領暗殺未遂事件に関与し、ク-デターを支持する学生運動の活動家として危ない橋を渡るも、ネロに助けられます。

リナレスをかばううちにクーデターを目論むチャモロの亡命先メキシコからの帰還を助けるまでに関わりをふかめてしまうネロを、時に諌め、最後は彼の理想に殉じて命をかけてしまう唯一無二の親友、軍での部下、クラブでの片腕・エスコバルを彩吹真央。
このオハナシは男女のロマンスよりも、この2人の男の友情が実は隠れメインテーマゆえ、二人きりの台詞劇がとても長いのですが、それを冗漫に感じさせない2人の息の合い方、役作りの緻密さは評価に値します。

愛するセリアの弟、リナレスの危機を助けるために、安全な場所から、危険を伴うクーデターへと、現実と理想の狭間に揺れながらも行動するネロ。
彼の周りには、利権を奪取しようと目論むマイアミのマフィアに通信社の記者実はCIAなど、ひとくせある人物が蠢きます。

マフィアのボスから脅されるも逆に立場を逆転させる場面の凄みとスマートさ、戦闘シーンの迫力など、この手の男臭さには好き嫌いが分かれそうですが、男の惚れる男のロマン、を体現した水さんはどのシーンも隙がなく、スーツ姿の似合い方は尋常ではありません・・・




でしょ?(笑)

最後、軍による妨害が予測されるチャモロ上陸現場に戦闘服で赴くネロとエスコバル・・・
その前にセリアに決意を告げる際、生き延びていれば毎月この日にこの花を贈る、とマリポーサの花を手渡すネロ。
ラスト、その約束どおり届けられた花を手にしたセリアの万感の想いのこもった表情に涙。

で、それに引き続いてお約束のロケットと大階段のシーンにつながるのですがあまりに一つの芝居としての完成度が高かったので、そのときになって、あ、これって宝塚のMusicalだったのね、そういえば(爆)という感じ。

確かに、宝塚のメインMusicalにしては歌と踊りは圧倒的に不足しています。
とりわけ娘役のポーションの低さは不満が出ても仕方ないかも・・・。
只、作品としての充実度、舞台に漂う緊迫感、一見複雑なバックグラウンドをわかりやすく進めるストーリーテリングの手堅さ、などにおいて出色の出来であることは確か。
今の男役陣に華ある役者が揃った雪組ならではの作品と評価したいと思います。

ロケットの淡いピンクを基調にした色合いの衣装はステキ。
最初、GOLDの垂れ幕でストライプに区切られたバックのその間あいだにスッとピンクのダンサーがポ-ジングするところ、大好きです!
2、3番手が青、TOPは赤、と明快かつシンプルな衣装、そしてTOP娘役の全身ベビーピンクのスパンコールに彩られた衣装が美しく、その他の方々の水色の衣装の中でキレイに映えていました


TAKARAZUKA 雪組公演「ソロモンの指輪」

2008-10-26 10:44:28 | TAKARAZUKA
10月25日の土曜日、東京宝塚劇場にて、雪組公演を午後の部で観てまいりました。
実は一人で、しかも当日チケットも持たずに行ったのです・・・
そして初サバキでの購入・・・。(これって書いていいのかしら?)
2F席センターの見やすい位置をGETできました

実はおきもの仲間一のタカラヅカ通でいらっしゃる宮本さんのお話で気になっていて・・・。
ショー、Musicalともに、独特の世界観を持つ脚本家の先生が担当されていて、しかもショーの方の方は今回でタカラヅカを退団してしまわれる・・・ということは実際に見るLastChanceってこと?
TOPの水夏希さんのクールビュ-ティも好みだし、3番手さんの音月桂ちゃんも同期にファンが多く、話だけは聞いていたので実際に見てみたかったし・・・という理由もあり、イソイソと。

結果、はい、行って良かったです!
スゴク好みでした。タカラヅカでこんなに見ていてダメだなぁと思うシーンが皆無なことって珍しい!
(大抵ひとつかふたつは子供のふりした娘役の金切り声ハイトーンボイスとかどうしても受け付けない衣装、とか苦しいシーンがあるのですがxxx)



まずはショーから。

「ソロモンの指輪」

旧約聖書のソロモンのお話をベースにしています。
神殿建設のために祈った古代イスラエルのソロモン王のためにヤハウェが大天使ミカエルをつかわして、あらゆる天使や悪魔を使役することができ、動物の声を聞き分けられるという真鍮と鉄でできた黄金色の指輪。
舞台中央に置かれた巨大な指輪のセットの中で蠢く黒い羽をつけたダンサーたち、のシーンが強烈。

他にもフェリーニ映画さながらに色とりどりの極楽鳥のようなダチョウの羽などで飾られたイブニングを身につけた女性たちが宝石箱から出された貴石のように見えるシーン、そしてなんといってもブルーのグラデーションでフリルを染めたフラメンコ衣装の女性ダンサーの群舞が海を暗示するシーンの圧倒的な美しさといったら!

ええと、群舞の衣装がどれも良かったのでメインのヒトについて語るのをすっ飛ばしてしまいましたが、(失礼!)2番手3番手さんが黄金色の衣装で歌い、TOPは白、あるいは白ベースの衣装で鮮やかに歌い踊る、という趣向。

歌えるヒトに歌わせ踊れるヒトに踊らせる、という荻田浩一氏の手腕を堪能出来ました。

唯一残念なのは大道具。巨大な鳥かごの中で2人の羽をつけたダンサーが鏡合わせのように左右対称に位置している・・・というシーンでの鳥かごの無骨さにはちょっとがっかり。ボテッとしているのです。
もっと繊細なつくりに見せれば華やかでレビューらしくどこかセクシーな衣装にも似合ったでしょうに・・・。
衣装は・・・男役のタキシードは好きですがそのほかで感心することはあまりない宝塚の衣装・・・。特に娘役の衣装は社交ダンス初心者向け、みたいなウエストマークAラインのおとなしげなドレスが多くてセクシー・ゴージャスとは程遠いものが多かったのでもとより娘役群舞のシーンは極論捨てシーンだったのに、今回の豪華でオトナっぽくてアダっぽささえ感じる衣装の素晴らしさときたら。

荻田氏演出、好みかも~
と喜んだのが最後の公演、というのがなんとも皮肉なことですが、宮本さんに教えていただかなかったら観る事さえなかったかも・・・。改めて感謝です
30分、しかもお芝居の前、というのが珍しい。でも凝縮された見ごたえのあるものでした。