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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

「マニュエル・ルグリの新しき世界」 Bプロ 2日目・3日目・楽日

2010-02-08 03:02:03 | BALLET
2月7日(日)
ゆうぽうとホールにて、

「マニュエル・ルグリの新しき世界」 Bプロを観て参りました。

ルグリ・ガラ、といえば、「ルグリと輝ける仲間たち」というシリーズで、オペラ座の若手、ソリストなど、ルグリによる選抜隊で来日。注目の若手、テクニックに秀でたソリストなど、オペラ座の注目株と、バレエ団全体の引っ越し公演では取り上げづらい作品を紹介してきましたが、今回はスペシャル編、という感じで、ルグリが今まで踊ってきた作品を世界のスターダンサーに声をかけて再構成、という企画。

《マニュエル・ルグリの新しき世界》
Bプロ
ルグリと輝ける世界のスターたち


【第1部】

「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
ヘザー・オグデン ギヨーム・コテ

「モペイ」
フリーデマン・フォーゲル

「スリンガーランド」
アニエス・ルテステュ パトリック・ド・バナ

「アザー・ダンス」
オレリー・デュポン デヴィッド・ホールバーグ

「優しい嘘」
シルヴィ・ギエム マニュエル・ルグリ

【休憩】

【第2部】

「マリー・アントワネット」
アニエス・ルテステュ パトリック・ド・バナ

「ハロ」
ヘレナ・マーティン

「ドニゼッティ・パ・ド・ドゥ」
上野水香 高岸直樹

「失われた時を求めて」 "モレルとサン・ルー"
ギヨーム・コテ デヴィッド・ホールバーグ

「三人姉妹」
シルヴィ・ギエム マニュエル・ルグリ

◆上演時間◆
第1部 7日 13:30 ~ 14:30  8,9日18:30~19:30
休憩 20分
第2部 7日 14:50 ~ 15:45  8.9日 19:50~20:45   

※当初発表いたしました出演者に変更が生じております。
「アザー・ダンス」に出演を予定しておりましたフリーデマン・フォーゲルはリハーサル中に首を痛め、「アザー・ダンス」に出演することができなくなりました。
そのため、マニュエル・ルグリの判断により「アザー・ダンス」はデヴィッド・ホールバーグが、「ドニゼッティ・パ・ド・ドゥ」は上野水香のリハーサル・パートナーを務めていた高岸直樹が急遽出演することになりました。
何卒ご了承のほどお願い申し上げます。なお、「モペイ」は予定どおりフォーゲルが踊ります。

ということだったのですが、
実は・・・第一部の最後、伝説のペア、ギエムとルグリの「優しい嘘」があまりに素晴らしくて・・・
平日の公演は18:30始まりで、会社帰りには間に合わない可能性が強かったので日曜日にチケットを取ったのですが、
うーん、これはちょっとくらい遅れてもどうしてももう一度観なくては!!!と
幕間の休憩中に月曜日のチケットを追加で押さえてしまいました
というわけで、詳しい感想はまとめて明日に・・・

というつもりだったのですが、8日も行ったらまた9日の楽日も行きたくなりxxx
はい、また会場でチケットを買ってしまいましたxxx
連日走ります!
五反田へ、五反田へ!


「マニュエル・ルグリの新しき世界」 Aプロ初日②

2010-02-08 01:37:23 | BALLET
2010年2月3日、水曜日。
ゆうぽうとホールでのNEWルグリガラ、Aプロの感想を少しだけ・・・

「The Picture of...」

振付: パトリック・ド・バナ
音楽: ヘンリー・パーセル



クジラの鳴声に始まり、パーセルのオペラ「ディドとエアネス」の終幕のアリア「私が地に横たわるとき」が流れ、ダークなピタッとしたTシャツに黒いパンツのシンプルな衣装のルグリが重厚で静謐な空間で自己の内面への旅へといざなうような作品。
昨年の世界バレフェスのGALAでも見ましたが、今回、振付がもう身体にしみ込んで、さらなる表現の深まりを見せてくれました。
今の自分にぴったり、とルグリ自身が語るように、大げさな盛り上がりや演出を排してシンプルに徹していながら観る者を惹きこむ求心力を感じます・・・。


「White Shadow」世界初演

振付: パトリック・ド・バナ
音楽: アルマン・アマー
衣装: 高井秀樹(stodja)

エキゾチックでドラマチックな音楽はフランス映画界で活躍するアルマン・アマー。
錆びた金属のような3枚の大きなパネルが男性群舞によってさまざまなフォーメーションに移動させられる簡素な背景。
テーマは力強さの中の調和、宇宙と精神性・・・
「エネルギーが重要なテーマ」というダンサーとしても参加したド・バナがルグリと東バの選抜メンバーに宛書きをした新作。

ゼロ地点(地球)を中心に、闘争(火星)と愛(金星)、パワー・熱(太陽)と静かな冷たさ(月)をあらわす2つのペアが出現し、その周囲で緑やブルーの華やかなフリルのドレスの女性ソリスト3人と、それぞれが違うデザインの黒の革ベストとパンツ姿の5人の男性群舞、そして長く垂れ下がった袖の生成りの貫頭衣のコールド、という構成。



ゼロ地点、ということで1時間の舞台にほぼ出ずっぱりの吉岡さんが凄い。
ロングのボブに墨色のシースルーが肌を覆うロングドレス。バレエの言語とは異なる摺り足で内面の悩み・葛藤を滲ませながら常にテンション高く存在する、という難しい役どころ。
妖精のような役がぴったりの華奢でほっそりとした容姿を持ちながら、ジプシー女の情熱のソロもこなす吉岡さんならではの、ジュリエット・グレコのような存在感はさすがの一言。



筋肉質の長身、刺青の肩、まるで虎のようなド・バナは闘争を、上野さんは愛を暗示するというペアなのですが、この二人が意外なほど相性が良い。
個性が際立つド・バナさんに対し、並みのバレリーナでは相手役が務まらないと思われますが、玉虫ワインカラーの深いスリットが入ったスリークなロングドレスから屹立する長い脚!ハッとさせる鮮烈さは水香ちゃんならでは。



暖かさとパワーのルグリはさすがの存在感。早いテンポでポジションチェンジを繰り返す高難度の振りもこともなげにこなし、相手役に抜擢された西村さんも柔軟性の高い資質を生かして健闘。
一か所尻もちをついた?ように思えた場面がありましたが、ルグリが巧みにフォローして、あれも振りの一部だったのかな?という感じに。冷たさ、を求められる役づくりで、ということもあったのでしょうが表情がかなり緊張していて・・・お察しいたします。。。
西村さんの衣装はコパーブラウンのロングとミッドナイトブルーのショートの2種。
ブラウンは特にお似合いでした。



衣装と言えば、女性ソリスト、高木さんの水色、奈良さんの群青、川島さんの若草、それぞれに自然界を想起させてデザインも華があって素敵でしたが、貫頭衣のコールド、黒革の男性群舞と重なるとそれぞれが異質すぎてちょっと・・・と思いました。主要な5人との相性はそれぞれ悪くないのですが、舞台進行と衣装設計にもうひとつ精度が高まれば、もっと完成度としての印象がUPしたのでは・・と惜しまれます。



素晴らしかったのは男性群舞。中でもセンターを踊った松下さんの、隅々まで力が漲りつつも抜群に切れの良い動きに充実を感じました。振りそのものも踊っていてさぞ気持ちが良いだろうと思う類のカッコよさ。
ともすれば抽象的な概念をテーマにしたコンテンポラリーが陥りがちな難解さをこの男性群舞の良い意味でのショーアップされたテンポの良さが救っていた・・・という観も。

一からバレエ団と作り上げてきた、というだけあって、東バの持ち味にとても合った作品。
オリジナルレパートリーとして今後も大切に育てていっていただきたい作品だと思いました。

ルグリは、完全にこの作品の一部として、大きな存在でありながらもあえて溶け込んでいた印象。
今、秋からのウィーン国立バレエ団芸術監督としての準備期間にまた大きな財産を経験値として取り込まれたのではないでしょうか。

観る側としても、スリリングで面白い観劇体験でした