連日素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたパリ、オペラ座バレエ団の来日公演も最終日となりました。
3月23日(日)15:00~
上野の東京文化会館にて。
あと1週間もすれば、桜が開花するでしょうに。
残念。オペラ座のダンサーたちにも観てほしかったです。
パリ・オペラ座バレエ団 日本公演
「椿姫」
プロローグ付 全3幕
アレクサンドル・デュマ・フィスの小説に基づく
音楽: フレデリック・ショパン
振付・演出: ジョン・ノイマイヤー(1978年)
美術・衣装: ユルゲン・ローゼ
照明: ロルフ・ヴァルター
2006年6月20日パリ・オペラ座初演
◆主な配役◆
マルグリット: アニエス・ルテステュ
アルマン: ステファン・ビュリョン
デュヴァル氏(アルマンの父): ミカエル・ドナール(ゲスト・エトワール)
マノン・レスコー: ローラ・エッケ
デ・グリュー: ヴァンサン・シャイエ
プリュダンス: サブリナ・マレム
ガストン: クリストフ・デュケンヌ
オランプ: レオノール・ボラック
公爵: ローラン・ノヴィ
N伯爵: シモン・ヴァラストロ
ナニーナ(マルグリットの侍女): クリスティーヌ・ペルツェー
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
指揮: ジェームズ・タグル
ピアノ: エマニュエル・ストロセール、フレデリック・ヴェス=クニテール
◆上演時間◆
第1幕 15:00 - 15:50 【休憩 20分】
第2幕 16:10 - 16:50 【休憩 20分】
第3幕 17:10 - 17:55
連日役替りでこの公演を観て参りましたが、今回が最終日。
東京では一度限りのアニエス・ルテステュのマルグリット。
アルマンを務めるのは、ジョゼ・マルティネス引退後、177cmの長身のアニエスを文字通り支えてきたステファン・ビュリオン。
アニエスと言えば・・金髪高身長、スーパーモデルのようなクール・ビューティ―で、若いころは優等生的イメージが強かったのですが、このところガラ公演でもコミカルな役どころを楽しげに演じたり、ベテランエトワールとなってからはその音楽的に正確無比な美しいパの希少性に改めて気づいた頃からアニエスが出演する=オペラ座エトワールのクォリティが保証された公演である、というくらいの存在に。
満を持して・・の大トリで、しかもオペラ座で定年を迎えた年の来日公演で、ルグリ先生ガラやバレフェスの常連だったこともあり、長きに渡ってNBS主宰のオペラ座公演に多大なる貢献をしてきた、ということで特別なアニエスさよなら公演仕様。
勿論満員御礼、「大入り」の赤札がエントランスに。(他の日も「椿姫」は大入りでしたが)
一日限り、ということで「バレエの祭典」会員はほとんどこの日をリクエストしたのではないでしょうか。
オペラ座公演全体の印象ですが、会場にバレエ関係者が多いイメージが・・・。
(姿勢とスタイルの良い方が多く、ロビーに集う人々の立ち姿が違う印象)
それにしても、イザベル、アニエスとスターエトワールの相次ぐ引退は寂しいですね。
オレリーも来年?再来年?そう思うと、今年の「椿姫」はやはり今のオペラ座を後年思いだす時のKEYとなる公演だったということになるのだろうなと心して。
さて、アニエスのマルグリットですが・・・。
やはり華やかで美しい。
オレリーがその艶やかな美貌で辺りを席捲し、イザベルが妖艶な大人の女性の魅力を振りまいていたマルグリット。
アニエスのマルグリットには洗練されたエレガントな物腰と思いがけずピュアな印象を与える笑顔のGAPに惹き込まれる魅力が溢れていました。
とりわけ髪をほどいてダウンスタイルにしたときの緩やかにウェーブした金髪が白いドレスに映えて、心からリラックスした様子でショパンの音楽の一音一音を美しく表現した彼女の踊りの素晴らしさたるや。
DVDがこの日のカップル主演で出ているのですよね。
海外版のBDと迷って、この日は買わなかったのですが後日買わなくては。
衣装デザインも手掛けているだけあってかお衣装の着こなし、ドレスのさばき方もさすが。
髪をさりげなく耳にかける仕草、リフトされたときに、男性ダンサーの顔にかからないようにあらかじめスカートの流れ方も計算した動きなど、彼女ならではの美しい舞台づくりへのこだわりが更に振付の美しさ、そこに込められた意味を明確に提示していたと思います。
2幕、皆で夏の午後の戯れを楽しんでいる時、パトロンである公爵が不快感をあらわにしてピアノを中断させ、アルマンに去るように指示。マルグリットは立ち去ろうとするアルマンを押しとどめ、真っすぐに公爵を見返してアルマンが外した腕を再度自らのウエスト位置に置かせます。
公爵と彼のゲストであった友人たち皆が立ち去り、アルマンと2人っきりでのPDD.
ここでのアニエスの少女のような笑顔と柔らかなシフォンを重ねた白のドレス姿が屈強なステファンとの対比でとても華奢に見えました。
来客を告げる侍女ナ二―ナ。アルマンの父親と知り、彼を外させ、髪をまとめて薄物のドレスの上にケープを羽織って女主人として優雅に出迎えます。
伸ばした手を、視線を逸らすデュバル氏の様子から察知してさりげなく引っ込めて、お茶を運んできたナ二―ナを制し、彼の話に耳を傾けます。
アニエスはその表情で、彼の話に共感していることがわかる。そして、デュバル氏の息子に対する自らの思いを吐露するとともに、犠牲を払うことを約束します。彼女の様子に胸を打たれたデュバル氏が暇乞いをするにあたり、自らマルグリットの手を取ってキスをします。
息子をたぶらかし女狐め、くらいの勢いで憤然としたデュバル氏が、知性と常識を持ち、他人に共感する柔らかな心を持った清楚な女性が、心から愛する男性との別れを受諾し、自己犠牲を払うことを約束するマルグリットに出会って、その先入観を覆される、という場面。マルグリットの内面を図らずも良く示している場面だと思います。
オペラではこのアルマン父とマルグリットの場面が実は一番好きなのですが、アニエスとミカエル・ドナ―ルのパのやり取りからその場面で感じるのと同様な感動を覚え、アニエスの踊りが見える音楽であるという自説をまた改めて実感。
ステファンは感情表現が終始控え目。
白い肌に黒髪、繊細な表情とリフト任せておけ、な、長身でがっしりとした体躯を持つ期待の若手エトワール。
今まで、アニエスのリフト要員くらいに思っていたのですが(失礼)苦しみのソロ、彼1人で場面を持たせるのをはじめて観て、思いがけずパッション溢れる力強いパと鋭い跳躍に彼自身の力量を改めて感じました。
ただ、やはり感情の表し方は淡泊ですね。
とりわけ、マルグリットへの当てつけに、娼婦仲間で若手の売れっ子オランプと戯れの情事を行おうとするところがおざなりで。オランプ役のレオノール・ボラックがコケティッシュに演技して埋めていましたが・・・。
それだけならマルグリットへの純情として称えられるのですが、その後再会して燃え上がる2人・・・でも、やはり淡泊(というより、前日のマチューが甘かったからかも)で。でも、この抑制された愛情表現が彼の持ち味なのかもしれません。
後日の夜会で、マルグリットを侮辱し、札束入りの封筒で傷つける場面、再び彼女のパトロンとなった公爵をあしらう様、心配してフォローしようとする、マルグリットの親友プリュダンスとその彼氏ガストンへのニヒルな無礼っぷりは堂にいったものでしたから、彼なりのバランスなのでしょう。
終始、アニエスを支え、真摯にアルマンとして舞台に生きる内省的な姿に、所謂スターエトワール(他日が、エルヴェとマチューという華やかなアルマンでしたから余計に!)とは異なる美学を感じました。
カーテンコールは本当に大きな拍手で・・・というか、この日はアニエスのPDDの切れ目毎に拍手が入っていたのですが^^;、本当に大きな拍手&最後はスタオべで、締めくくられました。
何度も幕が開き、ダンサー、マノン役のローラ・エッケに迎えられたピアニストのお二人、アニエスに迎えられた指揮者のジェームズ・タグル氏、そして今回が最後の来日公演となるであろう、芸監ブリジット・ルフェーブル女史、その他主要スタッフの方々?も前列に並び、途中から後列からアニエスに呼ばれて前列に加わった現・恋人?のダンサーも。
そして、NBSの佐々木氏代行で代表業務に着いて久しい高橋氏がアニエスに白バラの、ルフェーブル女史に紅バラの?ブーケを手渡し、舞台天井から降りてくる恒例のSAYONARAの幕と金のコンフェッティとともに、アニエスのこれまでの貢献に感謝の意が日仏語で書かれた横断幕が。
オペラ座定年引退(YTでそのカーテンコールが観られます)後もゲスト・アーティストとしてクレジットされているほど信頼が厚い、という話がプログラムに出ていましたので、全くの引退というわけでもなさそうで、ちょっとホッとしていますが、日本公演でオペラ座のセンターとして踊る彼女を観るのは最後。
ステキな作品でお見送りが出来たのは幸いでした
3月23日(日)15:00~
上野の東京文化会館にて。
あと1週間もすれば、桜が開花するでしょうに。
残念。オペラ座のダンサーたちにも観てほしかったです。
パリ・オペラ座バレエ団 日本公演
「椿姫」
プロローグ付 全3幕
アレクサンドル・デュマ・フィスの小説に基づく
音楽: フレデリック・ショパン
振付・演出: ジョン・ノイマイヤー(1978年)
美術・衣装: ユルゲン・ローゼ
照明: ロルフ・ヴァルター
2006年6月20日パリ・オペラ座初演
◆主な配役◆
マルグリット: アニエス・ルテステュ
アルマン: ステファン・ビュリョン
デュヴァル氏(アルマンの父): ミカエル・ドナール(ゲスト・エトワール)
マノン・レスコー: ローラ・エッケ
デ・グリュー: ヴァンサン・シャイエ
プリュダンス: サブリナ・マレム
ガストン: クリストフ・デュケンヌ
オランプ: レオノール・ボラック
公爵: ローラン・ノヴィ
N伯爵: シモン・ヴァラストロ
ナニーナ(マルグリットの侍女): クリスティーヌ・ペルツェー
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
指揮: ジェームズ・タグル
ピアノ: エマニュエル・ストロセール、フレデリック・ヴェス=クニテール
◆上演時間◆
第1幕 15:00 - 15:50 【休憩 20分】
第2幕 16:10 - 16:50 【休憩 20分】
第3幕 17:10 - 17:55
連日役替りでこの公演を観て参りましたが、今回が最終日。
東京では一度限りのアニエス・ルテステュのマルグリット。
アルマンを務めるのは、ジョゼ・マルティネス引退後、177cmの長身のアニエスを文字通り支えてきたステファン・ビュリオン。
アニエスと言えば・・金髪高身長、スーパーモデルのようなクール・ビューティ―で、若いころは優等生的イメージが強かったのですが、このところガラ公演でもコミカルな役どころを楽しげに演じたり、ベテランエトワールとなってからはその音楽的に正確無比な美しいパの希少性に改めて気づいた頃からアニエスが出演する=オペラ座エトワールのクォリティが保証された公演である、というくらいの存在に。
満を持して・・の大トリで、しかもオペラ座で定年を迎えた年の来日公演で、ルグリ先生ガラやバレフェスの常連だったこともあり、長きに渡ってNBS主宰のオペラ座公演に多大なる貢献をしてきた、ということで特別なアニエスさよなら公演仕様。
勿論満員御礼、「大入り」の赤札がエントランスに。(他の日も「椿姫」は大入りでしたが)
一日限り、ということで「バレエの祭典」会員はほとんどこの日をリクエストしたのではないでしょうか。
オペラ座公演全体の印象ですが、会場にバレエ関係者が多いイメージが・・・。
(姿勢とスタイルの良い方が多く、ロビーに集う人々の立ち姿が違う印象)
それにしても、イザベル、アニエスとスターエトワールの相次ぐ引退は寂しいですね。
オレリーも来年?再来年?そう思うと、今年の「椿姫」はやはり今のオペラ座を後年思いだす時のKEYとなる公演だったということになるのだろうなと心して。
さて、アニエスのマルグリットですが・・・。
やはり華やかで美しい。
オレリーがその艶やかな美貌で辺りを席捲し、イザベルが妖艶な大人の女性の魅力を振りまいていたマルグリット。
アニエスのマルグリットには洗練されたエレガントな物腰と思いがけずピュアな印象を与える笑顔のGAPに惹き込まれる魅力が溢れていました。
とりわけ髪をほどいてダウンスタイルにしたときの緩やかにウェーブした金髪が白いドレスに映えて、心からリラックスした様子でショパンの音楽の一音一音を美しく表現した彼女の踊りの素晴らしさたるや。
DVDがこの日のカップル主演で出ているのですよね。
海外版のBDと迷って、この日は買わなかったのですが後日買わなくては。
衣装デザインも手掛けているだけあってかお衣装の着こなし、ドレスのさばき方もさすが。
髪をさりげなく耳にかける仕草、リフトされたときに、男性ダンサーの顔にかからないようにあらかじめスカートの流れ方も計算した動きなど、彼女ならではの美しい舞台づくりへのこだわりが更に振付の美しさ、そこに込められた意味を明確に提示していたと思います。
2幕、皆で夏の午後の戯れを楽しんでいる時、パトロンである公爵が不快感をあらわにしてピアノを中断させ、アルマンに去るように指示。マルグリットは立ち去ろうとするアルマンを押しとどめ、真っすぐに公爵を見返してアルマンが外した腕を再度自らのウエスト位置に置かせます。
公爵と彼のゲストであった友人たち皆が立ち去り、アルマンと2人っきりでのPDD.
ここでのアニエスの少女のような笑顔と柔らかなシフォンを重ねた白のドレス姿が屈強なステファンとの対比でとても華奢に見えました。
来客を告げる侍女ナ二―ナ。アルマンの父親と知り、彼を外させ、髪をまとめて薄物のドレスの上にケープを羽織って女主人として優雅に出迎えます。
伸ばした手を、視線を逸らすデュバル氏の様子から察知してさりげなく引っ込めて、お茶を運んできたナ二―ナを制し、彼の話に耳を傾けます。
アニエスはその表情で、彼の話に共感していることがわかる。そして、デュバル氏の息子に対する自らの思いを吐露するとともに、犠牲を払うことを約束します。彼女の様子に胸を打たれたデュバル氏が暇乞いをするにあたり、自らマルグリットの手を取ってキスをします。
息子をたぶらかし女狐め、くらいの勢いで憤然としたデュバル氏が、知性と常識を持ち、他人に共感する柔らかな心を持った清楚な女性が、心から愛する男性との別れを受諾し、自己犠牲を払うことを約束するマルグリットに出会って、その先入観を覆される、という場面。マルグリットの内面を図らずも良く示している場面だと思います。
オペラではこのアルマン父とマルグリットの場面が実は一番好きなのですが、アニエスとミカエル・ドナ―ルのパのやり取りからその場面で感じるのと同様な感動を覚え、アニエスの踊りが見える音楽であるという自説をまた改めて実感。
ステファンは感情表現が終始控え目。
白い肌に黒髪、繊細な表情とリフト任せておけ、な、長身でがっしりとした体躯を持つ期待の若手エトワール。
今まで、アニエスのリフト要員くらいに思っていたのですが(失礼)苦しみのソロ、彼1人で場面を持たせるのをはじめて観て、思いがけずパッション溢れる力強いパと鋭い跳躍に彼自身の力量を改めて感じました。
ただ、やはり感情の表し方は淡泊ですね。
とりわけ、マルグリットへの当てつけに、娼婦仲間で若手の売れっ子オランプと戯れの情事を行おうとするところがおざなりで。オランプ役のレオノール・ボラックがコケティッシュに演技して埋めていましたが・・・。
それだけならマルグリットへの純情として称えられるのですが、その後再会して燃え上がる2人・・・でも、やはり淡泊(というより、前日のマチューが甘かったからかも)で。でも、この抑制された愛情表現が彼の持ち味なのかもしれません。
後日の夜会で、マルグリットを侮辱し、札束入りの封筒で傷つける場面、再び彼女のパトロンとなった公爵をあしらう様、心配してフォローしようとする、マルグリットの親友プリュダンスとその彼氏ガストンへのニヒルな無礼っぷりは堂にいったものでしたから、彼なりのバランスなのでしょう。
終始、アニエスを支え、真摯にアルマンとして舞台に生きる内省的な姿に、所謂スターエトワール(他日が、エルヴェとマチューという華やかなアルマンでしたから余計に!)とは異なる美学を感じました。
カーテンコールは本当に大きな拍手で・・・というか、この日はアニエスのPDDの切れ目毎に拍手が入っていたのですが^^;、本当に大きな拍手&最後はスタオべで、締めくくられました。
何度も幕が開き、ダンサー、マノン役のローラ・エッケに迎えられたピアニストのお二人、アニエスに迎えられた指揮者のジェームズ・タグル氏、そして今回が最後の来日公演となるであろう、芸監ブリジット・ルフェーブル女史、その他主要スタッフの方々?も前列に並び、途中から後列からアニエスに呼ばれて前列に加わった現・恋人?のダンサーも。
そして、NBSの佐々木氏代行で代表業務に着いて久しい高橋氏がアニエスに白バラの、ルフェーブル女史に紅バラの?ブーケを手渡し、舞台天井から降りてくる恒例のSAYONARAの幕と金のコンフェッティとともに、アニエスのこれまでの貢献に感謝の意が日仏語で書かれた横断幕が。
オペラ座定年引退(YTでそのカーテンコールが観られます)後もゲスト・アーティストとしてクレジットされているほど信頼が厚い、という話がプログラムに出ていましたので、全くの引退というわけでもなさそうで、ちょっとホッとしていますが、日本公演でオペラ座のセンターとして踊る彼女を観るのは最後。
ステキな作品でお見送りが出来たのは幸いでした