2018/08/15 (WED)17:00
【第15回 世界バレエフェスティバル】ガラ - Sasaki GALA - 8/15(水)
![](https://img.yaplog.jp/img/18/pc/m/a/r/maria-pon/1/1630.jpg)
― 第1部 ―
◆「ドリーブ組曲」
振付:ジョゼ・マルティネス
音楽:レオ・ドリーブ
レオノール・ボラック
ジェルマン・ルーヴェ
お馴染み、アニエス・ルテステュデザインのブルーの濃淡が爽やかなお衣装で登場の若い2人。
初演の時は男性の上着はVに沿う白い襟が付いていたような。ジェルマンが着るのはスッキリしたノーカラーで、クリムト風にランダムに配されたラインストーンが華やか。レオノールのドレスも肩のストラップに軽やかなフリルが付いて若々しく愛らしい雰囲気。
見るたびにダンサーによってデザインが微調整されているように思います。
PDDの作品としてはさほど傑作だとは思わないのですが、他のバレエ団と被らないこともあって、このバレフェスにおいては定番のひとつに。
◆「ライムライト」
振付:カタジェナ・コジルスカ
音楽:ニュー・タンゴ・オルケスタ
エリサ・バデネス
エリサのソロ。バンドゥータイプの黒がアクセントに使われたイエローのミニドレスのお衣装。
キュートなでシャープな持ち味は活かされていました。
◆「白鳥の湖」より グラン・アダージオ
振付:レフ・イワーノフ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
オレシア・ノヴィコワ
デヴィッド・ホールバーグ
小顔黒髪正統派ロシアンプリマバレリーナのノヴィコワにぴったりなのはやはりこういう演目。
ホールバーグも金髪長身の持ち味を生かして納得のパフォーマンス。
◆「アリシアのために―アリシア・アロンソに捧ぐ」
振付:タニア・ヴェルガラ
音楽:フランク・フェルナンデス
ヴィエングセイ・ヴァルデス
アリシア・アロンソの在りし日の姿が時折背景のスクリーンに映し出され、その圧倒的なスターオーラのよすがを伝える。
白いシンプルなチュチュドレスのヴァルデスは陽気な超絶技巧の遣い手としての顔を封印し、アリシアという神殿に仕える巫女のよう。
キューババレエ界における彼女の存在の重さと、この演目をこのバレフェスのガラで踊る意味をヴァルデスが全身で伝えようとしていることに感動。
◆「タイス (マ・パヴロワより)」
振付:ローラン・プティ
音楽:ジュール・マスネ
マリア・アイシュヴァルト
ロベルト・ボッレ
この世で最も美しい時間を今、自分は過ごしているのではないか、と、陶酔の中で一瞬たりとも見逃さないように集中。
胸下のベルト部分に金ラメが散りばめられた女神のような白ドレスで高々とリフトされながら優美に手脚を花開かせているアイシュバルトのエレガンス。
支えるボッレはウエストにアイシュバルトのお衣装に呼応するように施された金のビーズ刺繍だけが唯一の装飾のベージュの足首までのタイツで。それにしても、クラスレッスン見学時にも思いましたが、ボッレほど陰影に富んだ美しい上半身の持ち主はそうそういないのでは。
華奢なアイシュバルトと長身でギリシャ彫刻になぞらえられることも多い逞しいボッレの並びは、しかしどこまでも紳士的に仕える柔らかなサポートと、アイシュバルトの存在感の強さによって、思いがけない程調和のとれた美を創り出して。
このような奇跡的な組み合わせを観られるのはバレフェスならでは!
このガラ後半で同じ感想を再び抱くのですが、それもまたボッレ絡みなのですよね…
◆「グラン・パ・クラシック」
振付:ヴィクトル・グゾフスキー
音楽:フランソワ・オーベール
ドロテ・ジルベール
マチアス・エイマン
ドロテがBプロで故障したミリアム(お大事に!)の代役を務めます。
白いチュチュのシンプルなお衣装のウエスト下と髪に一輪ずつアシンメトリーに紅バラを配して。
グラン・パ・クラシックってガラの中心的存在のペア(ルグリとか)が踊るイメージなので、
本当に世代交代したのだなぁとしみじみ。
身長バランスはミリアムがぴったりのマチアスではありますが、手脚の長い華やかな笑顔のドロテと
陽性のマチアスのPDDも魅力的。
ジャンプしての滞空時間の長さ、粘るような弾力を感じさせる動きがマチアスのトレードマークかと思うのですが、
今回はそれを全面に出すのではなく、あくまでさりげなくスマートに超絶技巧をこなすあたりにベテランに足を踏み入れた風格のようなものが感じられて。
― 第2部 ―
◆「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
サラ・ラム
マルセロ・ゴメス
あまり期待していなかったというと失礼なのですが、本当に素晴らしかったです。
マクミランの振り付けなので、ロイヤルダンサーにはやはりアドバンテージがあるのでしょうか。
ラムの少女っぽいほっそりとした容姿と意外な(といってはあれですが)演技力の発露で初恋のときめきと
儚さが伝わり、リフトでの形も美しく、小柄なダンサーでみることが多く先入観がありましたが、
改めて長身バレリーナの良さを再確認。
ゴメスも心のこもった演技と力強いロミオで素晴らしく、素敵な一幕でした。
◆「デグニーノ」
振付:マルコス・モラウ
音楽:アレクサンドル・クナイフェル
マリア・コチェトコワ
あまり印象に残っていないかも・・・。
◆「タチヤーナ」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:レーラ・アウエルバッハ
アンナ・ラウデール
エドウィン・レヴァツォフ
出窓のセット。アンナがその出窓に座って何かを待つような。
これはたぶん、恋文を書きながら寝落ちしたタチヤーナが見る夢のような・・・
彼女の恋の対象であるオネーギンが部屋に入ってきて彼女を圧倒する場面ですね。
アンナは素晴らしいダンサーで、やはりこれは全幕でみたいなと。
Bプロでは長めの金髪をファサっとさせていたレヴォツォフはスキンヘッドに近い短髪に。
Bプロ後、カットに行ったのかしら。
あまりダンサーのスキンヘッドに近い短髪って好きではないのですよね・・・。労働者役などなら別ですが。
◆「モノ・リサ」
振付:イツィク・ガリリ
音楽コンセプト・作曲:トーマス・ヘフス、イツィク・ガリリ
アリシア・アマトリアン
フリーデマン・フォーゲル
ちょっとフォーサイス風の作品。
この二人はこういうコンテンポラリーを退屈にならずに見せる資質がありますね。
アリシアのシャープな踊りと体型は特にピッタリ。
◆「ワールウィンド・パ・ド・ドゥ」 世界初演
振付:ティアゴ・ボァディン
音楽:ルドヴィコ・エイナウディ
ドロテ・ジルベール
マチュー・ガニオ
ティアゴ・ボアディンってハンブルグダンサーだった、あの?
振付の仕事をしているのですね、良かった^^
黒のシースルー遣いのシンプルなレオタードのドロテと黒の足首までのタイツのマチュー。
ゴージャスな二人が踊るコンテンポラリーは悪くないけど・・・
正直ちょっと物足りない。
ミリアムは不運だったけど、ドロテはこの一作でGALAを締めくくることにならず、華やかなグランパがあってよかったなと思ってしまいました。
そしてマチューは・・このあとが真骨頂!
◆「ローレンシア」
振付:ワフタング・チャブキアーニ
音楽:アレクサンドル・クレイン
マリーヤ・アレクサンドロワ
ウラディスラフ・ラントラートフ
黒白のでもクラシックなお衣装で激しい超絶技巧を連続で繰り広げるダンス。
否が応にも盛り上がるドラマチックな音楽とアクロバティックな振り付けを余裕でこなすお二人。
パリの炎とエスメラルダを足して2で割ったような作品。
超絶技巧てんこ盛りで、洗練されているとは言い難いがサービス精神満点のボリショイペアを体現するような作品で、嫌いになれませんでした^^;
― 第3部 佐々木忠次へのオマージュ ―
黒いロングドレスに赤い薄手のロングジャッケットを羽織ったアレクサンドラ・フェリが
佐々木氏の思い出を語るスピーチから始まり、背景のスクリーンには在りし日の佐々木氏の
オペラ・バレエ界の大物と渡り合う笑顔の写真の数々が・・・。
彼の成し遂げた偉業を観ながら、そうそう、ベルリンのリングのチクルス、3周上演してくれたおかげで、一週間に2夜ずつじっくりと鑑賞出来てありがたかったなぁ・・とか、思い出もいっぱい蘇り、改めて感謝。
◆「月に寄せる七つの俳句」より パ・ド・トロワ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:ヨハン・セバスティアン・バッハ
シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ
エドウィン・レヴァツォフ
世界の一流振付家に東バのためのオリジナル作品を次々と依頼していた佐々木氏。
当時は来日公演目当ての「バレエの祭典」会員の対象演目に、さりげなく東バの演目が挿入されているのを
しぶしぶ見に行ったものですが、何度も見るうちに愛着がわき・・・(術中にはまってますね)
今、こうして、ハンブルグ・ダンサーの粋で上演されているのを見ると感慨深い。
白い着物をひっかっけて幽玄を踊るアッツォー二が素晴らしく、この作品の世界観をとらえていました。
◆「リーフ(葉)」 世界初演
振付:大石裕香
音楽:アルヴォ・ペルト
ジル・ロマン
ジルといえばアダージェットですが・・・。
新作「リーフ」も上体をメインに使ってはいますが、味わいとしてはアダージェットに近いかも。
それにしても、ジルは確か1960年生まれ。
その年齢で舞台人として確かなベジャールダンサーのパフォーマンスを見せているということに感動。
若いころは何かが足りなく、本人もそのことを歯がゆく思っている感があったのですが、年齢を重ねるごとに大人のセクシーさを醸し出すようになって。
最高だ・・とため息をついたのはベニエス・コピエテルスとマイヨ―振付「フォーブ」を踊った2009年第12回バレフェス。
エリザベット・ロスといい、ジルといい、生粋のベジャールバレエのセンターを踊ってきたレジェンドが
時を受け止めながらも見事なパフォーマンスを見せてくれる・・・。
このバレフェスという場が、ひとつの家のような感覚を持ちました。
◆「ボレロ」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:モーリス・ラヴェル
上野水香
東京バレエ団
上野さんのすばらしい身体能力とプロポーション、
強い精神力を感じさせる研ぎ澄まされた素敵なボレロでした。
東フィルの演奏もとても良かったです。
― 第4部 ―
◆「ウルフ・ワークス」
振付:ウェイン・マクレガー
音楽:マックス・リヒター
アレッサンドラ・フェリ
フェデリコ・ボネッリ
英語で女性の声でのナレーションが荒波の音に被る。
それがBGMで、喪失をテーマとしているようなコンテンポラリーを踊る二人。
フェリはもちろん、ボネッリの粘りのある着実なステップ、誠実なパートナーシップが光りました。
フェリはもちろん、とこのバレフェスの間に「大丈夫かな、復帰してどんなかんじなのかな?」の懸念を払しょくして
「フェリはもちろん」と観客に言わせるフェリがすごい。安定の表現力・・というか、彼女は生まれながらの表現者なのだなと。
◆「マルグリットとアルマン」より
振付:フレデリック・アシュトン
音楽:フランツ・リスト
アリーナ・コジョカル
ヨハン・コボー
デヴィッド・ホールバーグ
幸せな田舎での甘い生活から一変、アルマンの厳格な父親が訪問。
妹の縁談に差し支えるとの親心で別れを決意するマルグリット・・の場面。
引き裂かれるような気持のマルグリットは女優バレリーナコジョカルの面目躍如。
肩見せの白いドレスも華奢な彼女に似合い、物語世界に引き込まれました。
王子様としてのパートナーはもうむずかしいコボーですが、オペラではバリトン役の父ジェルマンは風格もあってぴったり。
何も知らないアルマンは、演じ手によってはイラっとしますが、ホールバーグの清廉な品の良さは説得力がありました。
◆「プルースト―失われた時を求めて」より"モレルとサン・ルー"
振付:ローラン・プティ
音楽:ガブリエル・フォーレ
ロベルト・ボッレ
マチュー・ガニオ
ここで観客のオペラがザっとあがる!!
いやいや、そんな、あざとい配役・・・とワクワクしながら冷静を装っておりましたが(笑)
やはり、良いものは良い!イタリア・フランスをそれぞれ代表する美青年ダンサー二人の競演。
若々しい容姿ながらも、ベテランの域に達してまさにダンサーとして円熟期を迎えた二人だからこその青年二人の関係性を余すことなく、品格を保ちながら見せてくれます。
彫の深い美形の黒髪の二人。
ボッレはどちらかというと硬、マチューは揺れ動く心情も時折ちらと見せながらのパフォーマンスで、踊りそのものの瑕疵もなく、本当に素晴らしい時、でした。
バレフェスならではの、誰もが納得する、でも簡単には実現しない組み合わせでの「モレルとサンルー」
次の公演のハードル、上がりましたね・・・
◆「アー・ユー・アズ・ビッグ・アズ・ミー?」
振付:ロマン・ノヴィツキー
音楽:ハズマット・モディーン
レオニード・サラファーノフ
ダニール・シムキン
ダニエル・カマルゴ
ため息に満たされた会場の空気をガラっと変える、若きテクニシャン三人組。
カジュアルなスタイルで3人横並び。
基本その場で全力疾走しているのですが、順番に超絶技巧のバリエーションを踊るという展開。
お互い牽制しあい、自分が前に出て、でも、仲間というコミカルな味わいのあるとても面白い作品。
皆、けっこう苦虫を嚙み潰したようなポーカーフェイスで面白いことするんですよね。
ちょっとジム・ジャームッシュ監督の初期の作品のようなスタイリッシュでもオフビートでもある独特の味わいを思い出す演目でした。
◆「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス
タマラ・ロホ
イサック・エルナンデス
Aプロのパリオペ組のエレガンス、Bプロの若きテクニシャンのコントロールの行き届いた自信あふれるパフォーマンス・・・を観た後に
ベテランと新星のペア。さて、と思ったら、タマラは芸監兼務が信じられない完璧なバランスとフェッテの鬼っぷりに変化なし!
いくらでも自立できるといわんばかりのバランス。
扇も持っているのにトリプル・ダブルを必ず2回に1回は入れてくる余裕。
もちろん、バレフェス常連のベテランとして、そしてスペイン人としての誇りを感じさせる堂々たる演技に観客熱狂。
エルナンデスも、タマラが連れてきた見どころのある若手ね、というフェス前の認識からすでに素晴らしいパフォーマンスを重ねることで観客の信頼を得た自信がみなぎる演技でまったく遜色なく。
観たことないほどのハイスピードのフェッテを決めて、ロホのパートナーとしてしっかりと存在感を示していました。
指揮:ワレリー・オブジャニコフ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:フレデリック・ヴァイセ=クニッテル (「マルグリットとアルマン」より)
素晴らしい演奏でバレフェスを盛り上げてくださったオケの皆様のお時間はここまでで・・・
NBSの高橋氏が時間稼ぎの(笑)スピーチをされています。
そう、次はお待ちかねのFUNNY GALA。
続きます。
◆上演時間◆
第1部 17:00~18:00 (休憩15分)
第2部 18:15~19:15 (休憩10分)
第3部 19:25~20:20 (休憩15分)
第4部 20:35~21:25
このあと、
第5部 通称FUNNY GALAが続きますが、こちらは別記事を立てます。
【第15回 世界バレエフェスティバル】ガラ - Sasaki GALA - 8/15(水)
![](https://img.yaplog.jp/img/18/pc/m/a/r/maria-pon/1/1630.jpg)
― 第1部 ―
◆「ドリーブ組曲」
振付:ジョゼ・マルティネス
音楽:レオ・ドリーブ
レオノール・ボラック
ジェルマン・ルーヴェ
お馴染み、アニエス・ルテステュデザインのブルーの濃淡が爽やかなお衣装で登場の若い2人。
初演の時は男性の上着はVに沿う白い襟が付いていたような。ジェルマンが着るのはスッキリしたノーカラーで、クリムト風にランダムに配されたラインストーンが華やか。レオノールのドレスも肩のストラップに軽やかなフリルが付いて若々しく愛らしい雰囲気。
見るたびにダンサーによってデザインが微調整されているように思います。
PDDの作品としてはさほど傑作だとは思わないのですが、他のバレエ団と被らないこともあって、このバレフェスにおいては定番のひとつに。
◆「ライムライト」
振付:カタジェナ・コジルスカ
音楽:ニュー・タンゴ・オルケスタ
エリサ・バデネス
エリサのソロ。バンドゥータイプの黒がアクセントに使われたイエローのミニドレスのお衣装。
キュートなでシャープな持ち味は活かされていました。
◆「白鳥の湖」より グラン・アダージオ
振付:レフ・イワーノフ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
オレシア・ノヴィコワ
デヴィッド・ホールバーグ
小顔黒髪正統派ロシアンプリマバレリーナのノヴィコワにぴったりなのはやはりこういう演目。
ホールバーグも金髪長身の持ち味を生かして納得のパフォーマンス。
◆「アリシアのために―アリシア・アロンソに捧ぐ」
振付:タニア・ヴェルガラ
音楽:フランク・フェルナンデス
ヴィエングセイ・ヴァルデス
アリシア・アロンソの在りし日の姿が時折背景のスクリーンに映し出され、その圧倒的なスターオーラのよすがを伝える。
白いシンプルなチュチュドレスのヴァルデスは陽気な超絶技巧の遣い手としての顔を封印し、アリシアという神殿に仕える巫女のよう。
キューババレエ界における彼女の存在の重さと、この演目をこのバレフェスのガラで踊る意味をヴァルデスが全身で伝えようとしていることに感動。
◆「タイス (マ・パヴロワより)」
振付:ローラン・プティ
音楽:ジュール・マスネ
マリア・アイシュヴァルト
ロベルト・ボッレ
この世で最も美しい時間を今、自分は過ごしているのではないか、と、陶酔の中で一瞬たりとも見逃さないように集中。
胸下のベルト部分に金ラメが散りばめられた女神のような白ドレスで高々とリフトされながら優美に手脚を花開かせているアイシュバルトのエレガンス。
支えるボッレはウエストにアイシュバルトのお衣装に呼応するように施された金のビーズ刺繍だけが唯一の装飾のベージュの足首までのタイツで。それにしても、クラスレッスン見学時にも思いましたが、ボッレほど陰影に富んだ美しい上半身の持ち主はそうそういないのでは。
華奢なアイシュバルトと長身でギリシャ彫刻になぞらえられることも多い逞しいボッレの並びは、しかしどこまでも紳士的に仕える柔らかなサポートと、アイシュバルトの存在感の強さによって、思いがけない程調和のとれた美を創り出して。
このような奇跡的な組み合わせを観られるのはバレフェスならでは!
このガラ後半で同じ感想を再び抱くのですが、それもまたボッレ絡みなのですよね…
◆「グラン・パ・クラシック」
振付:ヴィクトル・グゾフスキー
音楽:フランソワ・オーベール
ドロテ・ジルベール
マチアス・エイマン
ドロテがBプロで故障したミリアム(お大事に!)の代役を務めます。
白いチュチュのシンプルなお衣装のウエスト下と髪に一輪ずつアシンメトリーに紅バラを配して。
グラン・パ・クラシックってガラの中心的存在のペア(ルグリとか)が踊るイメージなので、
本当に世代交代したのだなぁとしみじみ。
身長バランスはミリアムがぴったりのマチアスではありますが、手脚の長い華やかな笑顔のドロテと
陽性のマチアスのPDDも魅力的。
ジャンプしての滞空時間の長さ、粘るような弾力を感じさせる動きがマチアスのトレードマークかと思うのですが、
今回はそれを全面に出すのではなく、あくまでさりげなくスマートに超絶技巧をこなすあたりにベテランに足を踏み入れた風格のようなものが感じられて。
― 第2部 ―
◆「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
サラ・ラム
マルセロ・ゴメス
あまり期待していなかったというと失礼なのですが、本当に素晴らしかったです。
マクミランの振り付けなので、ロイヤルダンサーにはやはりアドバンテージがあるのでしょうか。
ラムの少女っぽいほっそりとした容姿と意外な(といってはあれですが)演技力の発露で初恋のときめきと
儚さが伝わり、リフトでの形も美しく、小柄なダンサーでみることが多く先入観がありましたが、
改めて長身バレリーナの良さを再確認。
ゴメスも心のこもった演技と力強いロミオで素晴らしく、素敵な一幕でした。
◆「デグニーノ」
振付:マルコス・モラウ
音楽:アレクサンドル・クナイフェル
マリア・コチェトコワ
あまり印象に残っていないかも・・・。
◆「タチヤーナ」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:レーラ・アウエルバッハ
アンナ・ラウデール
エドウィン・レヴァツォフ
出窓のセット。アンナがその出窓に座って何かを待つような。
これはたぶん、恋文を書きながら寝落ちしたタチヤーナが見る夢のような・・・
彼女の恋の対象であるオネーギンが部屋に入ってきて彼女を圧倒する場面ですね。
アンナは素晴らしいダンサーで、やはりこれは全幕でみたいなと。
Bプロでは長めの金髪をファサっとさせていたレヴォツォフはスキンヘッドに近い短髪に。
Bプロ後、カットに行ったのかしら。
あまりダンサーのスキンヘッドに近い短髪って好きではないのですよね・・・。労働者役などなら別ですが。
◆「モノ・リサ」
振付:イツィク・ガリリ
音楽コンセプト・作曲:トーマス・ヘフス、イツィク・ガリリ
アリシア・アマトリアン
フリーデマン・フォーゲル
ちょっとフォーサイス風の作品。
この二人はこういうコンテンポラリーを退屈にならずに見せる資質がありますね。
アリシアのシャープな踊りと体型は特にピッタリ。
◆「ワールウィンド・パ・ド・ドゥ」 世界初演
振付:ティアゴ・ボァディン
音楽:ルドヴィコ・エイナウディ
ドロテ・ジルベール
マチュー・ガニオ
ティアゴ・ボアディンってハンブルグダンサーだった、あの?
振付の仕事をしているのですね、良かった^^
黒のシースルー遣いのシンプルなレオタードのドロテと黒の足首までのタイツのマチュー。
ゴージャスな二人が踊るコンテンポラリーは悪くないけど・・・
正直ちょっと物足りない。
ミリアムは不運だったけど、ドロテはこの一作でGALAを締めくくることにならず、華やかなグランパがあってよかったなと思ってしまいました。
そしてマチューは・・このあとが真骨頂!
◆「ローレンシア」
振付:ワフタング・チャブキアーニ
音楽:アレクサンドル・クレイン
マリーヤ・アレクサンドロワ
ウラディスラフ・ラントラートフ
黒白のでもクラシックなお衣装で激しい超絶技巧を連続で繰り広げるダンス。
否が応にも盛り上がるドラマチックな音楽とアクロバティックな振り付けを余裕でこなすお二人。
パリの炎とエスメラルダを足して2で割ったような作品。
超絶技巧てんこ盛りで、洗練されているとは言い難いがサービス精神満点のボリショイペアを体現するような作品で、嫌いになれませんでした^^;
― 第3部 佐々木忠次へのオマージュ ―
黒いロングドレスに赤い薄手のロングジャッケットを羽織ったアレクサンドラ・フェリが
佐々木氏の思い出を語るスピーチから始まり、背景のスクリーンには在りし日の佐々木氏の
オペラ・バレエ界の大物と渡り合う笑顔の写真の数々が・・・。
彼の成し遂げた偉業を観ながら、そうそう、ベルリンのリングのチクルス、3周上演してくれたおかげで、一週間に2夜ずつじっくりと鑑賞出来てありがたかったなぁ・・とか、思い出もいっぱい蘇り、改めて感謝。
◆「月に寄せる七つの俳句」より パ・ド・トロワ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:ヨハン・セバスティアン・バッハ
シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ
エドウィン・レヴァツォフ
世界の一流振付家に東バのためのオリジナル作品を次々と依頼していた佐々木氏。
当時は来日公演目当ての「バレエの祭典」会員の対象演目に、さりげなく東バの演目が挿入されているのを
しぶしぶ見に行ったものですが、何度も見るうちに愛着がわき・・・(術中にはまってますね)
今、こうして、ハンブルグ・ダンサーの粋で上演されているのを見ると感慨深い。
白い着物をひっかっけて幽玄を踊るアッツォー二が素晴らしく、この作品の世界観をとらえていました。
◆「リーフ(葉)」 世界初演
振付:大石裕香
音楽:アルヴォ・ペルト
ジル・ロマン
ジルといえばアダージェットですが・・・。
新作「リーフ」も上体をメインに使ってはいますが、味わいとしてはアダージェットに近いかも。
それにしても、ジルは確か1960年生まれ。
その年齢で舞台人として確かなベジャールダンサーのパフォーマンスを見せているということに感動。
若いころは何かが足りなく、本人もそのことを歯がゆく思っている感があったのですが、年齢を重ねるごとに大人のセクシーさを醸し出すようになって。
最高だ・・とため息をついたのはベニエス・コピエテルスとマイヨ―振付「フォーブ」を踊った2009年第12回バレフェス。
エリザベット・ロスといい、ジルといい、生粋のベジャールバレエのセンターを踊ってきたレジェンドが
時を受け止めながらも見事なパフォーマンスを見せてくれる・・・。
このバレフェスという場が、ひとつの家のような感覚を持ちました。
◆「ボレロ」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:モーリス・ラヴェル
上野水香
東京バレエ団
上野さんのすばらしい身体能力とプロポーション、
強い精神力を感じさせる研ぎ澄まされた素敵なボレロでした。
東フィルの演奏もとても良かったです。
― 第4部 ―
◆「ウルフ・ワークス」
振付:ウェイン・マクレガー
音楽:マックス・リヒター
アレッサンドラ・フェリ
フェデリコ・ボネッリ
英語で女性の声でのナレーションが荒波の音に被る。
それがBGMで、喪失をテーマとしているようなコンテンポラリーを踊る二人。
フェリはもちろん、ボネッリの粘りのある着実なステップ、誠実なパートナーシップが光りました。
フェリはもちろん、とこのバレフェスの間に「大丈夫かな、復帰してどんなかんじなのかな?」の懸念を払しょくして
「フェリはもちろん」と観客に言わせるフェリがすごい。安定の表現力・・というか、彼女は生まれながらの表現者なのだなと。
◆「マルグリットとアルマン」より
振付:フレデリック・アシュトン
音楽:フランツ・リスト
アリーナ・コジョカル
ヨハン・コボー
デヴィッド・ホールバーグ
幸せな田舎での甘い生活から一変、アルマンの厳格な父親が訪問。
妹の縁談に差し支えるとの親心で別れを決意するマルグリット・・の場面。
引き裂かれるような気持のマルグリットは女優バレリーナコジョカルの面目躍如。
肩見せの白いドレスも華奢な彼女に似合い、物語世界に引き込まれました。
王子様としてのパートナーはもうむずかしいコボーですが、オペラではバリトン役の父ジェルマンは風格もあってぴったり。
何も知らないアルマンは、演じ手によってはイラっとしますが、ホールバーグの清廉な品の良さは説得力がありました。
◆「プルースト―失われた時を求めて」より"モレルとサン・ルー"
振付:ローラン・プティ
音楽:ガブリエル・フォーレ
ロベルト・ボッレ
マチュー・ガニオ
ここで観客のオペラがザっとあがる!!
いやいや、そんな、あざとい配役・・・とワクワクしながら冷静を装っておりましたが(笑)
やはり、良いものは良い!イタリア・フランスをそれぞれ代表する美青年ダンサー二人の競演。
若々しい容姿ながらも、ベテランの域に達してまさにダンサーとして円熟期を迎えた二人だからこその青年二人の関係性を余すことなく、品格を保ちながら見せてくれます。
彫の深い美形の黒髪の二人。
ボッレはどちらかというと硬、マチューは揺れ動く心情も時折ちらと見せながらのパフォーマンスで、踊りそのものの瑕疵もなく、本当に素晴らしい時、でした。
バレフェスならではの、誰もが納得する、でも簡単には実現しない組み合わせでの「モレルとサンルー」
次の公演のハードル、上がりましたね・・・
◆「アー・ユー・アズ・ビッグ・アズ・ミー?」
振付:ロマン・ノヴィツキー
音楽:ハズマット・モディーン
レオニード・サラファーノフ
ダニール・シムキン
ダニエル・カマルゴ
ため息に満たされた会場の空気をガラっと変える、若きテクニシャン三人組。
カジュアルなスタイルで3人横並び。
基本その場で全力疾走しているのですが、順番に超絶技巧のバリエーションを踊るという展開。
お互い牽制しあい、自分が前に出て、でも、仲間というコミカルな味わいのあるとても面白い作品。
皆、けっこう苦虫を嚙み潰したようなポーカーフェイスで面白いことするんですよね。
ちょっとジム・ジャームッシュ監督の初期の作品のようなスタイリッシュでもオフビートでもある独特の味わいを思い出す演目でした。
◆「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス
タマラ・ロホ
イサック・エルナンデス
Aプロのパリオペ組のエレガンス、Bプロの若きテクニシャンのコントロールの行き届いた自信あふれるパフォーマンス・・・を観た後に
ベテランと新星のペア。さて、と思ったら、タマラは芸監兼務が信じられない完璧なバランスとフェッテの鬼っぷりに変化なし!
いくらでも自立できるといわんばかりのバランス。
扇も持っているのにトリプル・ダブルを必ず2回に1回は入れてくる余裕。
もちろん、バレフェス常連のベテランとして、そしてスペイン人としての誇りを感じさせる堂々たる演技に観客熱狂。
エルナンデスも、タマラが連れてきた見どころのある若手ね、というフェス前の認識からすでに素晴らしいパフォーマンスを重ねることで観客の信頼を得た自信がみなぎる演技でまったく遜色なく。
観たことないほどのハイスピードのフェッテを決めて、ロホのパートナーとしてしっかりと存在感を示していました。
指揮:ワレリー・オブジャニコフ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:フレデリック・ヴァイセ=クニッテル (「マルグリットとアルマン」より)
素晴らしい演奏でバレフェスを盛り上げてくださったオケの皆様のお時間はここまでで・・・
NBSの高橋氏が時間稼ぎの(笑)スピーチをされています。
そう、次はお待ちかねのFUNNY GALA。
続きます。
◆上演時間◆
第1部 17:00~18:00 (休憩15分)
第2部 18:15~19:15 (休憩10分)
第3部 19:25~20:20 (休憩15分)
第4部 20:35~21:25
このあと、
第5部 通称FUNNY GALAが続きますが、こちらは別記事を立てます。
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