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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

宝塚花組「近松・恋の道行」 日本青年館

2012-05-28 07:43:27 | TAKARAZUKA
2012年5月27日(日) 11:00~

日本青年館大ホールにて

宝塚花組公演
上方絵草紙「近松・恋の道行」 を観て参りました。





主な配役 出演者


一つ屋嘉平次(松屋町の茶碗屋『一つ屋』の跡取り息子): 愛音 羽麗
柏屋さが(嘉平次と相思相愛の『柏屋』の見世女郎): 実咲 凜音

一つ屋五兵衛(嘉平次の父親): 汝鳥 伶
お香(『柏屋』の遣り手、元『天満屋』の遊女): 光 あけみ
近松門左衛門(当代一の人気を誇る浄瑠璃作家): 夏美 よう
竹田出雲(竹本座の座本兼浄瑠璃作者 ): 悠真 倫
早水清吉(忠清)(小間物の行商人、赤穂浅野家家臣・原家に代々仕えた足軽の息子) : 華形 ひかる
寺坂吉右衛門(赤穂浪士の生き残りとして、遺族の援助に尽くす): 紫峰 七海
ふさ(塩町に嫁いだ嘉平次の姉): 初姫 さあや
杉森鯉助(近松景鯉)(浄瑠璃作家を目指す近松門左衛門の二男): 春風 弥里
柏屋半兵衛(『柏屋』の主) : 夕霧 らい
茂蔵(番頭)/紺屋利左衛門(出店の家主): 彩城 レア
お園(水茶屋『清水屋』の女房)/
美津(小弁の母、討死にした赤穂四十七士の一人・原惣右衛門の妾): 梅咲 衣舞
印伝屋長作(嘉平次から金をだまし取る性悪の商人): 瀬戸 かずや
幾松(目の不自由な嘉平次の弟、きはを秘かに慕っている): 鳳 真由
お蝶(女郎) : 春花 きらら
楓(女郎): 鞠花 ゆめ
芳沢あやめ(上方を代表する女形)/定吉(手代): 天真 みちる
播磨屋与三郎(鯉助の遊び友達): 銀華 水
平太(境内で遊ぶ子供)/庄介(丁稚): 神房 佳希
竹(『一つ屋』の飯炊き女)/吉三(境内で遊ぶ子供): 菜那 くらら
小弁(喜世)(さがの妹女郎、浅野家家臣・原惣右衛門の妾の娘): 桜咲 彩花
中村源吾(鯉助の遊び友達): 航琉 ひびき
おみよ(境内で遊ぶ子供): 美花 梨乃
初音(女郎): 花奈 澪
きは(嘉平次の許嫁) : 華雅 りりか
おりん(女郎): 夢花 らん
徳兵衛(浄瑠璃人形)(『曽根崎心中』の主人公、醤油問屋平野屋の手代): 柚香 光
お初 (浄瑠璃人形)(『曽根崎心中』の主人公、天満屋の見世女郎): 乙羽 映見
おせん(さがの小女): 朝月 希和


美しく、完成された舞台が観られました。

人形浄瑠璃で曽根崎心中を演じる一組の男女。
当代随一の劇作家、近松門左衛門の大ヒット作、それを観て我が人生を振り返り
まだ未体験の命をかけるまでの恋に漠然とした憧れを持つ・・・。

平凡で誠実な主人公。
ハッキリ言って、宝塚の主役には珍しい設定。
わたくしは決して みわっち(愛音羽麗)のファンではありませんが(失礼)、でもこのカッコ良くない設定なのに
綺麗な声と似合いすぎる青天の優男っぷりは、MY BESTみわっちでした。
男役にしては小柄で、顔立ちが女性的、おでこの広さが気になるVISUALが全て問題にならない和物、
もっと演じるチャンスがあれば良いのに。

茶碗屋、の3代目。
偶然出会った女郎に岡惚れ。
もともとは誠実な商人。
なのに、その女郎を 身請けしたいの一心で判断力も分別もなくなり、
幼馴染の陰謀にまんまとハマって秘蔵の品も代金もだまし取られ、
親・得意先の信頼も失い、更にまたその男からむしり取られそうになり・・・

恋ゆえに弱く、恋に溺れて足をすくわれ転落の道をまっさかさま・・・
歌舞伎には良くあるタイプ。金と力なき色男。
TOP男役には珍しいある意味タカラヅカを逸脱した設定。
その誠実さと真っすぐな恋心をキチンと表現できているからこそ、
その転落が口惜しく、哀れであるとの客席の共感を呼ぶ力を見せてくれました。


その女郎を演じたみりおんちゃん(実咲凛音)。
はい、My贔屓の相手役としてこの公演の千秋楽の翌日から宙組に次期TOP娘役として組替予定の彼女のチェックが今回の観劇の主目的(どれだけ姑目線なの~←自分^^;)。
歌が上手くて、穴のない正統派な娘役さん。
組配属直後から新公独占、華やかな美貌の先輩をごぼう抜きの実力派。
・・・ではありますが、整った容姿なのに華がなく、演技にも心に残るところがない、水のような個性というのはいかがなものだろうかと思っていたのですが。

しっとりとした情感あふれる女郎で。
妹格の、武士の娘だった小弁ちゃんをなぐさめるところ、水飲み百姓で食べるものにさえ苦労していた頃を思えば今の境遇でも幸せ・・・と語る落ち着いた諦念と優しさに、こんな空気を醸し出せるヒトなんだ、と。
小柄なみわっちに、膝折りしてそっと寄り添う姿も、相手の男役を立てる、タカラヅカ伝統の娘役芸をしっかりと見せて、安心のクォリティ。

この主役カップルと同時進行でみせる、もう一組の男女が準主役。
妹女郎、もと武士の娘の小弁ちゃんと、小間物商人として生計を立てながら、陰から彼女を支える足軽の息子清吉。

清吉があくまで忠義なオトコで。
不幸な姫に仕えるナイトとしてのポジションは正しくタカラヅカ的。

この清吉のみつるくん(華形ひかる)が上手い。
もともとキラキラしたアイドル的な華のあるヒト。熱いキャラではありましたが、路線として大成するには身長と何かが足りず、伸び悩んでいる感があったのですがxxx
ここにきて、ぐっと味のある演技のできる脇役者としての成長が著しく。
そういえば、3組に分かれての花組次次回のラインナップで、轟さんとの専科公演、「おかしな2人」退団された名優未沙のえるさんの後釜に抜擢されましたね。
今のみつるくんを観ると、この抜擢にも納得です。

べーちゃん(桜咲彩花)は可憐ですね。
ヒロイン さがが、大人っぽい女性なので、悲劇のヒロイン、姫タイプの小弁ちゃんは美味しい役どころ。
ただ、せっかくの花組なので、もっと美少女タイプはいなかったのか(あ、わかりました、全ツにとられたのね^^;)と。上手ではありましたが、みつるくんが学年の割に若々しくてキラキラの若者なので・・・^^;。

宙組から組替え後お初のみーちゃん(春風弥里)にも注目。
近松の息子。その名を利用して表層的な人生しか送っていない。
そんな自分を客観的に観る目を持っているがゆえに時折焦燥感に苛まれる。
軽口を叩いて、心中騒ぎの原因を作り、偉大な親に迷惑をかける2代目の辛さをしっかり見せて。
宙組ではその飄々とした芝居の上手さが抜きんでていた観がありましたが、この花組の芝居巧者のアンサンブルの中にあっては、さりげな~く溶け込んでいました^^;

1人悪役のあきらくん(瀬戸かずや)。
長作は、主人公の信頼を裏切り、万座の前で罵倒し、愚弄し、そして再び現れてまた金子を奪おうという情け容赦ない悪者。
でも、だます相手が幼馴染の小商人、というあたりが小物な悪。
そんなチンピラっぽさをきちっと演じてスッとハマっているあたりが配役の妙でしょうか。
色っぽいワルというよりも、1人黒塗りの悪党という歌舞伎的な人物造型で、作品に合っていました。


そして、実に良く書き込まれたこの作品での見せ場、第3のカップル。
主人公の弟、目を患う幾松(鳳月杏鳳真由)。
兄のいいなずけ、きは(華雅りりか)へ、密かに想いを寄せており、女郎にいれあげた挙句に兄が、店と婚約者、長子としての相続権を幾松に譲ると、激情から発した言葉を受けて・・・。
なんと、彼は、眼病の治療薬を捨てていたのですよ。兄の言葉にふくらむ希望を自分の中で殺めるために・・・;;
まゆちゃん(鳳)は、こういう繊細な役が上手い。
幾松がけなげであるがゆえに、いつもは誠実な兄の軽率さがヒトを変えてしまうほどの恋の力の恐ろしさとなって胸にせまります。

きは役、華雅りりかちゃんは、星組から組替後、お初の花組舞台。
路線の娘役で元気な現代的なイメージでしたがこのところ、すっかりしっとりとしたお姉さまポジに移行しましたね。
組替直前の星組舞台では「天使のはしご」のたおやかな長女の役がハマっていたことを思えば、今回の、弱いものに優しく、奥ゆかしい、親も納得の婚約者としての役作りは自然な設定なのかも。

自らの描いた心中が流行る世の中を、俯瞰する作家近松を、花組組長を勇退するはっちさん(夏美よう)が。
品格溢れる知識人としての造型が、小市民的な息子・鯉助との好対照をなして、ここでも偉大な親を超えることのできない息子の葛藤と見守り叱り育てる親心のドラマがあり・・・。

嘉平次の姉ふさを演じる初姫さあやさんは、「復活」でも暴走する貴族の弟をいさめる姉役だったような。
今回もまた、恋人への誠実さゆえに家族を泣かせる(;;)弟を案じ、いさめようとする真っ当なお姉さま。
きれいで落ち着いているけれど若々しく、上品きれいな姉キャラが似合いますね。

女狂いで身代をつぶしたう先代の信用を取り戻すべく、地道に商売に精を出した父親は植田景子センセイ信頼の専科さん、汝鳥伶さん。
ホントにこの方が親として登場するとその情の厚さ、深さに泣けますね・・・。

この家族は 父と言い、姉と言い、弟と言い、皆 実に真っ当で嘉平次への思いやりに溢れている。
そしてその真っ当さが、彼の運命の哀しさを際立てるという。
実に良く書き込まれた良い脚本と、演じ手の力量に、思わず引き込まれた2時間半でした。

最後に一言。
この舞台、物語の主役は嘉平次=みわっちだったけれど、
舞台の主役は、実は、浄瑠璃人形徳兵衛=柚香光くんだったのでは?


幕が開いた瞬間、彼がお初人形(乙羽映見)と並んで暗い照明の中に浮かび上がったときの存在感たるや。
線でスッと描いたような、いっさいの無駄のないクールな美貌。
人形なので、表情一つ動かさずに心中物の悲劇を舞い踊る。

一幕最後に、劇中の3組のカップルに加えてこの人形カップルが踊る、4組の男女の踊りの場面があるのですが、その4組中もっとも存在感が際立っていたこの人形こそが、この舞台の美しさを象徴的に表していたのではないかと思うほど。

照明の使い方、赤い竹と紐を使った踊り、舞台美術もセンスが良く、
タカラヅカの和物の美しさを堪能できる舞台でした。


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2 コメント

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Unknown (miwa)
2012-05-31 17:10:39
すごく良かったみたいで、観に行ってよかったですね。
私は、ご近所なので(会場が)どこかで行こうかな、と思ってるうちに
千秋楽になってました。。{汗}
友人が叔母様のお供で観に行き、やはりとても良かったと話してました。

みりおんさん、お嫁に来る日が・・楽しみですね{キラリ}
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Unknown (maria-pon)
2012-06-01 06:43:06
miwaちゃん、おはようございます{ラブ}

良かったですよ~{キラリ}
お芝居の上手なヒトがぴったりのお役に配されていて。

正直ポスターをみて、愛音羽麗ちゃんが主役か・・・と思った段階では友人たちにみりおんちゃんチェックに行かなくていいの?と言われつつも気乗りせず・・・だったのですが(こら)。
このところバウ・青年館公演で外れがなかったことを思い起こして、ちょうどタイミングも良かったので(宙組まつり前^^;)思い切って行ってきて良かったです{走るひよこ}

普段花組さんを観て気になっていた、
上級生が路線に居座っている・スタイルが昭和でショーなどで映えないと感じてしまっている部分が、
{サイド}ベテランが多く芝居に厚みがある・和物なので、ちょっとお顔が大きくて背が高すぎない方がバランスが良い
と、全てが良い方向に^^;

みりおんちゃんは、けっして下手ではないけれど、突出した魅力と個性と情感がないのが気になっていましたが、今回、役にあった情感が感じられたのが収穫でした{キラピンク}
かなめちゃんが、相手の方の感性とお芝居の呼吸を大事にする人なので、みりおんちゃんが、芝居に開眼してくれたことを期待していま~す{ハート}

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