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「第九交響曲」ズ―ビン・メータ指揮ベジャール・バレエ団

2014-11-19 08:59:46 | BALLET
2014年11月9日(日)18:00~
NHKホールにて

<東京バレエ団創立50周年記念シリーズ 7>
「第九交響曲」に行って参りました。



テキスト: フリードリヒ・ニーチェ
音楽: ルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン
オリジナル美術・衣裳:ジョエル・ルスタン、ロジェ・ベルナール
照明:ドミニク・ロマン
衣裳制作:アンリ・ダヴィラ

指揮:ズービン・メータ
演奏:イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

出演:東京バレエ団、モーリス・ベジャール・バレエ団

ソプラノ:クリスティン・ルイス
メゾ・ソプラノ:藤村実穂子
テノール:福井敬 
バス:アレクサンダー・ヴィノグラードフ

パーカッション:J.B.メイヤー、ティエリー・ホクシュタッター(シティーパーカッション)
合唱指揮:栗山文昭 
合唱:栗友会合唱団

◆主な配役◆

≪プロローグ≫
フリードリヒ・ニーチェのテキスト朗読  : ジル・ロマン

≪第1楽章≫

柄本弾
上野水香

梅澤紘貴 吉岡美佳 入戸野伊織  高木綾 岸本秀雄  奈良春夏 乾友子
渡辺理恵、村上美香、吉川留衣、岸本夏未、矢島まい、川島麻実子、河合眞里、小川ふみ、伝田陽美、安田峻介、杉山優一、吉田蓮、松野乃知、原田祥博、和田康佑、宮崎大樹、上瀧達也、山田眞央、河上知輝

≪第2楽章≫

キャサリーン・ティエルヘルム
大貫真幹

コジマ・ムノス、アルドリアナ・バルガス・ロペス、大橋真理、
沖香菜子/キアラ・ポスカ、クレリア・メルシエ
ヴァランタン・ルヴァラン、ウィンテン・ギリアムス、
ドノヴァン・ヴィクトワール、マッティア・ガリオト、アンジェロ・ペルフィド

≪第3楽章≫

エリザベット・ロス
ジュリアン・ファヴロー


リザ・カノ、ファブリス・ガララーギュ
ポリーヌ・ヴォワザール、フェリペ・ロシャ
ジャスミン・カマロタ、渡辺理恵/キアラ・ポスカ、
カルメ・マリア・アンドレス、アルドリアナ・バルガス・ロペス
スン・ジャ・ユン、エクトール・ナヴァロ、
ヴァランタン・ルヴァラン、ハビエル・カサド・スアレス

≪第4楽章≫

導入部 :  オスカー・シャコン

これまでの楽章のソリスト
柄本弾  大貫真幹  ジュリアン・ファヴロー

「歓喜の歌」

オスカー・シャコン(バス) 那須野圭右(テノール)
マーシャ・ロドリゲス(ソプラノ) コジマ・ムノス(アルト)

フーガ:  大橋真理、ウィンテン・ギリアムス
アルドリアナ・バルガス・ロペス、エクトール・ナヴァロ

フィナーレ:  アランナ・アーキバルド

モーリス・ベジャール・バレエ団、東京バレエ団
アフリカン・ダンサー(特別参加)

◆タイムテーブル◆ 18:00~19:30(休憩なし)

舞台奥にオーケストラ、そして指揮者ズ―ビン・メータ、
その手前にソリスト、奥左右に合唱隊、そして舞台前面で踊るベジャール・バレエ団と東京バレエ団のダンサーたち・・というなんとも豪華なスペクタクル。目も耳も、五感で楽しむベートーベン「第九」の世界、というスペシャルな企画。
1967年ベジャール37歳の初演作品を、50年後の今、再演という年が、ちょうど東京バレエ団50周年にもあたり・・・というタイミングでの再演。
実は、日本では1999年にも1996年に初演した3年後のタイミングでパリ・オペラ座バレエ団来日公演の一環として上演されており・・・わたくしはその時も、同じNHKホールで観ておりました。
そのときの冒頭のナレーターを務めたのは我が敬愛する永遠のエトワールダンサー(現・メートル・ド・バレエ)のローラン・イレールで、その澄んだイイ声に導かれるようにして始まった人間賛歌にクラクラした覚えがあります。
もうあれから15年がたってしまったのですね。

ベジャールは4つの楽章にそれぞれ“地”“火”“水”“風”を象徴させているのだとか。
第一楽章は東バ、第二、第三楽章はベジャールバレエ、そして第四楽章の最後には全員での“歓喜の歌”、そして熱狂的なファランドールへ・・・という流れ。80人という出演ダンサーと選び抜かれたソリストの個性が決め手の太規模公演。ジル・ロマン率いるベジャールバレエ団とベジャール氏自身が第2のBBLと称したベジャール氏の新作を何度も上演してきた東京バレエ団のコラボレーションはこの再演を行うにあたって将にふさわしい陣容。

また、指揮者のズ―ビン・メータといえば、2011年3月東日本大震災の当日、丁度来日公演中で、翌々日、3月13日(日)神奈川県民ホールで彼のタクトによる「トスカ」を鑑賞した記憶は鮮烈に残っています。
まだ、原発事故の影響は伝わっておらず、津波の被害者の方に黙とうをささげる、静かな一日でした。
ライモンディのスカルピア目当てで取ったチケットでしたが、マチネでしたので休憩時間がまだ明るく、2階ロビーの大きな窓から見える静かな青空と港の風景が忘れられません。
その後被曝を恐れたオーケストラ団員の総意で公演が中止となり止む無く離日する際に、「必ず、すぐに戻る!」と言い残したマエストロ・メータは翌4月10日、約束通りに来日し、在京オーケストラのチャリティ演奏会で「第九」のタクトを振ったという・・・。色々な思いが去来する本公演です。

ここ数年で東バのセンターを担ってきた柄本弾くんと上野水香さんセンターの第一楽章は東バソリスト陣が贅沢にキャスティングされて・・・って、女性ソリストは 吉岡さん、乾さん、高木さん、奈良さん、渡辺さんから吉川さんに至るまで充実していますが、男性は梅澤さんが上がってきたなという以外大量退団の余波か、新しい団員をまだ把握できていない状態が続いているなと^^;。松野さんはきれいなラインと丁寧な踊りで注目していましたがこういうコンテではその良さを活かしきれていない感がありますね。

第二楽章、赤いレギンスの男性とレオタードの女性、このレギンスの着こなしが、BBLダンサーはウエスト部分をちょっと折って気持ち腰穿きなんですよね、あと裾の調節リボン?がラフな感じで。ちょっとしたことですが、きっちり着る東バダンサーと見える風景が違う感じが^^;
久しぶりの大貫さんのダンスのキレ味も、ですが、彼とほぼ拮抗する力強さと伸びやかな肢体で、男女の差や人種を超えたある種ユートピア的なBBLの世界を体現しているかのようなキャサリーン・ティエルヘルムの若々しさとエネルギーを強く感じました。

第三楽章は・・・白のセンターの2人が・・・。
ベジャールさん存命中からずっとわたくしが見てきたBBLのセンターにスターとして君臨し続けてきたBBLの女王エリザベット・ロスと若手NO1的存在でジル・ロマン体制になってからは堂々とセンターを務めているジュリアン・ファブロ―とのデュエット。
赤毛のボブにはっきりとした目鼻立ちで、若い頃から成熟した女性の艶やかさとハンサム・ウーマンの爽快さで抜群のスター性を持つエリザベット・ロスがだんだんとデカダンスや人生を表現できるようになり、そして今、誰よりもピュアで優しさを見せながらも、ベジャールらしさというものを身体の隅々まで染み込ませているムーブメントは一ミリたりとも狂ったり遅れたりすることがない・・・この2人が今でも成熟を遂げながらもダンサーとして若々しく、現役であり、センターであり続けていることに自分でも驚くほど心揺さぶられました。
本当に 例えば腕をちょっとねじる様にして差し出すという動きひとつとっても、この動きってベジャール独特のニュアンスがあるのだなと気付かされるエリザベット・ロスのパフォーマンスでした。

そして第四楽章。
白、赤、黄、茶。これは4元素であり、4大陸であるという象徴だと思うのですが、ベジャール氏の俯瞰的な世界観、あらゆる人種をダンサーとして揃えながら、彼らの姿から発散される”ベジャールダンサー”としての匂い、存在感があるというベジャール・バレエ団の象徴のような場面ですね。
ある意味、1964年東京オリンピックの年、まだ世界が平和や融合を目標として、建前上だけでも価値観を一つにしていた時代の産物と言えばいえるのかもしれませんが、ベートーヴェンの昔から、人は個集団のエゴで動きがちな習性を理性の力で理想を追い求めようと方向にシフトしていこうというトライアルをやめない、そこに救いがあるのかも・・と、藤村美穂子さんら、素晴らしいソリストや合唱の歌で盛り上がるフィナーレの中、思ったことでした。

なんとも濃密な1時間半、でした



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