宙組バウについて熱く語りましたが、新TOPを始めとするメインどころは梅芸、そして赤坂ACTシアターにて、
往年のアステア&ロジャースの名作ミュージカル映画(1935年公開)を題材にした2011年のLONDONミュージカルを宝塚仕様にした新作古典劇「TOP HAT」をj絶賛上演中だったわけで・・・。
こちらも観なくては!と千秋楽と前日の午後の部、2回の観劇。
2015年4月19日(日)15:30
2015年4月20日(月)15:30
それぞれ1階前方の下手と上手で。
古き良き時代の英国もの、らしく、勘違いから生まれる誤解とそれにまつわる様々な騒動、そして最後に誤解が解けての大団円、という流れは花組の新TOPコンビのお披露目作品「アーネスト・イン・ラブ」と同じ!
海外ミュージカルではありませんが、雪組のお披露目別箱作品「伯爵令嬢」も取り違えものでレトロなムード、そして最後のHappyEnd,という点では共通していますね。
確かに肩肘張らずに楽しめて、最後はHappyEnd,笑顔で新TOPコンビの誕生を祝える祝賀ムードの洒落た小品、でのお披露目が最近のTAKARAZUKAのお披露目のトレンドなのかしら?
アニメ好きのオタクで、自分の趣味に走った意味不明な映像を挿入することでショー演出では危険視されることのある(失礼にもほどが・・・^^;)斎藤吉正演出・・・ですが、さすがに版権や縛りが厳しいのか、本筋を逸脱することなく、宝塚作品として成り立たせています。
登場人物の少ないシンプルなロマンチック・コメディですが、脇を膨らませ、舞台も立体的に使っての良い仕立てだったと思います。海外もの特有の言い回しも訳しすぎずにあの時代のアングロサクソン独特のユーモア感覚を残していて、楽しめました。(そのためにはある程度の御約束を共有できる予備知識は必要とされてしまうのかも・・とちょっと思いましたが)
とはいえ、いくつか気になる訳はありましたが・・・。ベイツを「付き人」としていましたが、ジュリーに属するならそれはありですが、ホレス夫妻に仕えているのなら「執事」ではないかと。
アガサ・クリスティーのポワロもののように大陸の人間(ラテン)に対する偏見(笑)に満ち満ちていたり、女は単純なおバカさんで浪費家で男にとって結婚は人生の墓場・・・と、この時代のイギリスの価値観がベースになっていることを理解してそれを楽しむことが出来れば極上の時間が待っている・・・という展開。
新・TOPコンビ、 朝夏さん、実咲さんは歌もダンスもお芝居も水準以上でタップも破綻なくこなして安定感抜群。
身長差や体格、お顔の雰囲気などのバランスもよく、2人とも元花組で、その頃からコンビを組むことの多かった歴史もあり、息のあった2人でした。
そして脇を固める寿組長と純矢ちとせさん。初めて宙組を観るミュージカルファンの友人たちはことごとく印象に残った人物としてこの2人を挙げていましたね。
あとメインキャストといえば、七海ひろきと愛月ひかる。2人とも髭の紳士で美男なのにちょっと残念な3枚目よりの濃いキャラクターとしての登場。
あとはモブ、というのが海外ミュージカルの御約束、ですが、皆一人何役もこなしつつ脇芝居を細かく作り込んで、これは雪組か!?と何度も目を疑いました(笑)
100周年特集の復刻名作1本モノ連投(風共、ベルばら)で、古典の定形の中で押さえつけられていた中で、精一杯役を表現する努力を続けてきた宙組の芝居心、そして大空祐飛、凰稀かなめと芝居心で組をひっぱるTOPが育んだものが今、一人ひとりの自覚的な個性豊かな役の表現として溢れているのかと組ファンとしては感動を禁じ得ませんでした・・・。
『TOP HAT』
Music & Lyrics by Irving Berlin
Based on RKO’s Motion Picture
Book by Matthew White & Howard Jacques
Based on the Screenplay by Dwight Taylor & Allan Scott
Presented by Arrangement with RKO Pictures LLC, Warner Bros. Theatre Ventures Inc. and the Irving Berlin Music Company
Originally Produced on the West End Stage by Kenneth H. Wax
脚本・演出/齋藤 吉正
■ジェリー・トラバース: 朝夏まなと
公演のためロンドンを訪れたブロードウェイのスターダンサー。
ブロ―ドウェイでの公演後仕事のためロンドンへ。サプライズ出演が予定されているためお忍びで・・との設定が悲喜劇を生む。
到着の夜、ロンドンのホテルで運命の出会い。翌日に雨の中恋愛が展開し、その日の夜=金曜夜か土曜の夜が初日のロンドンでの新作ショーに出演。そのまま芝居が掃けたら月曜の舞台に間に合うように戻るからとの約束で飛行機をチャーターしてベネチアのホテルへ。そこで様々な騒動が起こりますがそれはまる一日かせいぜい二日の出来事・・・という怒濤の展開。
ジェリーはブロードウェイの大スター。自信に充ち溢れ、とてもポジティブ。ちょっと単純で故に憎めない、愛すべき主人公。
TOPスターの役をTOPスターが演じる、というのがムリなく表現できる明るい声音の歌とエレガントなダンス。
長い手足が華やかな容姿、爽やかな持ち味。
歌詞も台詞声も明瞭。お披露目として大成功。
そして御挨拶が上手い!感謝の気持ちやこの公演を最後に宙組から星組に組替になるこの公演2番手ポジの七海ひろき氏を送ることばに「宇宙で誕生したスターが星空のもと更に輝き続けますように!」
カーテンコールの挨拶で前に進み出る時に最初の挨拶で七海氏が見せた恐る恐る前にでる・・ような足取りを真似して見せたり、くどくどしくならず、しめっぽくもせずにでも、七海氏を想いやるという技も見せ、「心に残る舞台を作っていきたい」との抱負、「タップを踏みながら赤坂の街をお気をつけてお帰り下さい」など観客の心に余韻を残す良い挨拶を。爽やかで頭の良いヒトなのだろうなと。大空さん以来の宙組挨拶キング万歳、と思ったことでした。
■デイル・トレモント: 実咲凛音
離婚の慰謝料でホクホク・・の後、お金持ちのホレスと再婚した親友マッジの前夫は彼女のいとこのはとこ。
上流階級のお嬢さんで今で言うところのオリビア・パレルモ的ソ―シャライツ。カリスマ的な美女モデルとしてイタリア人デザイナーと専属契約をして彼の服を着て社交するのがお仕事。
お嬢さん特有の気の強さと大胆さ、優しさと単純さを併せ持つ「可愛い女性」。
・・・という設定自体は実咲さんのニンとは言い難いとは思いますが、誤解からジェリーを親友マッジの夫と思いこみ、お灸をすえるべく彼の部屋に乗り込んで大胆さを装って誘惑する場面、花組時代(「カナリア」)以来の大胆なはっちゃけぶりで本領発揮。ソファの背に両腕を伸ばして反るお姿が・・・。「野生の王国」らしくて素敵でした^^
細いけれども決して所謂マヌカン体型ではないみりおん(実咲)ですが、ファーや羽ををふんだんに使ったサテンのドレスや乗馬服などたくさんのお衣装も素敵に着こなし、たくさんのナンバーも歌いこなし、で、ステキなデイルでした。
千秋楽、朝夏さんとのデュエットダンスでのリフト、何度回るの~?というくらい回転していて、しかもその後すぐに歌に入ると言う鬼ナンバーも2人してあの細さでこなすって・・どこにそのパワーが??
次回作のアイ―ダ役も楽しみです。
■マッジ・ハードウィック: 純矢ちとせ
デイルの年上の親友。マッジの前夫がデイルの親戚というところから意気投合したという設定。
亭主は元気で”豊かに補給してくれれば良い”というちゃっかりぶりと強気で豊かな有閑マダム振りを濃い演技とちょっと太く作った声で的確に表現。
一幕で散々金使いの荒さを夫が嘆いていましたが、ベネチアのホテルで再会したとたん、おねだり。いつもは財布から出された札束をさっと持って行く・・設定が、千秋楽は札束を夫の手に残して財布を取り上げ、一瞬間をおいてその札束も取り上げる・・という強欲ぶりを見せていました(笑)
女性上位で夫を尻に敷きつつも基本大らかで度量が大きく、仲人好きで温かみのある魅力的な中年女性を好演。
デイルとマッジ、マッジと夫の会話が大人で楽しい。勿論、この時代の有閑マダム、ならではの目線で。
夫婦円満のコツは週2回ロマンチックなレストランでディナーをすること・・と星空の下ダンス、ピンクのシャンパン・・と詳細をいきいき語りつつ 夫は火曜、わたしは木曜に行くのだけれどもね!といったふうですが^^;
最後のホレスとのナンバー、「あなたのxxが嫌い!でもそれ以外はI love you」という歌詞が幸せで信頼感たっぷりで相手をこき下ろしながらでも夫婦っていいなと思わせて温かい気持ちで胸がいっぱいになるという仕掛け人はこの人です^^
役にあった声でしっかりと歌えるせーこちゃん(純矢)、同期の七海さんをサポートし、温かい空気感を醸し出す様が絶妙でした。
■ベイツ: 寿つかさ
妻マッジが見つけてきた彼女のお気に入りの執事。主人ハードウィック氏とはウマが合わず、ベイツは彼を尊敬していない・・・。設定。
うーん、メアリー・ポピンズを思い出しました^^(P・L・トラヴァースの原作の方)。
といいますか、英国小説によく出てくる自信たっぷりで威厳があって、気弱な主人を睥睨する堂々たる執事。パワーバランスが内部で逆転している主従関係。
普段はコ―トを預かってもらうことも出来ず、却って主人が気を使ったりするのですが、いざ、ピンチとなった時には身体を張ってとことん任務を遂行するというデキル?男。
扉の開閉は必要最小限にして身のこなしもスッとしているのですが、いざ、それが必要となるとウエイタ―にも(ハエ入りのジェラ―トに対するクレームに「ハエも涼みたくなることもあるでしょう!」と放置^^;)、ゴンドラの船頭にも(無許可で逮捕)マダムにも(ノーコメント)扮する行動派。
・・・で究極のちゃっかり神父での大団円まで、キーマンとなるコノ人、寿組長のまじめを装っておかしみ満点の間の取り方の良さ、表情(ホレスにおたんこなす、と言われて憤慨した顔!)、身体能力(隠れるために一瞬でソファの上で身を縮める速度!)が如何なく活かされたハマり役でした。
これが他組で再演されたら、ベイツがすっしー(寿)さんだったときには・・と絶対比べられる、基準のハードルを上げまくった神配役。
で、フィナーレナンバーでは固めたホレスヘアを濡らして乱して誰よりも激しく踊りまくるダンサー組長すっしーさんで目立ちまくってました。VIVA!
■ホレス・ハードウィック: 七海ひろき
興行プロデューサー。お金持ちで心配性。ちょっと「華やかなりし日々」の悠未ひろさんが演じた役にかぶりますね。恐妻家なところも^^;。
ジェリーをロンドンの舞台にサプライズで出演させる企画を立てたところから、誤解が生まれる・・・という設定。
ジェリーがロンドンにいると勘づかれないように、ホテルの予約もホレス名義・・・からデイルが勘違いして・・・の騒動が。から、あれだけのストーリーを生みだした原作者が素晴らしい(笑)
今回の企画も大当たりで、きっと大成功を繰り返してきた敏腕プロデューサーなのであろうホレスは、イギリス紳士らしくそれをひけらかすような行動は取らず、どちらかというと心配性で悲観的。
いつも鎮静剤をのんでいるがその薬をみたジェリーが「その薬は中毒性があるらしいよ」と警告すると「ずっと昔から飲んでいるんだ。大丈夫」^^;
結婚についてジェリーに聞かれると「男は結婚するまでは人生を始めておらず、結婚したら人生は終わる」
女性には用心深く恐妻家であり愛妻家。デイルを小悪魔だ、気をつけろ!とジェリーに警告。
「野生の王国」場面、寝室に乗り込んできたデイルとジェリーの繰り広げる恋の駆け引きをシャワーキャップ姿でベッドのなか、ソファの陰と隠れながらそーっと様子をうかがう様が可愛くて可笑しくて。
千秋楽ではベネチアに向かうプライベートジェットで並んでいつもどおりこわがっているとジェリーの膝にもたれて「ずっとこうしていたい・・」と組替を示唆してしんみりさせてくれました。
あと、千秋楽スペシャルは、べディ―二を部屋に釘付けにするために階上の部屋でタップを踊る様にとジェリーに頼まれていつもはへろへろタップですぐにへたれるところ、任せて!練習したんだ!と会場の拍手をもらい、べディ―二も応えて「なんだ、あの華麗なタップの音は!」と^^
可愛くて可笑しくて、でもステキなお髭の紳士で理想の旦那様。七海さんの芝居の間の良さと持ち前の憎めないチャームがピッタリでした。
そうそう、デキル男の場面としては、一幕最後、楽屋風景から一転して、舞台がロンドン公演フィナーレの見せ場黒燕尾のタップ集団場面となり、客席も含めたアクトシアター全体を赤い水玉ライティングで包んで一転してアクト客席がロンドン客席、となった空間、客席通路に立つ七海さん=ホレスが「終ったぞ!空港へ急げジェリー!」と声をかける場面がありましたね。大成功の舞台の立役者として立つかいちゃん(七海)もさることながら、この舞台演出はもともそうなのかしら?とても鮮やかで感心しました。
■アルベルト・ベティーニ: 愛月ひかる
ラテンの男。イギリスで活躍するイタリア人。デイルを専属モデルとして社交界に売り出し中の人気デザイナー。
イギリス上流階級のお嬢様デイルと契約して彼女に関する全ての支払いを持つだけでなく、彼女を崇拝していて毎日お花を届けさせたり・・というビジネスをメインに彼女の崇拝者でもある、という関係。
常にハイテンションで「ヘンなガイジン」イントネーションでイタリア語交じりで喋る。
聴きとりづらいという評を結構見かけましたがそんなことなかったです。
多分イタリア語部分の意味を考えている間に続くセリフが入ってこない現象では?
サイト―先生のセリフ設定のせいかも。(愛ちゃんを擁護)
見た目は流石にガタイが良くスーツの着映える愛月さん、黒塗りでやや縮れ毛のヘアスタイルにお髭も良くお似合いで見た目は普通にダンディ枠なのに、話し方が・・(笑)なので、とても三枚目な役どころをコントラストつけて演じて頑張っていました。
崇拝するデイルお嬢様がアダムとかいう男のせいで、悲しんでいる・・のをアダム野郎!と怒り、デイルの悲しみを想いやり・・心優しい一途な良い男ではないですか。デイルのお衣装を見る限りヴァレンティノのような上流階級向けハイブランドの才能あるデザイナーで、故郷イタリアでも錦を飾る野心も持っていて仕事も出来るし。
思いがけずリアルにヘンな人、だったのは、アングロサクソン目線での偏見いっぱい(笑)の「ラテン・ラヴァー」の大ナンバーから続く、宝塚サイト―オリジナル演出と聞く、ストリップ?場面。
デイルと結婚できた!と取っておきのパジャマになる、ベッドの上でのストリップ?
普通にステキな黒燕尾?姿から、靴、靴下(なぜか黄色と赤)ネクタイを緩めて、ジャケット、シャツと華麗に脱ぎ棄て、後ろを向いてパンツまで・・・で、日替わり3種類と聞く(そしてその順番は斎藤先生のこだわりで決まっているとか)闘牛士・スーパーマン・赤黄緑の太縞に白水玉のパジャマ姿になる、といいう流れで、楽近くではとても客席も舞台も盛り上がっていましたが、これ、客席がもし冷たかったら演じるのは相当辛いでしょうねxxx
千秋楽では客席のテンションも高く、愛月さんも拍手をあおる勢いで、パジャマのポケットから万国旗を出したりの大サービス。ホレスかいちゃんに誤解が解けて仲直りの場面頬にキスするのですが、千秋楽ではせーこちゃんマッジが止めるまで何度も何度もキスしていました^^;
あと、最後、七海さんの御挨拶の時、並ぶ同期のもんち(星吹彩翔)とふたりして同じ顔して身体を固くしてじっと七海さんを見つめていた姿に泣けました;;
タカラヅカ2枚目路線スターとして、ここまでさせる??というはっちゃけた役でしたが、なんとも魅力的で、時々あぁべディ―二さんに会いたい・・・と思ってしまう(笑)
リアルにヅカ友のひとりで、この公演で愛ちゃんにハマった人もいますし、ファン増えたのではないでしょうか?
脇を固める人々、舞台装置など、まだまだ語り足りない・・
ので、続きます(え?)
往年のアステア&ロジャースの名作ミュージカル映画(1935年公開)を題材にした2011年のLONDONミュージカルを宝塚仕様にした新作古典劇「TOP HAT」をj絶賛上演中だったわけで・・・。
こちらも観なくては!と千秋楽と前日の午後の部、2回の観劇。
2015年4月19日(日)15:30
2015年4月20日(月)15:30
それぞれ1階前方の下手と上手で。
古き良き時代の英国もの、らしく、勘違いから生まれる誤解とそれにまつわる様々な騒動、そして最後に誤解が解けての大団円、という流れは花組の新TOPコンビのお披露目作品「アーネスト・イン・ラブ」と同じ!
海外ミュージカルではありませんが、雪組のお披露目別箱作品「伯爵令嬢」も取り違えものでレトロなムード、そして最後のHappyEnd,という点では共通していますね。
確かに肩肘張らずに楽しめて、最後はHappyEnd,笑顔で新TOPコンビの誕生を祝える祝賀ムードの洒落た小品、でのお披露目が最近のTAKARAZUKAのお披露目のトレンドなのかしら?
アニメ好きのオタクで、自分の趣味に走った意味不明な映像を挿入することでショー演出では危険視されることのある(失礼にもほどが・・・^^;)斎藤吉正演出・・・ですが、さすがに版権や縛りが厳しいのか、本筋を逸脱することなく、宝塚作品として成り立たせています。
登場人物の少ないシンプルなロマンチック・コメディですが、脇を膨らませ、舞台も立体的に使っての良い仕立てだったと思います。海外もの特有の言い回しも訳しすぎずにあの時代のアングロサクソン独特のユーモア感覚を残していて、楽しめました。(そのためにはある程度の御約束を共有できる予備知識は必要とされてしまうのかも・・とちょっと思いましたが)
とはいえ、いくつか気になる訳はありましたが・・・。ベイツを「付き人」としていましたが、ジュリーに属するならそれはありですが、ホレス夫妻に仕えているのなら「執事」ではないかと。
アガサ・クリスティーのポワロもののように大陸の人間(ラテン)に対する偏見(笑)に満ち満ちていたり、女は単純なおバカさんで浪費家で男にとって結婚は人生の墓場・・・と、この時代のイギリスの価値観がベースになっていることを理解してそれを楽しむことが出来れば極上の時間が待っている・・・という展開。
新・TOPコンビ、 朝夏さん、実咲さんは歌もダンスもお芝居も水準以上でタップも破綻なくこなして安定感抜群。
身長差や体格、お顔の雰囲気などのバランスもよく、2人とも元花組で、その頃からコンビを組むことの多かった歴史もあり、息のあった2人でした。
そして脇を固める寿組長と純矢ちとせさん。初めて宙組を観るミュージカルファンの友人たちはことごとく印象に残った人物としてこの2人を挙げていましたね。
あとメインキャストといえば、七海ひろきと愛月ひかる。2人とも髭の紳士で美男なのにちょっと残念な3枚目よりの濃いキャラクターとしての登場。
あとはモブ、というのが海外ミュージカルの御約束、ですが、皆一人何役もこなしつつ脇芝居を細かく作り込んで、これは雪組か!?と何度も目を疑いました(笑)
100周年特集の復刻名作1本モノ連投(風共、ベルばら)で、古典の定形の中で押さえつけられていた中で、精一杯役を表現する努力を続けてきた宙組の芝居心、そして大空祐飛、凰稀かなめと芝居心で組をひっぱるTOPが育んだものが今、一人ひとりの自覚的な個性豊かな役の表現として溢れているのかと組ファンとしては感動を禁じ得ませんでした・・・。
『TOP HAT』
Music & Lyrics by Irving Berlin
Based on RKO’s Motion Picture
Book by Matthew White & Howard Jacques
Based on the Screenplay by Dwight Taylor & Allan Scott
Presented by Arrangement with RKO Pictures LLC, Warner Bros. Theatre Ventures Inc. and the Irving Berlin Music Company
Originally Produced on the West End Stage by Kenneth H. Wax
脚本・演出/齋藤 吉正
■ジェリー・トラバース: 朝夏まなと
公演のためロンドンを訪れたブロードウェイのスターダンサー。
ブロ―ドウェイでの公演後仕事のためロンドンへ。サプライズ出演が予定されているためお忍びで・・との設定が悲喜劇を生む。
到着の夜、ロンドンのホテルで運命の出会い。翌日に雨の中恋愛が展開し、その日の夜=金曜夜か土曜の夜が初日のロンドンでの新作ショーに出演。そのまま芝居が掃けたら月曜の舞台に間に合うように戻るからとの約束で飛行機をチャーターしてベネチアのホテルへ。そこで様々な騒動が起こりますがそれはまる一日かせいぜい二日の出来事・・・という怒濤の展開。
ジェリーはブロードウェイの大スター。自信に充ち溢れ、とてもポジティブ。ちょっと単純で故に憎めない、愛すべき主人公。
TOPスターの役をTOPスターが演じる、というのがムリなく表現できる明るい声音の歌とエレガントなダンス。
長い手足が華やかな容姿、爽やかな持ち味。
歌詞も台詞声も明瞭。お披露目として大成功。
そして御挨拶が上手い!感謝の気持ちやこの公演を最後に宙組から星組に組替になるこの公演2番手ポジの七海ひろき氏を送ることばに「宇宙で誕生したスターが星空のもと更に輝き続けますように!」
カーテンコールの挨拶で前に進み出る時に最初の挨拶で七海氏が見せた恐る恐る前にでる・・ような足取りを真似して見せたり、くどくどしくならず、しめっぽくもせずにでも、七海氏を想いやるという技も見せ、「心に残る舞台を作っていきたい」との抱負、「タップを踏みながら赤坂の街をお気をつけてお帰り下さい」など観客の心に余韻を残す良い挨拶を。爽やかで頭の良いヒトなのだろうなと。大空さん以来の宙組挨拶キング万歳、と思ったことでした。
■デイル・トレモント: 実咲凛音
離婚の慰謝料でホクホク・・の後、お金持ちのホレスと再婚した親友マッジの前夫は彼女のいとこのはとこ。
上流階級のお嬢さんで今で言うところのオリビア・パレルモ的ソ―シャライツ。カリスマ的な美女モデルとしてイタリア人デザイナーと専属契約をして彼の服を着て社交するのがお仕事。
お嬢さん特有の気の強さと大胆さ、優しさと単純さを併せ持つ「可愛い女性」。
・・・という設定自体は実咲さんのニンとは言い難いとは思いますが、誤解からジェリーを親友マッジの夫と思いこみ、お灸をすえるべく彼の部屋に乗り込んで大胆さを装って誘惑する場面、花組時代(「カナリア」)以来の大胆なはっちゃけぶりで本領発揮。ソファの背に両腕を伸ばして反るお姿が・・・。「野生の王国」らしくて素敵でした^^
細いけれども決して所謂マヌカン体型ではないみりおん(実咲)ですが、ファーや羽ををふんだんに使ったサテンのドレスや乗馬服などたくさんのお衣装も素敵に着こなし、たくさんのナンバーも歌いこなし、で、ステキなデイルでした。
千秋楽、朝夏さんとのデュエットダンスでのリフト、何度回るの~?というくらい回転していて、しかもその後すぐに歌に入ると言う鬼ナンバーも2人してあの細さでこなすって・・どこにそのパワーが??
次回作のアイ―ダ役も楽しみです。
■マッジ・ハードウィック: 純矢ちとせ
デイルの年上の親友。マッジの前夫がデイルの親戚というところから意気投合したという設定。
亭主は元気で”豊かに補給してくれれば良い”というちゃっかりぶりと強気で豊かな有閑マダム振りを濃い演技とちょっと太く作った声で的確に表現。
一幕で散々金使いの荒さを夫が嘆いていましたが、ベネチアのホテルで再会したとたん、おねだり。いつもは財布から出された札束をさっと持って行く・・設定が、千秋楽は札束を夫の手に残して財布を取り上げ、一瞬間をおいてその札束も取り上げる・・という強欲ぶりを見せていました(笑)
女性上位で夫を尻に敷きつつも基本大らかで度量が大きく、仲人好きで温かみのある魅力的な中年女性を好演。
デイルとマッジ、マッジと夫の会話が大人で楽しい。勿論、この時代の有閑マダム、ならではの目線で。
夫婦円満のコツは週2回ロマンチックなレストランでディナーをすること・・と星空の下ダンス、ピンクのシャンパン・・と詳細をいきいき語りつつ 夫は火曜、わたしは木曜に行くのだけれどもね!といったふうですが^^;
最後のホレスとのナンバー、「あなたのxxが嫌い!でもそれ以外はI love you」という歌詞が幸せで信頼感たっぷりで相手をこき下ろしながらでも夫婦っていいなと思わせて温かい気持ちで胸がいっぱいになるという仕掛け人はこの人です^^
役にあった声でしっかりと歌えるせーこちゃん(純矢)、同期の七海さんをサポートし、温かい空気感を醸し出す様が絶妙でした。
■ベイツ: 寿つかさ
妻マッジが見つけてきた彼女のお気に入りの執事。主人ハードウィック氏とはウマが合わず、ベイツは彼を尊敬していない・・・。設定。
うーん、メアリー・ポピンズを思い出しました^^(P・L・トラヴァースの原作の方)。
といいますか、英国小説によく出てくる自信たっぷりで威厳があって、気弱な主人を睥睨する堂々たる執事。パワーバランスが内部で逆転している主従関係。
普段はコ―トを預かってもらうことも出来ず、却って主人が気を使ったりするのですが、いざ、ピンチとなった時には身体を張ってとことん任務を遂行するというデキル?男。
扉の開閉は必要最小限にして身のこなしもスッとしているのですが、いざ、それが必要となるとウエイタ―にも(ハエ入りのジェラ―トに対するクレームに「ハエも涼みたくなることもあるでしょう!」と放置^^;)、ゴンドラの船頭にも(無許可で逮捕)マダムにも(ノーコメント)扮する行動派。
・・・で究極のちゃっかり神父での大団円まで、キーマンとなるコノ人、寿組長のまじめを装っておかしみ満点の間の取り方の良さ、表情(ホレスにおたんこなす、と言われて憤慨した顔!)、身体能力(隠れるために一瞬でソファの上で身を縮める速度!)が如何なく活かされたハマり役でした。
これが他組で再演されたら、ベイツがすっしー(寿)さんだったときには・・と絶対比べられる、基準のハードルを上げまくった神配役。
で、フィナーレナンバーでは固めたホレスヘアを濡らして乱して誰よりも激しく踊りまくるダンサー組長すっしーさんで目立ちまくってました。VIVA!
■ホレス・ハードウィック: 七海ひろき
興行プロデューサー。お金持ちで心配性。ちょっと「華やかなりし日々」の悠未ひろさんが演じた役にかぶりますね。恐妻家なところも^^;。
ジェリーをロンドンの舞台にサプライズで出演させる企画を立てたところから、誤解が生まれる・・・という設定。
ジェリーがロンドンにいると勘づかれないように、ホテルの予約もホレス名義・・・からデイルが勘違いして・・・の騒動が。から、あれだけのストーリーを生みだした原作者が素晴らしい(笑)
今回の企画も大当たりで、きっと大成功を繰り返してきた敏腕プロデューサーなのであろうホレスは、イギリス紳士らしくそれをひけらかすような行動は取らず、どちらかというと心配性で悲観的。
いつも鎮静剤をのんでいるがその薬をみたジェリーが「その薬は中毒性があるらしいよ」と警告すると「ずっと昔から飲んでいるんだ。大丈夫」^^;
結婚についてジェリーに聞かれると「男は結婚するまでは人生を始めておらず、結婚したら人生は終わる」
女性には用心深く恐妻家であり愛妻家。デイルを小悪魔だ、気をつけろ!とジェリーに警告。
「野生の王国」場面、寝室に乗り込んできたデイルとジェリーの繰り広げる恋の駆け引きをシャワーキャップ姿でベッドのなか、ソファの陰と隠れながらそーっと様子をうかがう様が可愛くて可笑しくて。
千秋楽ではベネチアに向かうプライベートジェットで並んでいつもどおりこわがっているとジェリーの膝にもたれて「ずっとこうしていたい・・」と組替を示唆してしんみりさせてくれました。
あと、千秋楽スペシャルは、べディ―二を部屋に釘付けにするために階上の部屋でタップを踊る様にとジェリーに頼まれていつもはへろへろタップですぐにへたれるところ、任せて!練習したんだ!と会場の拍手をもらい、べディ―二も応えて「なんだ、あの華麗なタップの音は!」と^^
可愛くて可笑しくて、でもステキなお髭の紳士で理想の旦那様。七海さんの芝居の間の良さと持ち前の憎めないチャームがピッタリでした。
そうそう、デキル男の場面としては、一幕最後、楽屋風景から一転して、舞台がロンドン公演フィナーレの見せ場黒燕尾のタップ集団場面となり、客席も含めたアクトシアター全体を赤い水玉ライティングで包んで一転してアクト客席がロンドン客席、となった空間、客席通路に立つ七海さん=ホレスが「終ったぞ!空港へ急げジェリー!」と声をかける場面がありましたね。大成功の舞台の立役者として立つかいちゃん(七海)もさることながら、この舞台演出はもともそうなのかしら?とても鮮やかで感心しました。
■アルベルト・ベティーニ: 愛月ひかる
ラテンの男。イギリスで活躍するイタリア人。デイルを専属モデルとして社交界に売り出し中の人気デザイナー。
イギリス上流階級のお嬢様デイルと契約して彼女に関する全ての支払いを持つだけでなく、彼女を崇拝していて毎日お花を届けさせたり・・というビジネスをメインに彼女の崇拝者でもある、という関係。
常にハイテンションで「ヘンなガイジン」イントネーションでイタリア語交じりで喋る。
聴きとりづらいという評を結構見かけましたがそんなことなかったです。
多分イタリア語部分の意味を考えている間に続くセリフが入ってこない現象では?
サイト―先生のセリフ設定のせいかも。(愛ちゃんを擁護)
見た目は流石にガタイが良くスーツの着映える愛月さん、黒塗りでやや縮れ毛のヘアスタイルにお髭も良くお似合いで見た目は普通にダンディ枠なのに、話し方が・・(笑)なので、とても三枚目な役どころをコントラストつけて演じて頑張っていました。
崇拝するデイルお嬢様がアダムとかいう男のせいで、悲しんでいる・・のをアダム野郎!と怒り、デイルの悲しみを想いやり・・心優しい一途な良い男ではないですか。デイルのお衣装を見る限りヴァレンティノのような上流階級向けハイブランドの才能あるデザイナーで、故郷イタリアでも錦を飾る野心も持っていて仕事も出来るし。
思いがけずリアルにヘンな人、だったのは、アングロサクソン目線での偏見いっぱい(笑)の「ラテン・ラヴァー」の大ナンバーから続く、宝塚サイト―オリジナル演出と聞く、ストリップ?場面。
デイルと結婚できた!と取っておきのパジャマになる、ベッドの上でのストリップ?
普通にステキな黒燕尾?姿から、靴、靴下(なぜか黄色と赤)ネクタイを緩めて、ジャケット、シャツと華麗に脱ぎ棄て、後ろを向いてパンツまで・・・で、日替わり3種類と聞く(そしてその順番は斎藤先生のこだわりで決まっているとか)闘牛士・スーパーマン・赤黄緑の太縞に白水玉のパジャマ姿になる、といいう流れで、楽近くではとても客席も舞台も盛り上がっていましたが、これ、客席がもし冷たかったら演じるのは相当辛いでしょうねxxx
千秋楽では客席のテンションも高く、愛月さんも拍手をあおる勢いで、パジャマのポケットから万国旗を出したりの大サービス。ホレスかいちゃんに誤解が解けて仲直りの場面頬にキスするのですが、千秋楽ではせーこちゃんマッジが止めるまで何度も何度もキスしていました^^;
あと、最後、七海さんの御挨拶の時、並ぶ同期のもんち(星吹彩翔)とふたりして同じ顔して身体を固くしてじっと七海さんを見つめていた姿に泣けました;;
タカラヅカ2枚目路線スターとして、ここまでさせる??というはっちゃけた役でしたが、なんとも魅力的で、時々あぁべディ―二さんに会いたい・・・と思ってしまう(笑)
リアルにヅカ友のひとりで、この公演で愛ちゃんにハマった人もいますし、ファン増えたのではないでしょうか?
脇を固める人々、舞台装置など、まだまだ語り足りない・・
ので、続きます(え?)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます