maria-pon

お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

パリ・オペラ座バレエ団2014来日公演「ドン・キホーテ」 エイマン、フルステー

2014-03-21 04:35:15 | BALLET
パリ・オペラ座バレエ団来日公演、
2014年3月14日(金)18:30~
東京文化会館にて。

パリ・オペラ座バレエ団 日本公演
「ドン・キホーテ」
プロローグ付 全3幕

ミゲル・デ・セルバンテスの小説に基づく

音楽: ルートヴィク・ミンクス
編曲: ジョン・ランチベリー
振付・演出: ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパ版による)
美術: アレクサンドル・ベリヤエフ
衣裳: エレナ・リヴキナ
照明: フィリップ・アルバリック

パリ・オペラ座初演:1981 年3 月6 日

◆主な配役◆

キトリ(ドルシネア): マチルド・フルステー
バジリオ: マチアス・エイマン

エスパーダ: ヴァンサン・シャイエ
街の踊り子: サブリナ・マレム

ドン・キホーテ: ギョーム・シャルロー
サンチョ・パンサ: シモン・ヴァラストロ
ガマーシュ、キトリの求婚者: シリル・ミティリアン
ロレンツォ、キトリの父: アレクシス・サラミット

ドリアードの女王:エロイーズ・ブルドン
キューピッド:ミリアム・カミオンカ

演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
指揮:ケヴィン・ローズ

◆上演時間◆
第1幕: 18:30 - 19:25 【休憩 20分】
第2幕: 19:45 - 20:20 【休憩 20分】
第3幕: 20:40 - 21:15

感想は後日・・



パリ・オペラ座バレエ団2014来日公演 「ドン・キホーテ」初日

2014-03-19 13:09:30 | BALLET
パリ・オペラ座バレエ団の来日公演前半が終わりましたね。
若手中心のヌレエフ版「ドン・キホーテ」、そして明日から始まるのはベテランエトワール陣によるノイマイヤーの「椿姫」。

かつてのヌレエフ世代の煌めきの片鱗からオペラ座バレエ団の魅力に魅入られたものとしては、今の布陣は若干物足りなくなくもないのですが、それでも、次世代が既に引退興行を行うという時の流れを受け止め、その更なる次の世代の成長を見届けるべく、ほぼ全キャストを観賞の今回。

まずは、「ドン・キホーテ」の初日から、感想を。



2014/03/13(THU)18時45分開演 東京文化会館 大ホール

パリ・オペラ座バレエ団 日本公演
「ドン・キホーテ」
プロローグ付 全3幕

ミゲル・デ・セルバンテスの小説に基づく

音楽: ルートヴィク・ミンクス
編曲: ジョン・ランチベリー
振付・演出: ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパ版による)
美術: アレクサンドル・ベリヤエフ
衣裳: エレナ・リヴキナ
照明: フィリップ・アルバリック

パリ・オペラ座初演:1981 年3 月6 日

◆主な配役◆

キトリ(ドルシネア): アリス・ルナヴァン
バジリオ: カール・パケット

エスパーダ: クリストフ・デュケンヌ
街の踊り子: ローラ・エッケ

ドン・キホーテ: ギョーム・シャルロー
サンチョ・パンサ: シモン・ヴァラストロ
ガマーシュ、キトリの求婚者: マロリー・ゴディオン
ロレンツォ、キトリの父: パスカル・オーバン

ドリアードの女王: アマンディーヌ・アルビッソン
キューピッド: シャルリーヌ・ジザンダネ

演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
指揮:ケヴィン・ローズ

◆上演時間◆
第1幕: 18:45 - 19:35 【休憩 20分】
第2幕: 19:55 - 20:30 【休憩 20分】
第3幕: 20:50 - 21:25

フランス国内でおこなわれているパリ・オペラ座労働組合のストライキの影響により、本日の日本公演初日の開演時間を18時45分とさせていただきます。お客様にはご迷惑をおかけして申し訳ございませんが、なにとぞご了承のほどよろしくお願い申し上げます。
との告知アリ。

この日、7時まで会社にいなくてはならず、19:30に文化会館到着で、当初の予定では18:30開演だったため、1幕をほぼあきらめていたのですが、この上演時間の変更および、若干の開演の遅れのため、1幕途中からをかなり見ることができたのは幸運でした。

この日のCASTは、当初、
リュドミラ・パリエロXカール・パケット、ミリアム・ウルド=ブラハムXマチアス・エイマン、アリス・ルナヴァンXジョシュア・オファルト で発表されていたのが、故障やスケジュール調整で
ルナヴァンXパケット、パリエロXエイマン、そして、日本では無名の若手プルミエのヴァランティ―ヌ・コラサントXフランソワ・アリュに変更。
マチアスのチケットは変更になったらクレーム続出とわかってか、変更なしでしたが、ルナヴァンがパケットに合わせて異動したので、ルナヴァン目当てでチケットを取っていたわたくしは、再度、チケットを探さなくてはならず・・・大変でした^^;
そしてまた、今度はリュドミラが出演できなくなって、ドロテも産休中ということで、マチアスと「ドンキ」を踊れるダンサーで、まさかの登場がサンフランシスコ・バレエに一時避難?プリンシパルとして移籍中のスジェ、マチルド・フルステー。

彼女の踊りについては翌日の感想に記しますが、この日、配役表を見た瞬間、お目当てのアリス以上にテンションが上がったのが、緑の人!
・ガマーシュ: マロリー・ゴディオン
そして
・サンチョ・パンサ: シモン・ヴァラストロ

2人とも、やや小柄なれど良いダンサーなのですよね・・・。
ゴディオンくんは来日の度に、(特にヌレエフ版の難易度高く激しい振付の)群舞のダンスリーダーとしてとり澄ましたお顔で正確無比に牽引する姿をついオペラグラスで追ってしまうスジェ。
ヴァラストロくんは ローラン・イレ―ル引退直前の貴重な公演、ということで、イタリアはトレヴィーゾまで遠征した「GALA DES HOMMES」に出演、「オー二ス」のソロで、潮風と地中海の陽光が感じられる素晴らしい踊りを見せてくれて以来の注目株。
その2人がまさかのキャラクテールとは・・・なんて観ごたえがありそうなのかしら!!と急上昇するボルテージ。
期待にたがわず、白塗りのお化粧が美しくとてもお似合いだったゴディオンくんはお気にいりのエトロ(?)の傘を駆使して小芝居炸裂。美しく愛らしく憎めない気どりやさんガマーシュでした。
ヴァラストロくんはそのペーソス溢れる演技と彫の深いフレスコ画の聖フランチェスコのような容姿で、ただのおとぼけ従者には見えない存在感が。
いや・・・なんだかんだいって、オペラ座ってやっぱり人材豊富だわ・・と思うのはこういうところですね。

あと、ルグリ先生のNHK教育で2006年に放映された奇跡の番組「ルグリのスーパーバレエレッスン」で生徒役を演じた若手たちがその後成長した姿をそこここで見せてくれているのにも胸が熱くなります・・・。

ドイツ系っぽい容姿の健康的なブロンド、シャルリ―ヌ・ジザンダネはスジェで、キューピッド役を。彼女はSBLのプロフィールに趣味は乗馬と書いていたような・・・。運動神経が良さそうな優等生タイプで、頭角を現してきましたね。
「ロミオとジュリエット」を初々しく踊っていたカップル、ロレーヌ・レヴィとアクセル・イヴォー。
長身細身の美少女ロレーヌはコリフェですが、ジプシー娘では2人口で、ドリア―ドでは3人の一角として、目立つところで使われており、昨年末の昇進試験でスジェに上がったばかりのお顔立ちに特徴のあるロマンチックダンサー・アクセルくんも全ての群舞で活躍しており。
他にも、ファヴィアン・レヴィヨンとか、色々と見つけては嬉しくなっておりました。

さて、主役は。
アリス・ルナヴァンについては、ローラン・イレールの引退公演をガルニエ宮で観た時に、ウィリアム・フォーサイスの「精神の不安定なスリル」であの円盤型のチュチュでキレ良く踊っている姿に着目し。その後、「ル・パルク」の来日公演にも帯同していて、10頭身かと思わせるほどの長身小顔のテクニシャンとして認識。コンテンポラリーはぴったりだけれど古典の全幕はどうかしら?と興味駸々で。
キトリは、そんな彼女にとって、最も似合う古典の主役かも。 きびきびとした街娘であるだけでなく、PDDでは艶やかな大きさを感じさせる踊りで、好感度大。
お顔立ちがベトナム系のエキゾチックなアジアンFACEなので美女タイプではないのですが、ゴールデン・レトリーバーのような金髪でがっしりとしたカールとの並びは、意外と真逆なのが良かったりして・・・。
ソチのアイスダンスの金メダリスト、メリル・デービス&チャ―リー・ホワイト的なバランス、とでも申しましょうか。
安定感のあるパケットくんとの並びは思いがけず良かったです。



このヌレエフ版は、ヌレエフらしく、群舞の踊りの密度が濃くて、幕が下りる時には舞台中の人が激しく踊り続けているさなかに下りてくる・・・という感じで。
美術やお衣装も、アイボリーのチュチュの下に重ねたチュチュペチコートが薄紫だったり、赤からオレンジにグラデーションになったスカートとか、フランスらしいエスプリの効いた配色がステキ。
頻繁にお召し替えするバジルも、スペインものの定番の赤黒ではなく、アイボリーとゴールドベージュとか淡いブルーグレーと水色とアイボリーとか、洒落ていて上品。
質量ともたっぷり!という感じの眼の忙しい舞台は南国の祝祭劇にふさわしく、踊りを引き立てることを大前提にサービスたっぷりにためて聞かせるこの日の指揮者のケヴィン・ローズ氏の徹底した踊りに奉仕する指揮ぶりとともに、心から楽しめた舞台でした


マリア・ジョアン・ピリス ピアノリサイタル2014

2014-03-17 07:35:35 | MUSIC
マリア・ジョアン・ピリスのピアノリサイタルに行って参りました。

ポルトガルの女流ピアニスト、ピリスを聴くようになったのは、1996年のショパンのノクターン全集のCDから。
情感に溢れながらも、情緒に流されない端正さを保ちつつ、自然な軽快さも感じさせる新鮮なショパンに注目し、翌年の来日公演にも行った覚えが・・・。

今回は、そのピリス好きを知った友人が手配してくださったチケットで。
サントリーホールの大ホール、1階通路後ろのとても良いお席で観賞することが出来ました。



2014年3月7日(金) 19:00 開演

(曲目)
シューベルト: 4つの即興曲 D899, op.90
ドビュッシー: ピアノのために
シューベルト: ピアノ・ソナタ 変ロ長調 D960

(アンコール)
シューマン/森の情景から「予言の鳥」

久しぶりに観るピリスは、スカートこそタフタの渋いローズピンクのロングで演奏会仕様ではありましたが、飾り気のないグレーのショートカットヘアーにライトグレーのシンプルなクル―ネックのカーディガンジャケットのナチュラルなお姿。

登場してすぐに弾き始める様も、まったくテライのないピリスらしいスタイル。

シューベルトの即興曲、実は、わたくし自身がピアノを習っていて高校生でやめたのですが、その最後の発表会で弾いたのが2番。
内田光子氏の同曲を聴いた時も、メロディーラインの浮き立たせ方、テンポなど、彼我の違いに愕然とし、思わず楽譜を取り出して改めて弾きなおしたことがあったのですが、今回また、しみじみとアプローチの深さ、正確かつ軽快な連続したアルペジオの処理、曲の運び、繰り返し部分の変化の付け方など、おこがましい言い方ですが、自分が取り組んだことがあるからこその一音一音の彼我の違い、彼女の演奏のさりげない深さに震撼しました。
それを除いても、ピアノ・ソナタを含めて、シュ―ベルトの持つ、青春の苦悩と憧れ、森の中を散策して木漏れ日を感じるような癒し、そして死の予感と言ったドイツの黒い森に密やかに息づく抒情と厳しさのような感覚を呼び起こされる演奏は、そぎ落とされた中の充実を実感させてくれました。

ピリスがドビュッシー??というのも新鮮な、シューベルトに挟まれたドビュッシーの「ピアノのために」。
これは夢の世界のようなドビュッシーの幻想的な世界が突如目の前に繰り広げられ、クラクラと目眩を起こすような別次元で、心を解き放たれて遊ぶような夢の時間・・・
「プレリュード」「サラバンド」「トッカ―タ」
超絶技巧も彼女の手にかかるとかき鳴らされるハープの音色が聞こえてくるような木霊のようで、彼女のドビュッシーをもっと聴いてみたい!と渇望させられる演奏。

そしてアンコール曲がシューマン、というのも、つい最近舞台でシューマンとブラームスの愛と葛藤を描いた作品を観たばかり。。。ということもあって、その煌めきがなんとも感慨深く、人生の儚さと美しさと人の才能の結露が受け継がれることの意味など、諸々考えが宙を舞うようなラストの余韻を残して。
拍手の中ピリスは笑顔と深いおじぎをして その日、風邪の咳ひとつ演奏中にもらすまいと恐ろしい集中力を発揮していた満場の観客に応えて軽やかに去って行かれました・・・。

今年の7月で70歳になられるそうですが、これからも彼女の演奏を聴く機会を多く持てたら・・と願います。



宝塚宙組「翼ある人々~ブラームスとクララ・シューマン~」日本青年館公演

2014-03-06 09:25:36 | TAKARAZUKA
宝塚宙組2番手格男役、朝夏まなと主演、上田久美子作・演出
宝塚宙組公演
「翼ある人々~ブラームスとクララ・シュ―マン」
日本青年館公演、千秋楽前日の日曜日にW観劇した感想です。

先行して2月8日(土)から16日(日)まで、梅田のシアター・ドラマシティで上演されたときにとても評判が良く、
2月26日(水)~3月3日(月)の日本青年館公演も完売と、以前は苦戦する状況が多く見られたTOPスター以外の生徒の主演作品に良作が続いて、チケット入手もむずかしくなってきましたね。
良き傾向ではありますし、チケット取りも苦労するとはいえ色々なルートがありますので、最終的には観られない、ということにはならないのですが・・・嬉しい悲鳴と言ったところでしょうか?



配役は

ヨハネス・ブラームス  朝夏 まなと
ロベルト・シューマン  緒月 遠麻
クララ・シューマン  伶美 うらら
*~*~*
ベルタ【シューマン家の料理女】  鈴奈 沙也
イーダ・フォン・ホーエンタール【音楽界の御意見番。通称「伯爵夫人」】  純矢 ちとせ
ヴェラ【ハンブルクの酒場の女将】  花音 舞
ヘルマン博士 【ロベルトの主治医】  風羽 玲亜
カタリーナ【晩年のブラームスの家政婦】  花里 まな
ヨーゼフ・ヨアヒム【名ヴァイオリニスト。シューマン家の友人】  澄輝 さやと
ルイーゼ・ヤーファ【実在の女性に名を借りた架空の人物。クララのピアノの生徒】  すみれ乃 麗
ベートーヴェン? 【ベートーヴェン?】  凛城 きら
オットー・ヴェーゼンドンク【ジュネーブの銀行家。音楽の有力なパトロン】  松風 輝
フランツ・リスト【ロマン派のピアニスト、作曲家。「ピアノの魔術師」の異名をもつ】  愛月 ひかる
レオノーラ・ゼンフ【ライプツィヒの音楽出版社の社長夫人】  結乃 かなり
マティルデ・ヴェーゼンドンク【ジュネーブの銀行家夫人】  夢涼 りあん
ユリウス・グリム【作曲家志望の青年。シューマン家の友人】  美月 悠
リヒャルト・ワーグナー【ロマン派オペラの頂点に立つ作曲家。「楽劇王」と呼ばれる】  春瀬 央季
カロリーネ・フォン・ヴィトゲンシュタイン【ヴィトゲンシュタイン侯爵夫人。リストの愛人】  真みや 涼子
エミール・シューマン【シューマン家の長男】  秋音 光
フェリックス・シューマン【シューマン家の次男】  花菱 りず
ユリー・シューマン【シューマン家の長女】  遥羽 らら

若き日のヨハネス・ブラームスを主人公に、彼の才能を見出したシューマン、その妻で有名ピアニストのクララ、三人の出会いから別れまでを描く物語。ある秋の日、デュッセルドルフに住むシューマン夫妻のもとに、一人の貧しい青年が訪ねて来る。酒場のピアノ弾きをしていたというその青年が弾いてみせた自作の交響曲のモチーフ…青年ブラームスの才能は、シューマンとクララを魅了し、彼自身の運命をも変えてゆく。シューマンは青年を自宅に住まわせ教えを授けるが、ブラームスは美しいクララに惹かれてゆき…。背徳の恋と師弟の愛情、音楽への同じ志。三人の矛盾に満ちた関係に、破綻の時は近づいていた。愛憎を越えて音楽に結ばれた三人の絆を通して、やがて芸術家として飛翔してゆく主人公の姿をドラマティックに描き出す。

以上がこの物語の全てです。
過去に映画でもこの題材は取り上げられており、わたくしは未見なのですが、
「クララ・シューマン 愛の協奏曲」GELIEBTE CLARA/CLARA
という2008年の作品がありますね。
ブラームスの末裔にあたるヘルマ・サンダース・ブラームス監督が、クララとブラームスの関係にきりこんだ意欲作とされているようですが、この映画を観た友人によりますと、ほぼストーリーの骨子は同じ、だそう。

脚色込みでの、この芝居の流れは(ネタばれアリです)・・・

貧困の中、孤独に自らの音楽を追求しようとしていた若き天才ブラームスを見出したのはバイオリニスト、ヨアヒム。
彼はブラームスを当時のクラシック音楽界で偉大なるベートーベン後の音楽界の覇権を競う時代の寵児リストと古典をベースに持論を展開する知性派のロベルト・シューマンに紹介し、ブラームスは(選んだ、ということは後でわかる仕組みだが)シューマン家に住み込み、師事することになる。
音楽を真に愛するシューマン夫妻はなんとかこの才能を世に出そうと無私の心で腐心し、音楽界の御意見番ホ―エンタ―ル伯爵夫人の夜会でデビューさせる。ピアノの教え子である令嬢ルイーゼに協力を仰ぎ、シューマン夫妻はブラームスを伴って出席。リストとシューマンのピアノ対決の場で、発作を起こしたロベルトの代わりにクララが演奏を始めると、心ない聴衆の噂話にブラームスは喧嘩沙汰を起こしてしまう。
クララのとりなしで今度はブラームスが自作を演奏。音楽愛好家の耳にその才能が届き、夫妻の思い通りにブラームスは成功への足がかりをつかむ。
一方、すでに病に心身を蝕まれていたロベルトは作曲もままならず、精神のバランスを崩し始める。
美貌と才能を合わせ持つピアニストとしてヨーロッパ中で引く手あまたのクララが演奏旅行で家計を支え、そんなシューマン家を支えるブラームスの心にクララに対する思慕以上の感情が芽生える。
クララのピアノの生徒である令嬢ルイーゼはブラームスに片思い。ブラームスの秘めた思いを察知した彼女は自身の懸念をロベルトに言ってしまう。
デュッセルドルフのカーニバルの夜、クララに告白するブラームス。
その言葉を耳にしたロベルトが川に飛び込み、一命を取り留めるが入院。
高額の治療費をねん出するため、クララは今まで以上に演奏旅行で家を開け、子守と留守番のためひきこもるブラームスを心配する友人たち。
ロベルトが亡くなって、クララは子供たちとベルリンへ、ブラームスは夫妻の力でもらった翼をはばたかせるためにウィーンへ向かうのだった・・・。

物語は、最初と最後に生涯独身を貫き、クララ没後一年でその生涯をとじたブラームスの家の始末をする老年のヨアヒムとルイーゼの思い出語りから始まり、最後もその場面で、入れ子形式で演出されています。
私的見どころを。

■麗しのクララ・シューマン
これは宙組2番手男役朝香まなと氏の主演作品、ではありますが、なんと副題なれどタイトル・ロールのヒロイン、池田銀行イメージガール(=TOP娘役候補)期待の95期伶美うらら嬢、ついにブレイク!
とこぶしを握って突きあげたくなる完璧なヒロインでした
もともと品のある長身の美少女で輪っかのドレスが似合うことは周知の事実だったのですが、今回の才能あるピアニストにして良妻賢母のクララ・シューマンがぴったりで。
耳隠しの落ち着いたアップヘアと美しいデコルテを出した演奏会のドレスがお似合いで、サテンのライトグレーの上品さ、真っ赤なドレスの艶やかさ、ともにこの品格ある作品にふさわしい華を添えていました。
演技も良く、ちょっとした視線や台詞回しも自然でクララその人。
一つ言えば、歌ですね。自信がないのか今一つ入り込めない、楽譜をなぞったような歌い方で・・。
演技に入り込んだ状態で歌に入ると、時々オッと思わせるのですが、途中から拙くなったり・・・。経験とレッスンでこれから良くなることを期待します。
夫役の緒月さんとも、ブラームスのまぁくんともリストの愛月さんとも 長身宙男との並びはいずれも綺麗でした

■舞台を締める緒月シューマン
病のために自分が自分であることが出来なくなる恐怖と闘いつつも、藝術にその身をささげ、妻を熱愛し、弟子に世に出る機会を与え、懸命に生きる役どころ。
古典をベートーヴェンを尊敬し、理論的に音楽に対峙するも、世はリストやワーグナーの新奇性に眩惑されて厳しい環境・・・。自身の内外にある苦悩を鍵盤にぶつけたような、ブラームスとのベートーベンのソナタの連弾シーンは圧巻。
それでいて、ルイーズのヨハネス(ブラームス)への愛に気付いた時の温かな励ましなど、随所に現れる人間味溢れる味わいが、ラストの、シューマンが亡くなった後のブラームスの独白、「シューマンの翼の下で憩うていたクララとヨハネス」につながるのかと。

■豪華すぎる音楽サロン
当時の金持ち、貴族が主催する音楽サロンでの活動で、スポンサーや世間の評価、楽譜出版、演奏会への道を得る音楽家。
その様子を活写した場面がなんとも豪華。
超絶技巧で貴婦人たちのアイドルとして熱狂的な支持を集めていたフランツ・リスト役の愛月ひかるさんがキザの極みのような曲芸すれすれの演奏スタイルを披露して
センターパーツで流したヘアスタイルもお似合いで、キャーキャー言って彼を追いかける御婦人方のお気持ちよくわかります。日曜日午前の回では噂の後ろ弾きも披露。観られて良かったです^^
それでいて、シューマンが倒れた後、精力的な演奏活動で家計を支えるクララ=昔の想い人との会話では、シューマンのために演奏会で彼の曲を取り入れたり、陰でサポートしていることが知れたり・・・と実は良いヒト?
クララとの会話「赤が似合う」「貸衣装ですわ」など、ツボな台詞が多く、脚本の力を随所で感じました。
もう1人の時代の寵児、ワーグナー役は春瀬央季さん。
ちょっと線が細いけれど美形であると、常に宙組ファンの一定の注目を集めている彼女がカリスマ・ワーグナーを。
登場時の音楽がワグネリアンならそうそうと頷く「ニーベルングの指輪」の”動機”を使っていたり、借金取りエピソードをまじえていたり(ワーグナーと借金取りはクラシックファンには鉄板のネタ)ツボをはずさない設定に拍手

■音楽界の重鎮「伯爵夫人」
クラシック音楽界の動向を見据え、作曲家たちに一目置かれるご意見番、ホ―エンタール伯爵夫人を宙組の歌姫、純矢ちとせ嬢が。常にゴージャスな白いドレスで、演劇的な敢えての時代がかった台詞回しと、この青年館公演主要メンバーただ一人(!)の歌姫としても存在感を発揮。
リストとシューマンの音楽対決を自らの夜会で演出。持病の発作で倒れたシューマンの代わりに演奏するクララへの人々の心ない噂話に怒ったヨハネスが喧嘩沙汰を起こす。その後クララになだめられてワルツを踊るうちに笑顔を取り戻すヨハネス。
その2人をテラスから見下ろしながらのせーこちゃん(純矢)のふくよかな笑みを湛えた台詞「おこりんぼうさんがクララと踊っている・・・」がなんともステキでした。

■ヨアヒムとルイーゼ
宙組新公で唯一愛りく(愛月ひかると蒼羽りく)の牙城を崩した、若手での3番手格にいる、あっきーこと澄輝さやとくん。「クラシコ・イタリア―ノ」新人公演での好演以来注目しているのですが、多分本人のバランス感覚の良い人柄が反映されるのか新聞記者役が続いていて・・・^^;
ちょっと物事を俯瞰で観る客観的な知性が持ち味、ということなのでしょうか?
今回の天才ヴァイオリニスト ヨアヒムも、酒場でブラームスの窮地を救い、シューマンとリストに紹介。最後はルイーゼとともに遺品整理をする・・・と、どこまでも控え目に、でも大事なポイントでサポートしている役どころ。
ルイーゼに惹かれながらも自由を愛するが故にプロポーズはしない、音楽界の新旧2大潮流どちらにも与しない・・と中立を保つ自由人。そこをブラームスに突かれると「だからこそ誰に本当の才能があるかわかるんだ!」と。
そのルイーゼはれーれ(すみれ乃麗)が。クララの才能と比較して自らの限界を感じる音楽愛好家の令嬢。ヨハネスに惹かれるが、クララしか見えていない彼をあきらめ 親の勧める縁談を受け入れる。
自分のことでいっぱいいっぱいになっているときにヨハネスの心がクララに向いていることをシューマンに告げてしまうキーパーソン。
ピアノでしか会話しないぶっきらぼうなヨハネスと、コミュニケーションを取るために隣に座って弾くのがシューマンの「クライスレリア―ナ」で、その演奏を「気が散っていることはわかる・・・Aの音を落としているしミスタッチが多い」と指摘されてしまうのもツボ
可憐な少女役がいつまでもハマる個性は貴重。珍しく遺品整理の場面で老女役に挑戦。花組の桜一花さんポジで長く活躍してもらえると良いなと思います。

■凛きらの「ベートーヴェン?」
役名が「ベートーヴェン?」なのです。
音楽室の肖像画のままのシルバーのライオンヘアで登場。
当時、交響曲で音楽の可能性を全て提示しつくして世を去った楽聖ベートーヴェンは、後に続く音楽家の心に乗り越えることの出来ない高すぎるハードルとして君臨。
ワーグナーが、最初に作った交響曲がベートーヴェンに酷似していたがために、その後交響曲を作らずオペラに専念したのは有名な話。その中で果敢に交響曲を作曲したブラームスは実は古典派のようでいて偉大なるチャレンジャーだったとも言えるでしょう。そういう意味で、本作品で象徴的なモチーフとして取り上げられているフレーズがブラームスの交響曲第3番第3楽章のものである、というのは感慨深いものがあります。
(わたくし自身はこのフレーズを聴くとセルジュ・ゲ―ンズブ―ルの「バビロン」を思い出してしまうのですが・・^^;)
芝居の雪組出身者らしく、知性的な芝居功者である中堅スターの凛城きら氏が この ブラームスⅡであり楽聖の幻でもある抽象的でやたらと迫力のある役どころでその力量を如何なく発揮。
力強い台詞回しでヨハネスを動かし、唐突に出てきてその場を席捲する存在感は素晴らしいものがありました。

■繊細な天才、青年ブラームス
そしてようやく(笑)主役語り・・・なのですが。
まず、このヘアスタイル(画像よりくしゃっとして柔らかそうで数倍ステキでした)がよくお似合い。
長い手足にクラシカルなスーツスタイルも良くお似合い。
ぶっきらぼうで、でも音楽への情熱と才能が周囲を動かして、子供に優しい青年の姿がご本人の持つ若々しい清潔感にピッタリで、次期TOPへの王手をかける大切な時期の主演作品としてよい出会いだったのではないかと

唯一つ、これは、御本人のせい、というよりは、音楽のせいかと思うのですが・・・。
物語の中で使われる演奏シーンやBGMとしてのクラシック音楽が素晴らしいので、(また選曲も良く、本当にハマっていました)、主人公の独白として作曲された新曲でひとりで歌い上げる場面、ちょっと休憩タイムにしてしまいました(←なんてこと!
いつもはワクワクなショータイムもテンション上がらず・・・。
ということは逆に、作品世界の世界観を壊さない、統一感のあるお芝居&ショーだったということかと思います^^
お芝居中も思ったのですが、娘役さんの抽象的な群舞のドレスがステキ。アシンメトリーなショルダーラインで裾幅をたっぷりととったドレープの裾から弧を描いて手もとに来る、オ―クル・ベージュやシルバーグレーのロングドレスでギリシャ神話の女神のよう。まさに芸術の女神たち、ミューズの饗宴・・・という風に見えて美しかった。
ステキと言えばクララとヨハネスのフィナーレでのデュエットダンス、決して触れあうことのない2人が、でも信頼しあって心を寄りそわせていることがわかる振付で、とても良かったと思います

タカラヅカ作品のファンの方には、独特のエンターテイメントとしての濃い味付けがないのが物足りなく感じられるようで、それもまた理解できますが、作品としてはテーマもしっかりとしていて、1人1人の登場人物が良く描かれ、しかも配役もピッタリ!という非常に良く出来た佳作でした。
DVDが発売されたら繰り返し観て、あの深い台詞を一つ一つ、また味わいたいものです。



ABT2014「マノン」

2014-03-03 03:18:38 | BALLET
2014年2月27日(木)18:30~
東京文化会館にて

≪マノン≫全3幕

振付・監督:ケネス・マクミラン
音楽:ジュール・マスネ
編曲:マーティン・イエーツ
舞台指導:ジュリー・リンコン、内海百合
舞台装置・衣装デザイン:ピーター・ファーマー
照明:クリスティーナ・ジャンネッリ
指揮:オームズビー・ウィルキンズ
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

<出演>
マノン:ディアナ・ヴィシニョーワ
デ・グリュー(神学生):マルセロ・ゴメス
レスコー(マノンの兄):ダニール・シムキン
レスコーの情婦:ミスティ・コープランド
ムッシューG・M:ヴィクター・バービー
流刑地の看守:ロマン・ズービン
マダム:ニコラ・カリー
物乞いの頭:アロン・スコット
高級情婦:ジェマ・ボンド,メラニー・ハムリック,ローレン・ポスト,
エイドリアン・シュルツ,カレン・アップホフ
女優:コートニー・ラヴァイン,小川華歩,ルシアーナ・ヴォルトリーニ,ポリーナ・ワスキー
紳士:アレクセイ・アグーディン,グラント・デロング,ルイス・リバゴルダ
客:トーマス・フォースター,ブレイン・ホーヴェン,ダンカン・ライル,ダニエル・マンタイ,エリック・タム
情婦:相原舞,アレクサンドラ・バスメイジー,ブリタニー・デグロフト,エイプリル・ジャンジェルーソ,ニコール・グラニエロ,ガブリエル・ジョンソン,ジェイミー・コピット,カッサンドラ・トレナリー,リーヤン・アンダーウッド,ジェニファー・ウェイレン,ステファニー・ウィリアムズ,リリー・ウィズダム
物乞い:ケネス・イースター,スンウー・ハン,ジョナサン・クライン,パトリック・オーグル,カルヴァン・ロイヤル,ゲイブ・ストーン・シェイヤー
老紳士:クリントン・ラケット
宿屋の主人:ガブリエル・ジョンソン
女中:ジェイミー・コピット
町の女性:コートニー・ラヴァイン,小川華歩,カレン・アップホフ,ルシアーナ・ヴォルトリーニ,ポリーナ・ワスキー
駐屯兵:ケネス・イースター,トーマス・フォースター,ブレイン・ホーヴェン,ジョナサン・クライン,ダンカン・ライル,ダニエル・マンタイ,カルヴァン・ロイヤル,エリック・タム

---------------------------------------------------------------------------
【上演時間】 約 2時間30分 【終演予定】 9:10p.m.
第1幕 40分 - 休憩 20分 - 第2幕 45分 - 休憩 20分 - 第3幕25分



今回のABT来日公演は「オールスター・ガラ」「くるみ割り人形」そしてこの「マノン」
ガラもちょっと気になりましたし、「くるみ割り人形」はラトマンスキー版ということで、きっと演出が楽しめるものに違いないと思ってはいたのですが、会場が苦手なオーチャードだったので回避。敢えて「マノン」に。
今回は、今、輝いているダンサーペア、ベテランにしてますますの円熟味と「美魔女」と称するのも違う別次元の年齢を超越した妖艶さと冴えわたるテクニックで独自の道を突き進むヴィシニョ―ワでチケットを取りましたが、今回のポーリーナ・セミオノワ&コリン・スターンズ、ジュリー・ケント&ロベルト・ボッレという他の配役にも惹かれました。
ポーリーナ組は若々しくてこの演目にぴったりだろうなぁと思いつつ、スターンズに思い入れがないのでパスしたのですが、なんと、レスコ―の愛人役にヴェロニカ・パールトがキャスティングされたと聞いてあぁ観ごたえがあったろうなxxxと。ケント&ボッレは、久しぶりにボッレを観てみたいかも、と思ったのですが、ケントは全盛期を知っているだけに、今敢えて選ばなくて・・と思ったら、なんと多分今回が最後の来日になるかも・・・と。
美しくてユーモアがあって、ダンサーとしてABTに在籍していた頃のマラーホフとは魂の双子のようで、ガラ公演の「グランパ・クラシック」など、沸かせてくれたなぁ・・・と懐かしく思うと共に、ウィーン、ベルリンと芸術監督を歴任し、今、東バの芸術顧問のマラーホフのその後のキャリアを思うと、ずっとABTのプリマ・バレリーナとして最前線で活躍してきた彼女にもそんなときが訪れるのもむべなるかなと。
「若さの芸術」と言われ、心技体が整う頃には体の部分が衰え始めると言う、旬を愛でる舞台芸術としてのバレエを長年愛でてきた身でも、やはり親しんだダンサーの引退にはその時々に心が波立ちます。

今回、仕事の都合で第1幕を観られず、第2幕、娼館の場面から・・・観た感想を。

オペラにおけるメトのごとく、クラシックで重厚な、ゴージャスな衣装と装置、ですが、ダンサーたちは・・・。
ロイヤルやシュツットガルトと比べると、物語の構成員、脇役の演技が雑・・・というか、現代人ですね。
芝居心の現し方がちょっとストレートすぎると言いますか。
その中で、ダントツの豊かな演技と技術で見せてくれたのはなんとシムキンくん!
しかめっ面はくしゃおじさん風?なれど、基本小柄な金髪の天使、といった風情の彼が濃いヴィシニョ―ワ様の兄??とキャスト表を見た瞬間、目を疑いましたが、酔っぱらいながらの超絶技巧、愛人に甘えたり、友人のために一肌脱いだり、全てが自然で実に良かったです
酔っ払い演技、そう言えば以前、自身のガラ公演での「ル・ブルジョワ」でも披露していましたね^^
愛人役のミスティ・コープランドは身長のバランスで相手役としてキャスティングされたのでしょうが、シムキンならもう一段階上のダンサーを配して欲しかったと思いました。

ヴィシニョ―ワは・・。
登場時のハッとさせられる美貌。男達にリフトされて・・のマクミラン的振付を涼しい顔でこなす様は圧巻。
パトロンのムッシュGM(ヴィクタ―・バービーの起用が嬉しい!)にもらったキラキラ輝くブレスレット。
彼女の愛を金で買う男たちからの代償の象徴のようなそれを、無邪気に喜ぶ彼女でしたが、彼女を追ってきたデ・グリューと逃亡しての2人の寝室では、彼がそれをはずさせて投げ捨てます。
そこに追手が。いかさま賭博を見抜いて怒り心頭のムッシュGM,うしろ手に縛ったレスコ―を射殺、マノンは捕えられ流刑地に・・・。
流刑先でも美しさで刑務官に目をつけられご褒美?のブレスレットをチラつかされ・・とちょっと象徴的に使われる小道具。
助けにきたデ・グリューが刑務官を殺害、2人で沼地に逃亡します。
力尽きて最後のデュエットの末に命を落とすマノン。デ・グリューの慟哭・・・で幕。
「マノン」と言えば第一幕、純粋な恋人どおしの2人の寝室での愛のPDDが有名で、なんどもガラコンサートで演じられる場面。これを観られなかったのは残念ですが、いかさま賭博で2人の逃亡資金を得て、の隠れ場でムッシュGM一派と官憲が踏み込むまでの2人のPDD、そして沼地でのPDDが素晴らしく・・・。
リフトされて垂直に屹立するヴィシニョ―ワの脚・・から、身体全体が完全に水平になり・・で一瞬止まってみえるのが凄くて^^;、そこかららせんを描いて降りるまでの一連の流れの滑らかさに驚嘆。マクミランが意図した以上のある種マクミラン振り付けの進化系パロディかと思ってしまうほど・・!!でした。
気持ちが入った演技のヴィシ、カーテンコールでも暫し目がうつろ・・・でしたね。彼女の全てが投入されたマノン、を見せていただきました。

マルセロ・ゴメスのデ・グリューは・・・。
彼の誠実な演技、安定のサポート、そして彼自身の迫力あるジャンプ、回転などは申し分なく素晴らしい。
・・のですが、いかんせん、見た目のガタイの良さが・・・^^;どうみても、おぼっちゃまな書生に見えないあたりがやや厳しいかと。金糸銀糸を折り込んだ重厚な衣装の娼館の客たちに交じって、1人淡いブルーグレーとアイボリーのコンビの衣装で清潔な若者として存在するときにはやや違和感?でしたが・・・。
3幕の流刑地からは本領発揮?!
このヒトにガードしてもらえば心配ないわ、という気持ちになりますね。港での哀れな女囚たちの踊りと彼女らに同情を寄せる人々の中で一際ついてきてもらえれば安心!なオ―ラを放っていたゴメス氏。
最後の大詰め、命尽きる前のろうそくの炎のようなヴィシニョ―ワ、倒れ込んだはずみでスカートが完全にまくれ上がってしまう気配を感じたゴメスが一生懸命、片手で直して彼女の腰を覆ってあげようとしていたところ、彼らしい誠実さを感じました。マノンを失った瞬間の慟哭も深かったです。

今回、沼地のシーンで、今までの主要登場人物が部隊後方で踊る・・という場面があり、それこそ死期の近づいたマノンの人生走馬灯・・・な演出で、これはABT版の演出かしら、と興味深かったです。