名医はすごい。ものの15分くらいで、結果を出した。腹部のレントゲンを見せて、「おなかのなかにできものがあります。この白い部分です」「がんですか?」「なんともいえないけれど、癌であるなら、もう末期に近いでしょう。一応覚悟しておいてください」
私はもう、目の前が真っ白になる。「今日、午後に手術をしますから、6時ころに結果を聞きにきてください。手の施しようがない場合はそのまま閉じることもあります。」
気が付くと、説明を聞いている私の横にるるが座っていた。きょとんとした表情をしている。言葉がでない。出てくるのは、涙だけだ。
手術をお願いしていったん帰宅する。帰りの高速道路では、何度も前が見えなくなるほど、泣いてばかりいた。昨日までそこで、るるが寝ていたところにるるがいない。
毎日、おもらしをされて、疲れていた。汚れたお尻を風呂場で洗った。何度も外に連れていき、おしっこもさせた。そんなことが続いていくと、いつかるるのことが面倒くさい、「重荷」に感じることもあった。
たかが、ペットの介護でさえ、こんなに苦痛なのに・・・人の介護ってどんなに大変なんだろうと思う。排泄のお世話だって、ペットなんてものじゃないだろうし・・・。食事のことだって時間がかかる。体重も重いし、身長だって高い。第一、意志がある。
あれこれ、あれこれ考える。今までのるるとの思い出ばかり、思い出しては泣き・・・ついに、目はシンプソンズのようになってしまった。
6時に病院につく。まだ、手術中で待たされる。そしてついに、手術後のるるに対面した。
結果は、胆石。胆のうに石がたくさんたまっていて、破裂寸前。その肥大した胆のうが白く映ってがんに見えていた・・・らしい。
がんじゃないんですか?るるは助かるんですか?
はい、もう大丈夫ですよ。
よかった。息子と喜びあう。目の前には、全身麻酔がさめきらず、悶えているるるがいる。でも、よかった。るるは助かる。
本当に名医に診てもらってよかった。
やぶ医者にかかって払ったお金、かけた時間、続いていたるるの苦痛を思うと・・・つくずくどういう選択をするかって大切だと思った。