デトロイトハーフマラソンを無事完走できた。
ミシガンはここ10日くらい、天候が荒れ気味で、雹が降ったり、雨が降ったり、雪が降ったりだった。私はといえば、練習をしなければ走れないような気がして、出来ないことに焦り、さらに授業で提出するエッセイの遅れ等、様々な要因が重なり、食事後の胃痛に悩まされていた。食べると痛くなる。出発の朝も、胃痛に襲われ動けない。結局午後の出発になり、受付も遅い時間になってしまった。正直不安で一杯だった。
でも、それを一掃してくれたのが、前日の受付の模様。様々な人たちがたくさん集まり、まるでお祭りのようだ。不安よりも、その中に居られる自分がとっても嬉しくなってきた。夕食には、軽くワインを飲み、イタリア料理店でパスタとシーフードを堪能する。連日の胃痛が嘘のようだった。
当日朝は7時15分スタート。ミシガンは、土曜の夜中に時間が一時間ずれる。夏時間から通常時間への変更。ガイドブックにも一時間遅れるよ!と太字で書いてあった。私も、一時間遅らせて!と思っていながら、一時間早く行ってしまった。結構、寂しいもんだなあと思っていたら、なんのことはない、とんでもないほどの人たちが集まってきた。スタートも同列に並ぶのではなく、ゼッケンに指定された場所でと、他のランナーに教えてもらった。13769 の S が私の番号。ゼッケンは国境超えのパスポート代わりだから、万が一のために覚えておくようにとの指示。語呂を考える。いさんでならんでろくなことなし。などど、つい悪い方に考えてしまう。いざなろう9ちゃんに!と、とんでもなく素晴らしい語呂を思いつく。ちょっとレベルが違うけど・・・。そしてポイントはS。後方出発。
いざ始まってみると、本当にたくさんの人たちの中に自分がいる。みんなで奇声を揚げ、拍手と、笑いの渦ができる。明るく楽しいアメリカ人たちに、こちらもにこにこと、力を抜いた走りが出来そうな予感がする。
カナダを目指す最初の関門は国境にかかる橋。デトロイトリバーは快晴で本当に美しい。しかし、風はきつく、高低差が激しい。でもこの地点くらいだと、みんな楽しそうに走っている。カナダに着くと、黄色いヘルメットのカナダのポリスがいた。カナダ側、デトロイトリバーの川縁を走る。川岸は公園になっている。対岸のデトロイトの近代的なビル街は朝陽を受けている。黄葉している並木。すべてが美しく、輝いているようだ。
バシ!と音がした。私は驚いて振り返ると、なんと黄葉した葉が一枚私の左の背中に当たって落ちた。え?音がしたよ。葉っぱが音を立てて背中に当たるなんて・・・。私は、母とシャロンが天国から私の背中を押してくれたのだと確信した。8マイルを過ぎた地点だった。
川岸に別れを告げ、国境のトンネルに入る。トンネルは交通が遮断され、ランナーだけ。反響の面白さに、皆で大声をあげている。私もこの際だからと、大声でなんだか叫んでみた。結構気持ちよかった。
米国側に帰りすこし走った地点が9マイル。残り4マイルはデトロイトの市街地を走る。廃墟のビル街も走った。デトロイトの暗さを感じた。と、途中で、一人の男性がいきなり倒れた。その頃から、歩く人、道路端で柔軟体操をする人と・・・様々なランナーの姿を見るようになる。応援に来てくれた人に歩みよって挨拶をしている律儀な男性、パートナー同士励ましあっている人たち。
私は快調に同じペースで走っている。結局、結構余力を残していたので、最後速度を速めスパートした。フィニッシュはフォードスタジアムの中、屋内だった。感動で、というよりは、着いたという、淡々とした気持ちだったかもしれない。涙もでなかった。ハーフだからあったりまえだけど。
走ってよかった。走ってきてよかったと感じている。マラソンは屈強な若者が強いわけでもないし、女性が弱いわけでもない。また、勝ち負けに勝るものがあるような気がしている。
今年のレースはこれで終わり。三回だったけど色々あった。来年は4月のハーフを最初のレースにしようと決めた。今日はいい走りだったし、いい経験だった。