ヒトリシズカのつぶやき特論

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科学技術振興機構は戦略的創造研究推進事業の「CREST」などの公募を始めました

2013年04月20日 | イノベーション
 文部科学省傘下の科学技術振興機構(JST)は戦略的創造研究推進事業の「CREST」「さきがけ」という研究制度で、今年度から始める新研究領域として8研究テーマを選び、その研究テーマ向けに研究提案を20013年4月18日から公募し始めました。

 以上のことは、大学や公的研究機関などの勤務する研究者(教員)の方には簡単に理解できることですが、一般の方にはそう簡単には理解できないものです。

 科学技術振興機構が推進している戦略的創造研究推進事業は、大別すると3つのやり方を持っていますが、その中の「CREST」「さきがけ」は、将来日本などの各国が必要とするだろう基礎研究テーマを、科学技術振興機構が議論の基に推測し、重要な基礎研究テーマを決めます。これによって、その基礎研究テーマ分野に研究者を集め、当該分野の研究を活性化します。

 その基礎研究テーマの推進リーダーを務める研究総括や副研究総括を務める研究者を決め、当該“大”研究テーマごとに、それを実現する具体的な研究テーマを公募します。逆にいえば、その大研究テーマに対して、各大学や各公的研究機関の研究員は自分なりの研究テーマを提案します。採用されれば、研究費が支給させるので、みんな真剣です。

 例えば今回、グリーンイノベーション領域では、「再生可能エネルギーからのエネルギーキャリアの製造とその利用のための革新的基盤研究の創出」という大研究テーマは「再生可能エネルギーを化学エネルギーの貯蔵・輸送の担体となるエネルギーキャリアに効率的に変換し…」と、大学や公的研究機関の研究者向けに内容が説明されています(おそらく一般の方にはよく分からない文章です)。これを読んで、主に日本の大学や公的研究機関などの研究者は研究提案書を書いて応募します。

 各大テーマの研究総括や副研究総括は、応募してきた大学や公的研究機関などの研究者を選びます。選ばれた大学や公的研究機関などの研究者には研究費が支給されます。大学や公的研究機関などの研究者にとっては、この研究費が当たるかどうは大きな課題です。「CREST」は大テーマごとに1年間に3000万円から1億円が、「さきがけ」は1年間に1000万円程度がそれぞれ支給され、合格した大学や公的研究機関などの研究者に分配されます。

 今回「CREST」「さきがけ」に採択された大テーマでは、両方にまたがる複合領域として「ビッグデータ統合利活用のための次世代基盤技術の創出・体系化」が注目されます。研究統括は国立情報学研究所所長の喜連川優さんです。





 同時に「CREST」として「分野を超えたビッグデータ利活用により新たな知識や洞察を得るための革新的な情報技術およびそれらを支える数理的手法の創出・高度化・体系化」という大テーマも推進されます。この研究総括は北海道大学大学院情報科学研究科特任教授の田中譲さんが務めます。

 最近は、社会にあるビックデータを利用したビジネスを始める企業が増えました。各ビックデータに隠れている革新的な知見や価値を抽出する、次世代アプリケーション技術を創出することを目指すそうです。遺伝子と疾患の関係の解明や海洋資源の探索、インフラの故障予測などに活用され、新しい価値をつくり出すそうです。

 科学技術振興機構が選び出した大テーマ分野に、日本の大学や公的研究機関の研究者が集結し、将来の基盤技術を築く計画です。現在、京都大学でiPS細胞を研究する山中伸哉さんも、こうして選ばれて研究費が支給され、最初はマウスでiPS細胞を可能にした研究者です。この当時は准教授で若い研究者でした。

 第二、第三の山中さんが次々と現れることを願っています。