2013年4月22日発行の日本経済新聞紙の夕刊一面に、「ベンチャー投資活発化 景況好転・株高受け」という記事が載っています。この記事を読んで、日本のベンチャー投資はやはり遅れていると感じました。
この記事によると、新生銀行やNTTドコモ、KDDI(au)などの大企業が、ベンチャー企業への投資を活発化させ始めたとのことです。アベノミックスによる景況感の好転や株高の影響を受けて、新規株式公開(IPO)市場が活性化しようとも期待感が高まっていることが背景にあるようです。
新生銀行が4月中に、16億円程度のベンチャー投資ファンドを設立し、通信大手のNTTドコモは今年2月に総額100億円の投資ファンドを、KDDIは昨年に総額50億円程度の投資ファンドを設けて活動していると報じています。
問題は、日本のベンチャー企業への投資額の低さです。この記事によると、成長中のベンチャー企業の投資総額の実例は最高で16億円、平均的には5億円程度になっているととのことです。これは創業後に投資を受けながら、その後の追加投資をあまり受けていないからです。ただしこの数字は、日本では例外的に多い実例です。ここが問題です。
日本のベンチャー企業の支援事業を続けている一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(VEC)によると、日本ではベンチャーキャピタル(VC)などの金融機関による投資額は、2006年度の2790億円を頂点に、2011年度には1240億円まで縮小しているとのことです。日本のベンチャー企業への投資総額は2000億円以下とみることができます。
この結果、日本の創業間もないアーリーステージのベンチャー企業に対して、数100万円から数1000万円規模と少額の投資が多いのが現状です。
これに対して、ベンチャー先進国の米国では、ベンチャー企業への投資総額は円換算で2兆円程度です(以下、日米の比較のために、円換算でご説明します)。日本の約10倍です。ベンチャー企業への投資額もこのスケールに比例して多くなります。創業直前あるいは創業直後のベンチャー企業でも、数億円の“準備金”が集まります。
米国のベンチャー企業への投資の仕方は日本と少し異なります。米国では、ある程度の資産を持つ“エンジェル”と呼ばれる個人投資家が最初のベンチャー企業投資の資金を受け持つことが多いようです。ベンチャー企業を創業したい若者(主に若者)は、自分の始める新規事業の特徴と既存事業への優位性を発表する場で説明します。
この発表会の聴講者として、エンジェルやベンチャーキャピタルの方が参加しており、優れた案に対して投資を決めます。「優れた案に対しては、平均的には3億円程度が集まる」と、米国カリフォルニア州の通称“シリコンバレー”の関係者の方に伺ったことがあります。
サンノゼ市周辺のシリコンバレーには、世界中からベンチャー企業創業の優れたアイデアを持つ若者が集まります。そして、毎月1回(数回)開催されるベンチャー企業創業案の発表会に臨みます。
ベンチャー企業を創業したい若者は、ある種の“インキュベーション”(孵化器)施設で、ベンチャー企業創業のアイデアを練り、発表会の場に臨みます。ここで勝ち抜くのは、かなり難しいために、ここで優れたアイデアが抽出されます。例えてみると、世界中・米国中からベースボールが得意な若者が集まり、大リーグのスカウトの前で腕前を披露するようなものです。成功例が成功確率を高めます。
逆に、ベンチャー企業を創業したい若者を探しているエンジェルやベンチャーキャピタルにとっては、ベンチャー企業の創業直前・直後の投資は、ハイリスク・ハイリターンですが、当たればかなり儲かります。こうした投資先をいくつか組み合わせて投資すると、その内の1社が成功すれば、残りが紙くずになっても、巨額のリターンが手に入ります。
例えば、米国Facebook社の創業前に、同社に投資して同社の初期の株を手に入れていれば、IPO時に巨額のリターンが入る訳です。こうした巨額のリターンを得たエンジェルやベンチャーキャピタルは、また次のベンチャー企業を創業したい若者に投資します。普通の株式投資に比べて、ハイリターンが得られます。うまく当て続けることが前提ですが。
今回の日本のベンチャー企業への投資額は、米国のシリコンバレーでいえば、創業直前・直後の投資額です。そしてここで大部分の投資が終わります。米国シリコンバレーでは、その後の追加投資は、ベンチャーキャピタルの役割となります。新規事業への設備投資が必要なケースは、数10億円の追加投資が必要です。日本ではここができていません。ベンチャー企業創業の成功例が確率論面で少なく、追加投資に踏み切れないからです。
日本での、この問題は例の“卵とニワトリ”の問題です。日本にはベンチャー企業創業のインキュベーション施設として有名なものがありません。日本全国から腕に自慢の若者が集まるインキュベーション施設がありません。ベンチャー企業創業の成功例を何とかつくり、優れたインキュベーション施設ができ、後に続く若者を集める場ができないと、この問題は解決しません。
日本経済新聞の今回の記事は、こうした背景説明がなく、初期のベンチャー企業への投資が始まったことを淡々と伝える内容でした。初期投資だけではなく、育成する追加投資を実行するベンチャーキャピタルが必要です。
この記事によると、新生銀行やNTTドコモ、KDDI(au)などの大企業が、ベンチャー企業への投資を活発化させ始めたとのことです。アベノミックスによる景況感の好転や株高の影響を受けて、新規株式公開(IPO)市場が活性化しようとも期待感が高まっていることが背景にあるようです。
新生銀行が4月中に、16億円程度のベンチャー投資ファンドを設立し、通信大手のNTTドコモは今年2月に総額100億円の投資ファンドを、KDDIは昨年に総額50億円程度の投資ファンドを設けて活動していると報じています。
問題は、日本のベンチャー企業への投資額の低さです。この記事によると、成長中のベンチャー企業の投資総額の実例は最高で16億円、平均的には5億円程度になっているととのことです。これは創業後に投資を受けながら、その後の追加投資をあまり受けていないからです。ただしこの数字は、日本では例外的に多い実例です。ここが問題です。
日本のベンチャー企業の支援事業を続けている一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(VEC)によると、日本ではベンチャーキャピタル(VC)などの金融機関による投資額は、2006年度の2790億円を頂点に、2011年度には1240億円まで縮小しているとのことです。日本のベンチャー企業への投資総額は2000億円以下とみることができます。
この結果、日本の創業間もないアーリーステージのベンチャー企業に対して、数100万円から数1000万円規模と少額の投資が多いのが現状です。
これに対して、ベンチャー先進国の米国では、ベンチャー企業への投資総額は円換算で2兆円程度です(以下、日米の比較のために、円換算でご説明します)。日本の約10倍です。ベンチャー企業への投資額もこのスケールに比例して多くなります。創業直前あるいは創業直後のベンチャー企業でも、数億円の“準備金”が集まります。
米国のベンチャー企業への投資の仕方は日本と少し異なります。米国では、ある程度の資産を持つ“エンジェル”と呼ばれる個人投資家が最初のベンチャー企業投資の資金を受け持つことが多いようです。ベンチャー企業を創業したい若者(主に若者)は、自分の始める新規事業の特徴と既存事業への優位性を発表する場で説明します。
この発表会の聴講者として、エンジェルやベンチャーキャピタルの方が参加しており、優れた案に対して投資を決めます。「優れた案に対しては、平均的には3億円程度が集まる」と、米国カリフォルニア州の通称“シリコンバレー”の関係者の方に伺ったことがあります。
サンノゼ市周辺のシリコンバレーには、世界中からベンチャー企業創業の優れたアイデアを持つ若者が集まります。そして、毎月1回(数回)開催されるベンチャー企業創業案の発表会に臨みます。
ベンチャー企業を創業したい若者は、ある種の“インキュベーション”(孵化器)施設で、ベンチャー企業創業のアイデアを練り、発表会の場に臨みます。ここで勝ち抜くのは、かなり難しいために、ここで優れたアイデアが抽出されます。例えてみると、世界中・米国中からベースボールが得意な若者が集まり、大リーグのスカウトの前で腕前を披露するようなものです。成功例が成功確率を高めます。
逆に、ベンチャー企業を創業したい若者を探しているエンジェルやベンチャーキャピタルにとっては、ベンチャー企業の創業直前・直後の投資は、ハイリスク・ハイリターンですが、当たればかなり儲かります。こうした投資先をいくつか組み合わせて投資すると、その内の1社が成功すれば、残りが紙くずになっても、巨額のリターンが手に入ります。
例えば、米国Facebook社の創業前に、同社に投資して同社の初期の株を手に入れていれば、IPO時に巨額のリターンが入る訳です。こうした巨額のリターンを得たエンジェルやベンチャーキャピタルは、また次のベンチャー企業を創業したい若者に投資します。普通の株式投資に比べて、ハイリターンが得られます。うまく当て続けることが前提ですが。
今回の日本のベンチャー企業への投資額は、米国のシリコンバレーでいえば、創業直前・直後の投資額です。そしてここで大部分の投資が終わります。米国シリコンバレーでは、その後の追加投資は、ベンチャーキャピタルの役割となります。新規事業への設備投資が必要なケースは、数10億円の追加投資が必要です。日本ではここができていません。ベンチャー企業創業の成功例が確率論面で少なく、追加投資に踏み切れないからです。
日本での、この問題は例の“卵とニワトリ”の問題です。日本にはベンチャー企業創業のインキュベーション施設として有名なものがありません。日本全国から腕に自慢の若者が集まるインキュベーション施設がありません。ベンチャー企業創業の成功例を何とかつくり、優れたインキュベーション施設ができ、後に続く若者を集める場ができないと、この問題は解決しません。
日本経済新聞の今回の記事は、こうした背景説明がなく、初期のベンチャー企業への投資が始まったことを淡々と伝える内容でした。初期投資だけではなく、育成する追加投資を実行するベンチャーキャピタルが必要です。