何故、ドナルド・トランプ氏はアメリカの支配階層に支持されなかったか:
この件については、トランプ大統領が候補者だった頃から「20年以上も勤務していたアメリカの大手企業の中では、先ず出会う事がない型の品位に欠けた企業社会の常識を知らない人物である」と言って批判し続けてきた。この点を補強する意味でも、嘗ての上司と同僚に加えて知人たちのドナルド・トランプ氏を嫌悪するとの弁も引用して伝えてきた。
さらに、アメリカの有名私立大学のビジネススクールの教員だった友人のYM氏が「彼の周辺にいる経済学者と知り合いの政治家たちの中には、トランプ氏の支持者などいない」と語っていた事も引用して、トランプ氏がそういう世界でどのように(低く)評価されているかも伝えてきた。このような言わばインサイダー情報は、余り我が国のマスコミが挙って採り上げるような性質ではなかったと思う。だが、歴とした事実である。
要するに「トランプ氏は知識階級やアッパーミドルクラスからは支持されておらず、人口から見れば圧倒的多数に近い非インテリ階層と労働者階級と恵まれざる少数民族等を支持基盤にしておられた」という事なのだ。私は1970年代前半に「アメリカの給与所得者で年俸が5万ドルを超えている者は全体の5%程度である」と教えられていた。故に、常に知識階級や高額な年俸を取っている層はアメリカ全体の精々5%だろうと言ってきたのだった。
ドナルド・トランプ氏はIvy Leagueの一校であるペンスルベイニア大学(University of Pennsylvania)の経済学部(Wharton school)の出身ではあるが、MBAは取得しておられない。という事は、歴としたアメリカの知識階級の方なのである。
それにも拘わらず、トランプ氏は大統領としての地位を固めていくのに伴って、本来の共和党の地盤であるインテリ階層ではなく、民主党の支持基盤だった労働者階層とそれ以下に向かって語りかけられるようになった、敢えて企業社会などでは絶対使う事を許されないswearwordの類いの下品な言葉遣いを厭わずに。私は「アメリカの大統領がそういう言葉を遣うとは、到底考えられない品位の欠如」とまで言って非難した。
だが、現実にはトランプ大統領の言葉遣いは労働者階級とそれ以下の層には受け入れられたのだった。何故かと言えば、今日までに繰り返して指摘してきた事で「トランプ氏の支持層には識字率に問題もあれば、英語を良く理解できていない者も多いのである」から、トランプ流のスピーチは彼らに良く通じたのだろう。アメリカの労働者階級には英語が解らない移民たちが当たり前のように属しているのだ。こういう現象は我が国では考えられないだろうと思うが、紛れもない事実だ。
しかも、南アメリカ等から流入した者たちは容易にアメリカでは正業に就けないのだ。2010年1月にLAのKorean townの(韓国)レストランでの経験では、ヒスパニックの者たちが雑役夫に雇われていて、客が食い残した残飯を賄い食として宛がわれていた。換言すれば、韓国人に雇用されて働き口を得ていたという事。これは譬え話であるが、そういう日の当たらない階層がトランプ氏の支持層になると言えば、解りやすいかと思う。
アメリカの人口は1990年頃から6~7千万人も増加していた。その増加分を支配階層やアッパーミドルクラスが占めている事などあり得ないだろうから、その増加分を占拠した連中がトランプ氏の支持基盤に加わっただろう事は、容易に推定できると思う。即ち、トランプ氏の支持層の人口は強化されても、減少する事は考え難いのではないか。
マスディアは「アメリカの二極化」と言い募る。だが、上層にいる人たちがトランプ氏支持派の対局を為す程数が多く、来るべき大統領選挙に影響を与えるとは、私には想像できない。昨日だったか、あるジャーナリストがリンドン・B・ジョンソン大統領(LBJとして知られていた)が1968年の選挙を前にして突如不出馬声明を出した例を挙げて「バイデン大統領にもその危険性があるのでは」と述べていたのは印象的だった。