箱田勝良氏は別な視点からカタカナ語の問題点を指摘された:
(筆者の言い訳;いくつか恥ずかしい誤りがあったので、遅まきながら“Better late than never.“の考え方に基づいて訂正する次第。気が付いた方はおられたでしょうね)。
昨日も取り上げたことで、「株式会社イーオンの箱田勝良氏のカタカナ語化されたラグビーの『反則』の表現の問題点の指摘」には大いに勉強させられた。あらためて、少し長くなるがその当方の関心を引いた辺りを引用してみると、下記のようなことだった。
>引用開始
スロー・フォワードは、英語ではForward passと言い、直訳すると「前方へのパス」という意味です。もしも英語でレフリーがThrow forward!とコールをすると「前に投げなさい!」と、真逆のことを指示しているように聞こえてしまいそうですね。
ノック・オン(Knock on)は英語ではLost forwardと言うこともあります。knockは「たたく」「当たる」という意味で、onはonward(前方へ)という意味ですので、「前にはじく」という感じの意味でしょう。Lost forwardは「前方に落とした」という感じに聞こえます。
ノック・オンは、パスを受け取るときにうっかりしてしまうことがありますので、プレーヤーは体を前方ではなく、横に向けてパスを受けることもあるそうです。そうすれば、万が一ボールを落としても前方にいかず、ノック・オンになる可能性が低くなるらしいですね。
スロー・フォワードのほかにも、日本で使われている表現と英語の表現が異なるものがあります。ラグビーでは「ボールを持っているプレーヤーは、タックルをされて倒れてしまったときには、ボールを離さなければいけない」というルールがあるのですが、これを破ると「ノット・リリース・ザ・ボール」という反則を取られます。英語で書くとNot release the ballで、「ボールを離さない」というのをそのまま英語にした感じですね。
でもこの反則が起きたとき、実際に英語ではRelease the ball(ボールを離しなさい)とコールされます。Not release the ball!と言うと、Don’t release the ball(ボールを離してはいけません)みたいに聞こえなくもないですよね。先ほどのThrow forwardと同様に反対の意味になってしまいそうです。和製英語では、プレーヤーが行なっている行為を英語にしているのだと思われますが、これが命令形のように聞こえてしまうと「その反則をしなさい」という意味になってしまうのが厄介ですね。
「ノット・リリース・ザ・ボール」はHolding on(ノット・リリース・ザ・ボール)Held on(ノット・リリース・ザ・ボール)とコールされることもあります。これは「(ボールを)持ったままの状態です」、「(ボールを)持ったままの状態でした」という意味です。日本語でもこちらをカタカナにして使用したらよかったのですけれどね……。あ、でもHold on!と命令形になってしまうと、「(ボールを)持ったままでいなさい!」となってしまうので、同じことですね。
<引用終わる
ラグビーという競技と、英語の専門語の両方か、または何れか一方に関心を持っておられる方には興味深いというか、面白い話題の取り上げ方だと思って読んだ。と言うのは「スロー・フォワード」(=throw forward)を“forward pass“としなさいであり「前にパスしなさいとなる」と言っておられる点は、私ならば”throwing forward“と言わないことには文法的に誤りであると主張するところだ。
次には「ノット・リリース・ザ・ボール」(=not release the ball)では「ボールを離さないで」と命令していることになるとの指摘。私は長年“not releasing the ball“とすべきである「文法的な誤り」だと考えて、おかしなカタカナの用語だと批評してきた。箱田氏の説には「目から鱗」とまでは言わないが、「そういう見方があるとは」と感心して勉強になった。
私の年来の指摘は「多くのカタカナ語になった熟語には英語の語順を離れた日本語の表現を使っていると、英語の文法から見れば誤りなのに、それに気が付かない程深く英文法が理解されておらず、無視してしまうのが宜しくない」という事だった。その例として屡々取り上げてきたのが「ヒーローインタビュー」だった。
この熟語は最早完全に日本語としてテレビ局が日常的に使っているが、英語ならば“interviewing the hero“としたいのだ。即ち、インタビューするのはアナウンサー辺りなのだが、「ヒーローインタビュー」では「ヒーローが誰かをインタビューするという形になってしまっている」のだ。箱田氏の指摘にも似通っている。これは「我が国の英語教育の至らざる点の一つ」であろう。
次に先人の工夫の跡が見える例として「オーダーメイド」(英語で書けばorder made)を取り上げたい。これも非常に良く出来た造語で「注文服」か「受注での製品」を表していると思う。日本語として通用しているから「使いなさんな」などと野暮は言わない。英語は“custom made”か“tailor made”か“made to order“辺りだと思う。
そして、私が最も気に入っている何度か取り上げてきた「笑えない誤訳」の例を挙げておきたい。それは「ヒーローインタビュー」でホームランを打ったアフリカ系の選手に向かってアナウンサーが「ホームランを打ったボールはどんな球でしたか」と尋ねた。通訳さんは“What kind of ball did you hit homerun?“と躊躇わず訳した。ここまでで「何が言いたいのか」をお分かりの方はおられると思う。
アメリカ人の選手は「ニヤリ」と笑って“I think it was not a football but a baseball.“と答えたのだった。アナウンサーは「球種」を尋ねたのだったが、通訳さんは「ホームランを打った球」を日本語の用語の球の通りに“what kind of ball”としたので「フットボールではなく、野球のボール」と意地悪をされたのだった。アメリカでは「球」は“pitch“が普通で“Here comes the delivery.“などという言い方もあった。
最後に矢張り文法的な揚げ足取りと言われそうな問題を。フットボールでもラグビーでも相手が投げたパスを横取りすることを、こちらでは「インターセプト」と呼ぶのが一般的だ。だが、アメリカで聞こえてくるのは“interception“と名詞形なのだ。それも当然で「インターセプト」(=intercept)は動詞形なのだから。同様に「インターフェアー」は一寸難しい“interference“という名詞で言うのが文法的に正確だ。
因みに、箱田勝良氏は株式会社イーオン法人部企業研修教務コーディネーターである方とネットで知った。また株式会社イーオンはスーパーマーケットのイオン(AEON)とは別個の企業である。