新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

冷静なる評論家が「大谷翔平」を観察すると

2024-05-08 07:34:56 | コラム
漸く「大谷翔平」を取り戻したようだ:

先月に都内の某強豪高の野球部OBと語り合った際の要点は「大谷翔平を褒めそやし騒ぎ立てるのを止めよ」と「あの下からしゃくり上げるようなスゥイングではボールの下を叩くので上がっていかないから、強い当たりでもホームランにならない。大谷はそれくらい承知しているはずで、何れは修正するだろう」だった。そのしゃくり上げ打法を中々解消できず、打点が少ないことまで持ち出された。

その大谷がDodgersに移籍して、リーグ戦が始まって早くも足かけ3ヶ月だ。漸く本来の大谷翔平を取り戻せたようで、打率・本塁打数・OPS(だったか)等々が両リーグの最上位に来て、何とかMVPも獲得するところまで上がってきた。テレビ風に言えば「絶好調」なのだが、それは誤解であり、誤認識であり、大谷に対して失礼な言い方だと断じる。好調なのではない、あれが大谷本来の姿なのだ。

その最も良い形が現れているのは、私の目には「スゥイング」がしゃくり上げるのではなく、昨年の恐ろしい程早かったバットの振り方に戻っているし、フィニッシュというかスゥイングの後半が「しゃくり上げ」ではなく、見事に超高速で水平に回って、ボールの下を叩いているからホームランが出るようになったのである。

しかも、先頃認めたようにアウトサイド攻めに苦しんでいた状態からも脱却して、鮮やかに反対方向に打つようになっていた。この点は修正したのではなく、努力して切り開いた道なのだろうが、大谷にアウトサイドをあのように打たれては、投手たちは為す術を知らない状態になっているだろう。新球団に移籍して前後をMVP獲得の打者に囲まれてはアメリカン・リーグのMVPとしては、圧力は感じていたし、超高額の年俸に見合う実績を残さねばという精神的な負担もあったのではないのか。

偽りの無いところを言えば、私はナショナル・リーグに移り強いDodgersに入った大谷が好成績を残せれば良いと期待してはいるが、多くのテレビ局程の熱狂的な応援団でもファンでもなく、静かに100年に一度かそれ以上かも知れない凄い選手のプレー振りを楽しく見ているだけだ。その大谷の2日の休息後のホームランを打った時に見せる凄まじいばかりの精神集中からは、往年の王貞治の真剣で藁の束を切っていた修行にも似た精神力を感じた。

「何故そういう事を言うのか」なのだが、大谷の前後を打っているベッツとフリーマンのバッテイングと野球をやっている姿勢からにじみ出ている「自分の生業としてのbaseballに集中しているのは解るが、彼等も集中しているのは間違いないが、それを楽しんでいるかのように感じさせられる」のだ。換言すれば「野球に集中する緊張感を楽しんでいる」のではないかという事。

話は変わるが、彼等アメリカやヨーロッパのプロのゴルファーたちがパッティングの際に見せる「そんな難しいパットを入れてしまうのか」と感心させられる集中力(concentrationで良いかと思うが)の凄さにも良く現れていると思う。大谷は矢張り日本人の野球選手なので、一分の隙も無い精神集中力を見せているように感じるのだ。今や完璧にボールを叩けるような形が出来て、精神の集中の両輪が揃った状態にあると見ている。

問題はこの「隙がない形」と「緊張感の高まり」の集中力を何処まで維持し続けられるかではないだろうか。それは容易なことではないと思う。単に身体能力を可能な限り高めておけば良いという性質ではあるまい。故に、ロバーツ監督が大谷に2日間の休養を与えたのは素晴らしい判断と指導方針だと思ってみている。ロバーツ監督は「野球も技術か精神力の何れか一方だけでやっていられる競技ではない、特に大谷は」と慧眼にも見抜かれたのかと、密かに敬意を表している。

冷静なる評論家としては「大谷翔平が超高度の技術と鋼の精神力を維持し続けて、ナショナル・リーグでの優勝を経験し、MVPを獲得できれば良いがと期待している。World Seriesに勝てるかどうかは別な問題かと思う。