新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

1月28日 その2 Job offerがある国

2017-01-28 08:28:44 | コラム
文化が違う国を自国と同じだと思って頂きたくないので:

私はここ数日間、あらためて我が国とアメリカのビジネスの世界での文化の明らかな違いを語ってきた。それはマスコミが“job”を「雇用」と訳すのは誤解を招くと思うことから始まった。また英語かと思われても良いから講釈を言えば「この両者は“different animal”なのである。それが文化の違いだと言いたかったので、標的は飽くまでもマスコミだった。

そして、ここまで言ってきた以上、我が国にはない、あり得ない違いの解説を以て、この議論の締め括りとしたい。それはアメリカのビジネスの世界には“job offer”という言い方があり、上司や同僚からほぼ日常茶飯事であるかのように「君は何処か他社からjob offerを貰っていないか」と尋ねるのだ。即ち、「君は何処か別の会社から転身せよと誘われているか」と真っ向から尋ねているのだ。

「そんな失礼なことを良くも訊くものだ」と思われるか呆れる向きもあるだろうが、これがアメリカのビジネスの世界なのである。周りを見回せばほとんどが即戦力として途中入社してきた者ばかりである以上「君は前に何処の会社で何の仕事をしていたのか」と尋ねるのは非礼でも何でもないし、現に私は何度も訊かれたものだった。そういう世界であると言うことは「その者がまた何処か同業者か他業種に転進していく可能性(危険性)の有無を上司は把握しておく必要があろう」というもの。

そういう他社からかの勧誘を“job offer”と呼んでいるのであり、それの一つや二つないようでは大した奴ではないという評価にもなってしまうことすらあるのだ。換言すれば「一度転進したからには二度目も三度目もあって不思議ではない」と見なす世界だ。これは「雇用」の機会ではない。「そういうチャンスがある」と思えば解りやすいだろう。同業他社でも競合する相手の会社の腕利きが誰であるかくらいは先刻承知だし、彼または彼女が持つ営業の地盤ごと引き抜くことだってあるのだ。

但し、好条件で転進して行った場合の“job security”には非常に微妙(危険?)なものがあり、高額な年俸に見合うだけの実績を挙げない場合であるとか、売り込んだ評判通りでなかったような際には即座に失職が待っているのもアメリカである。この辺りが私が言うjobに内在された「雇用」の難しさである。アメリカのビジネスの世界には“job offer”という仕組みもあるのだとご承知置き願えれば、この一文を草した意味もあると思う。



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