杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

想定外の試写会

2008-12-16 11:14:47 | 吟醸王国しずおか

 昨日(15日)は、久しぶりに『吟醸王国しずおか』予告パイロット版の試写会を行いました。Imgp0216_2 集まったのは、なんと静岡税務署のみなさん。過去の試写会参加者から「学生に見せたい」「社員研修に使いたい」なんてリップサービスをもらったことがありますが、実際に実行したのが税務署さんだったというのは、びっくり想定外!でした。

 

 きっかけは、以前からこのブログを読んでくれていたという名古屋国税局の内川正樹さん。もともと静岡出身で、静岡税務署への出向を機に、静岡酒の素晴らしさに個人的にも覚醒し、税務署員とは思えないフットワークのよさで、各蔵元を回っている熱血署員です。

 

 以前、酒造組合の会合で顔を合わせたときは、背広にネクタイ姿で、いかにもおカタイ税務署員風情で、蔵元の話をじっと見張っているという、ちょっとビミョ~な印象でした。

 

 ところが、夏ごろ、私が自分のノートパソコンを酒浸しにして、映画の記録写真をオシャカにしたかも、とブログに書いたところ、真っ先に「パソコン修理人を探すから!」「鈴木さんが撮る写真は酒造業界の宝ですから!」と熱いメールをくれた読者Mさんが、内川さんだったと知ってびっくり。

 8月末のパイロット版初お披露目の時は、上司の静岡税務署酒類担当官・村松勝義さんを伴って来てくれて、2人から「よくぞ撮った」と力強いお褒めをいただきました。

 

 2人とも、県内の酒蔵事情に精通していて、ファンや消費者とは違う目線で静岡酒の現状分析や課題などにも一家言持っているだけに、「撮った映像を全部観てみたい!」「麹室の中には我々もめったに入れない。その大吟醸の麹造りをカメラに残したことがいかに難しく、価値あることか」「全国新酒鑑評会のあり方にも一石を投じる貴重な映像だ」等など、私がさんざん苦しんできたことを、瞬時に理解し、評価してくれたのです。

 

 9月に酒販店主催のイベント会場で流したときは、途中で「何だこの映像は」「何を言いたいのかさっぱりわからん」とつっかかってくる酔客もいて、腹の中で泣きたい気持ちをグッと抑えたりしましたが、内川・村松両名の感想と、その後、こうして、職場の仲間を集めて鑑賞する場を作ってくれたことに、心の底から救われた思いがしました。

 

 

 

 昨日は、静岡税務署の松井公一署長、村田千英子副署長以下、15名の署員の方々が、業務が終わった後、静岡市クリエーター支援センタープレゼンテーションルームに移動し、2回続けて鑑賞してくれました。

Imgp0218_2

 1回目はふつうに上映し、2回目は村松さんが解説しながらの上映。まるでオーディオコメンタリー付きの特典映像を観ているみたいで、面白い試みでした。

 村松さんが、自分が撮ったかのように上手に解説するので、私はまったく口をはさむ余地なし(苦笑)。パイロット版はナレーションが入っていないので、解説を交えて観てもらうのもいいかもしれません。

 

 

 「組合の会合でも、じっと聞いているだけというのが辛い。静岡吟醸のために自分ができることがないか、つねに模索しているんです」と内川さんは言います。

 

 そんな税務署員が静岡にいて、映画制作にも期待をしてくれる・・・今までの酒業界vs税務署の構図が、静岡では変わるかもしれない、なんて萌し(きざし)を感じた、素敵な夜でした。