クリスマス前夜、いかがお過ごしですか?
私は、個人的には仏教や仏像が好きなんですが、ミッションスクールに通っていたのでクリスマスは真面目?に聖書読んだり讃美歌歌ったりしてました。高校時代は(優勝すると栄えあるクリスマス礼拝の合唱の舞台に立てる)クラス対抗讃美歌コンクールに燃え、うちのD組が優勝間違いなし!の下馬評だったのに、ライバルC組に負けてしまい、ピアノ伴奏者だった私は責任を感じ、指揮者&クラスメートと肩抱きあってワンワン泣いたり、なんて、スポ根青春ドラマみたいな思い出が甦ってきます。
そんな初々しいクリスマスの思い出から、30年近い年月が経ち、今のこの時期といえば、飲み会飲み会また飲み会。今年はとくに多くて、酒の消費拡大に貢献できているとはいえ、胃と肝臓がヘロヘロで、昼に食べた大好きな京都のラーメン屋「第一旭」のスープの味がわからなくなっていてがく然…!マッサージ屋のお姉さんには「肝臓がコリコリでやばいですよ」とダメ出しをくらいました。気をつけてはいるんですが、この2日間、スルーできない美酒や楽しい仲間たちとの集いが続き、体調そっちのけで盛り上がってしまいました。
一昨日(21日)は、昼間、中島屋ガーデンズ(静岡市駿河区)で、NPO法人活き生きネットワークのクリスマス&忘年会。100人以上集まっての歌ありクイズあり大道芸パフォーマンスありの楽しく健全なパーティーでした。小さな子どもや外国人留学生が主役で、酒をがぶ飲みするような参加者はいないので、私はビール2杯程度でおとなしくしてました。
夜は、大学生が主役の天晴れ門前塾第2回課外ゼミ。前回、「吟醸王国しずおか」パイロット版を観たあと、「早くいろんな地酒の味見がしたいです」という学生たちの希望を汲み、今回は実習(試飲)です。といっても、ただ呑ませるだけじゃ芸がないので、呑み方・呑ませ方を口で説明するのではなく実践して見せる。それも、地酒を愛する大人たちがちゃんと見本を見せたいと思いました。
地酒に対して真っ白な状態の若者たちに、最初に伝えたいのは、カルチャースクールや資格取得のための講座などでよくやる、きき酒の解説や味の表現方法ではなく、地酒を体で感じるということ。そして、いい呑み方・幸せそうな呑み方をする大人を見て、酒っていいなって感じること。とにかく酒との出会いを愉しむ会にすることが、今回のテーマでした。
そんなこんなで、急きょ、吟醸王国しずおか映像製作委員会のメンバーに声をかけ、忘年会を兼ねることにしたんですが、日にちが固まったのが1週間前だったので、集まったのは大人8人、学生4人。まぁ、考えようによっては連休はざまで、大人がよく8人も集まったと思うし、会場の地酒Barイーハトーヴォ(岡部町)の規模からして適正な人数でした。
というのも、松下明弘さんが、喜久醉純米吟醸松下米50デビューの1999年ビンテージ、翌2000年ビンテージ、純米大吟醸松下米40の2000年ビンテージを持参してくれたから! 私も自宅冷蔵庫に何本かビンテージをストックしてますが、いつ開けるか、なかなか判断がつかないところ、さすがは変人・松下明弘! 地酒をまともに呑むのが初めてという学生に、惜しげもなく呑ませてくれました。そのおこぼれにありつけた我ら酒呑みの喜びようといったら…。参加者が少なくてよかった~(笑)。
99年モノは少し老香が来ていたものの、2000年モノはまったくブレのない輪郭がしっかりした酒。松下さん曰く「コメの出来の差」だそうで、99年(98酒造年度)は異常気象の影響で全般にコメが悪く、どの蔵元も苦労していたのを思い出します。10年経ってもなお、こうして酒にその影響が記憶されるんですね。2000年(99酒造年度)の完璧さと比較すると、いっそう解ります。これを最初に試すことができた学生は、なんて幸せなんでしょう!!しかも、松下さん本人の解説つき。
思えば、私が最初に静岡吟醸に出会ったのは25歳のとき。最初に呑んだのが、今は磯自慢杜氏の多田信男さんが志太泉の杜氏だったときの、静岡酵母HD-1絶頂期の味でした。
日本酒嫌いの人の多くが、最初に飲んだ酒がまずかった、飲まされた、いい思い出がないという話をするのに比べ、自分は幸せだなぁ、静岡酒ファンの中で自分が一番幸せなんじゃないかなぁと思っていたのに、松下米の99年・00年・08年をいっぺんに飲み比べできた学生たちは、私の幸せ度を超えたな、と思わず嫉妬しちゃいました。
急な召集にもかかわらず快く応じてくださった日本銀行静岡支店長の武藤さんも、「実は喜久醉が一番好き、今日ほど幸せな夜はないねぇ」と終始、表情を崩しっぱなし。武藤さんは昨年、天晴れ門前塾の講師を務めた経緯もあり、今年度の担当学生たちが地酒ゼミを企画をしたことを頼もしく感じているようでした。
他の吟醸王国しずおか映像製作委員会メンバーも「地酒に興味がある若者がいるってうれしいねぇ」「うちの子と同年だけど、みんな価値観がしっかりしていて頼もしい、うちの職場にスカウトしたいぐらい」「まさか今夜、松下さんと呑めるとは思わなかった、ラッキー」と喜んでくれました。
イーハトーヴォの店主後藤さんなんて、最後にバラの花束まで用意してくれちゃって、「こうして地酒応援団が増えていくのが幸せ」とご満悦。
後藤さんには、6月の静岡伊勢丹吟醸bar出展を依頼し、こちらがさんざんお世話になったのに、今回も酒持ち込みをずうずうしくお願いし、申し訳ないぐらいです。
オトナたちが、あまりにも今夜の酒に興奮し、幸せそうに呑むを見て、学生たちも、味がどうこういうよりも、「いい酒は、人を楽しくするものだ」「みんな、あんなにありがたがって呑むんだから、今夜の酒は並みの酒じゃないらしい」と感じてくれたと思います。「とりあえず参加してみて損はなかったかも」とね。講座みたいに知識を植え付けるよりも、こういう空気を体感してくれるほうが、大きいと思うんです、たぶん。
少なくとも、彼らの中は、2008年のクリスマス前夜に、日本酒ばかりだけど楽しくていい出会いがあったという記憶が、確かに残ったはずだ、と思います。この夜呑んだ酒の本当の価値、松下さんはじめ出会った人たちのスゴさがわかるまで、まだまだ時間がかかるかもしれないけど。