杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

宮古島生モズクヌーボー2012 in 藤枝

2012-05-08 18:24:54 | 地酒

 またまたGW前の古いネタですみません。4月28日(土)、おもひで横丁・藤枝市場で開かれた『モズク・ヌーボー2012』という試食会に参加しました。夕方の情報番組・静岡○ごとワイド(静岡第一テレビ)の秋本キャスターが取材に来ていましたので、ご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、沖縄県宮古島産の今年の初摘み生モズクを味見しようというイベント。なぜ藤枝で、というと、藤枝市の機械メーカー・西光エンジニアリングと宮古島漁協が新しいモズク処理工法を開発したご縁です。

 

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 モズクってほとんどが塩蔵タイプで、塩蔵から加工(酢漬け等)にしたものが一般的です。西光エンジニアリングさんも、もともと塩蔵モズクの全自動機械を造って漁協に納めていたのですが、塩蔵品はその名の通り塩分が高く、水洗いすると、抗酸化作用があるといわれる硫酸化多糖類・フコダイン(海藻等でおなじみヌルヌル成分)が一緒に流れてしまいます。

 モズク本来のヌルヌル栄養分&減塩食を必要とする消費者のために、なんとか塩蔵せずに生のまま商品化できないかと、メーカー&生産者(漁協)が試行錯誤をし、実現させたのが、『宮古島生モズク』だったんですね。

 

 

 

 生モズクは前年から保管していた種を11月下旬~2月にモズク網に種付けし、おだやかな苗床で芽出しを待って外海に出し、自然の海の中で70~80日成長させます。そして4~5月末に新芽を摘み取って商品化したのが、“初摘み生モズク=モズクヌーボー”というわけです。

 

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 今まで居酒屋さんの付きだしなんかで食べていたモズクは、ぬるぬるだけど水っぽくって、モズクってこんなもんか、と思っていたんですが、初めて食べた生モズク、そうめんのように付け汁でいただくんですが、本当に硬めにゆでたそうめんのように歯ごたえがあって新鮮な食感!塩蔵モズクとの成分比較表を見ると、フコダインは2~3倍、カルシウムは3倍、マグネシウムは12~13倍、カリウムは50倍と、ミネラル分が大幅に増えていることがわかりました。

 

 

 

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 西光エンジニアリングでは持ち前の技術を活かし、宮古島漁協と組んで、宮古島ならではの海の幸を鮮度を保ったまま全国へ流通させようと、窓口となる販売会社・沖友を設立。宮古島と藤枝の特産品を双方で販売するチャンネルを作りました。現在は海ぶどうの養殖プラントを造り、建設業から脱サラ転職した人々に“新たな糧”を与えているとのこと。今、全国で進められている農商工等連携事業=六次産業の成功例として、高く評価されています。

 

 

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 それだけではありません。モズクヌーボー2012には、宮古島市の長濱副市長、農林水産部の亀濱課長、観光商工局のスタッフ3人が、わざわざ駆けつけてくれましたが、藤枝市とすっかり行政レベルで連携が出来上がり、この日からスタートした藤枝蓮華寺池公園の藤まつりに、宮古島物産ブースを出展。さらには、藤枝市と宮古島市で防災協定を結び、大地震等で市役所の機能に障害が生じた場合のリスク対策として、重要な行政データのバックアップをお願いすることまで話が進んでいるそうです。

 

 

 地方の中小メーカーのビジネス交流が、ビジネスの域を超えて地域間連携にまで発展した、という意味では、非常に注目すべき事例ですね。この日は国の中小企業基盤整備機構、藤枝市、静岡県、県商工会連合会、県会議員、市会議員等をはじめ、この事例を学ぼうと浜松市役所や磐田信用金庫の職員、実際に宮古島生モズクの販売を始めたしずてつストアやKOマートのバイヤー等も集結。みなさん、ホント感心してました。

 私は静岡第一テレビの女性社員さんとともに地元呑ん兵衛代表?で加えていただき、貴重な初摘みヌーボーと、モズクを使ったエダバ(藤枝市場)の創作料理を堪能させていただきました!

 

 

 試食会がひと段落した後は、地酒を交えての交流会。宮古島独特の乾杯スタイル・オトーリを初体験しました。

 

 

 

 オトーリというのは“お酌”という意味だと思いますが、決まった作法があるんですね。まず親(宴会リーダー)が立ちあがって口上を述べて一杯グイッとやった後、同じ杯に酒を注ぎなおしてとなりの人に渡します。

 注がれたものは無言でその杯を飲み干し、無言で杯を親に返す。親は、返された杯に、再度酒を注ぎ、先程飲み干した人の次の人に杯を渡す。杯を渡された人は、同じように一口で杯を干し黙って親に杯を返す。杯が一巡するまで繰り返し、親一人手前の人が杯を干したら、その杯へ酒を満たし、親へ返杯する。

 

 親はその返杯を飲み干した後、自分に酌(オトーリ)最後まで付き合ってくれた礼を述べ、最初の「口上」で述べ足りなかったことがあれば付けくわえ、シメの挨拶を行います。・・・でこれで終わりじゃなくて、次の「親」を指名し、同じオトーリを繰り返す。そうやって延々呑み続けるわけです。親以外は黙って延々呑まなきゃならないというのが面白いなあwww しかも、ひとつの杯を回し呑み。酒に弱い人や女性にはハードルが高そうだけど、これも大家族や共同体での絆が強い島の暮らしの良さなんですね。

 

 

 「親」の番が回って、エラそうに「鮮度の良い生モズクは、軽快でフルーティーな静岡の地酒にぴったり」と講釈を述べ、エダバにある藤枝の地酒4種を宮古島の方に勧めたんですが、途中からチャンポンになってしまったwww  怖いけど一度、本場宮古島で体験してみたい! とりあえず今はいただいた宮古島観光資料を眺めてガマンです。

 

 

 宮古島生モズクはしずてつストアやKOマートで販売しています。数はそんなに多くないと思いますので、見かけた時はぜひお試しを!