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凍りついた香りー小川洋子

2022年03月18日 | 読書
評価5

自殺をした弘之は香水工房に勤める料香師だった。弘之の面影をたどる涼子は彼が高校数学コンテストへ出場した地プラハへ飛ぶ。香水「記憶の泉」、孔雀の番人、チェロを弾く子、ベルトラムカ荘、モーツァルト交響曲第38番の数々のキーワードが紡ぎ出す小川ワールド。

なぜ無水エタノールを飲んで弘之が死んだのか、数学コンテストの時の毒入りコーヒー事件の真相など、謎のまま物語は終わるのだが、そこが小川洋子の主題ではなく、動かしえない死というゴールへ向かう人々の小さな小さな営みを丁寧に淡々と、精緻に伝えることこそ「小川洋子の世界」と思わせる作品。

散りばめられたキーワードがキラキラ光り、知らず知らずにその世界に引き込まれる。楽しいひと時でした!


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