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評価
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ロシア・ロマノフ王朝最後の皇女・アナスタシアと思われる私の伯母さんは、剥製蒐集家だった亡き伯父さんとの思い出が残る館で剥製に囲まれて、刺繍を趣味にして暮らしていた。硬筆なタッチで読者を魅了する小川ワールド!
私は、父が死に、学費を出してくれることを条件に亡命ロシア人のユーリ伯母さんと一緒に暮らし始める。ニコライ2世の娘と思われる伯母さんは亡き伯父が残してくれた大量の剥製に刺繍を施すことを日常にしていた。ある日、剥製雑誌編集者のオハラが訪ねて来て「ロマノフ王朝最後の皇女ではないか」と雑誌に掲載したことで、ユーリ伯母さんはテレビに出演し、弟のアレクセイとの再会を果たす。
最後まで、伯母さんがアナスタシアなのかどうかの真相は明らかにされないが、歴史ロマンと小川洋子らしい「生と死の往来」というキーワードが散りばめられていて。またしても彼女の紡ぎ出す世界に浸った。2つの世界の境となる扉を、回転の儀式+立ち幅跳びでしか越えられない強迫性障害のニコが物語の進行役を務めている。このキャラクターの設定も素晴らしい!!!
小川洋子の世界を知ってしまい、他の小説が陳腐に思えてしょうがない。これはこれで困ったもんです・・・(笑)。
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