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オリンピックの身代金(上)ー奥田英朗

2021年06月26日 | 読書

評価5

再読(前回2017年4月21日)。
昭和39年の東京五輪を妨害し政府から金を奪うことを企てた男がいた。秋田出身で東大院生の島崎は富が集中する東京への怒りを強め、下層労働者の犠牲の上で行われようとしている五輪への憎しみを強め連続爆破事件を起こす。吉川英治文学賞受賞作。

「労働者の命とは、なんと軽いものか。支配層にとっての人民は、19年前、本土決戦を想定し一億総火の玉と焚きつけた時分から少しも変わっていない。人民は一個の駒として扱われ、国体を維持するための生贄に過ぎない。かつてはそれが戦争であり、今は経済発展だ。東京オリンピックは、その錦の御旗だ。」

五輪を前にして都会が高度経済成長につき進む陰で戦後19年経っても今だ貧困のうちに取り残された地方の姿が島崎の心を突き上げた。

五輪会場の建設作業員へと身を投じた島崎は、綿密な計画の元、五輪最高警備本部幕僚長宅爆破(8月22日)、中野の警察学校爆破(8月29日)、東京モノレール橋脚爆破(9月5日)を実行、国家の名誉と威信をかけて大捜査網を敷く警察側との対決の時=開会式(10月10日)が近づく!

島崎が犯行声明で使った名前が、昭和37年~38年にかけて全国を震撼させた「草加次郎」だったり、昭和39年夏の東京の給水制限率が50%にも達し五輪開催が危ぶまれるほどだったエピソードも織り交ぜながら物語が進行し再読ながらページをめくる手が止まらない。今回の五輪の件もありいろいろと考えさせられる内容だ。

さ~結末は如何に!?




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