12月10日 おはよう日本
世界に通用する研究者の育成に取り組む大学の研究所が
山形県鶴岡市にある。
慶應大学先端生命科学研究所。
最先端のバイオテクノロジーを使った研究が行われている。
白衣を着て実験を行うのは
地元 鶴岡の高校生たちである。
研究者のもとで実験などの手伝いを行うために
合わせて10人が研究助手として働いている。
このうちの1人 高校2年生の梅木佳乃さん。
授業を終えると毎日研究所に向かう。
梅木さんは生物の分野に興味があり
研究所で試験や面接を受け
研究助手に選ばれた。
制服の上から白衣に袖を通すと研究者の顔に。
いま取り組んでいるのが
酵母が生き延びる仕組みを解明する研究である。
人に応用できれば再生医療の発展にもつながると注目されている分野である。
(高校2年生 梅木佳乃さん)
「将来は医療関係の仕事に就きたいと思っているので
いま自分がしている研究が役立つと思うとうれしい。」
梅木さんを指導するのが今年からこの研究所で働くフランス人のガリポンさんである。
梅木さんと実験を共に行ったり
器具の準備などを任せたりしている。
(ガリポン・ジョセフィーヌ特任教授)
「1回教えるだけですぐに身に付けている。
大学生レベルの仕事でもすぐ使いこなしているところが感動的。」
梅木さんには実験を通して研究の楽しさを実感してもらいたいと考えている。
(ガリポン・ジョセフィーヌ特任助教)
「自分の向いている作業とか分野があると思うので
それを見つけて生かせる。
生かしてもらうのが自分の役割。
梅木さんには今も将来も自分のやりたいことを譲らないで
必要な知識を取得してほしい。」
研究活動
そして外国人研究者のガリポンさんらとのふれあいに
梅木さんは大きな刺激を受けている。
(高校2年生 梅木佳乃さん)
「学校とか普通の高校生では体験できないような実験だったり
先生たちとの交流ができて自分の世界が広がった。」
研究助手の制度を導入した冨田勝所長。
高校生にとって最先端の研究に触れる意義は大きいと考えている。
(慶應義塾大学 先端生命科学研究所 冨田勝所長)
「最先端の研究にはまって
1年2年ないしは3年間
それを一生懸命やったという経験と自信と誇り
これは一生のものだと思う。」
研究助手として働いた高校生はこれまでに70人ほど。
経験を生かし
社会で活躍している若者もいる。
大手IT企業ヤフーのエンジニアとして働く
鶴岡出身の五十嵐和弥さん。
五十嵐さんも2年間研究助手として働いた1人である。
冨田所長にあこがれ慶應義塾大学に進学。
研究室でコンピューターを使った解析を学んだことが
今の仕事に就くきっかけとなった。
(ヤフー 五十嵐和弥さん)
「冨田さんや
第一線で活躍されている研究員の方たちの考え方を間近に感じて
自分もそういった第一線の分野で活躍したい。
研究助手を経験していなかったら
まずここにいなかったと感じる。」
地方の若者こそ世界に飛び出していってほしい。
冨田所長は地方からの人材の育成にこだわっている。
(慶應義塾大学 先端生命科学研究所 冨田勝所長)
「自分がやりたいことや得意なことを目いっぱい
世界的な環境で発揮できる場を用意してあげるのは
これからの日本に必要だと思う。
地方都市にあるこの小さな研究所から
面白い人材が次々と生まれていく。
“このからくりは何だ”というふうに世界中の人から注目されたい。」
熱いエールを受けて
高校生たちは
自分が描く将来像に近づくためのカギを見つけ出そうとしている。
こうした取り組みは全国でもあまり例がなく
各地の行政機関や教育機関などが視察に訪れるということである。