日暮しの種 

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ひとの痛みを自分の痛みとして感じる

2017-01-28 17:30:00 | 編集手帳

1月23日 編集手帳

 

 生まれながらに魔法の力を持つエルファバは、
入学した大学で様々な事件に巻き込まれる。
自分では普通の女の子だと思っていても、
周りが勝手に邪悪な魔女の像を作り上げてしまう。
日本でも上演された人気ミュージカル『ウィキッド』である。

オバマ前大統領の娘としてホワイトハウスで8年を過ごしたマリアさんとサーシャさんも、
自身と「世間の目」の大きな隔たりを感じてきただろう。
8年前、
小学生だった二人は、今18歳と15歳だ。

多感な時期を“ファーストチルドレン”として生きた二人に励ましの言葉を贈った人がいる。
オバマ氏の前任ブッシュ元大統領の娘さんたちである。

「ホワイトハウスのプレッシャーや知らない人からの父親批判、
 大統領の家族としての重荷も終わり」
「これまでの経験を大切に。
 情熱を追求し、
 自分が何かを学んで」と、
前途の道しるべを米タイム誌に寄せた。
同じ経験をした人にしか語れない言葉があるのだろう。

二人の心には、
きっと響くものがあったはずである。
青春期にはだれもが、
ひとの痛みを自分の痛みとして感じる能力に秀でた“魔法使い”であるらしい。



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ひふみん“寒風 何するものぞ”

2017-01-28 16:30:00 | 編集手帳

1月21日 編集手帳

 

 アンケートでしばしば見かける設問がある。
「無人島に一つだけ持っていくとすれば、
 何を選びますか?」。
愛読書、ギター、家族の写真…答えは人それぞれだろう。

あれは『将棋年鑑』だったか、
加藤一二三九段の回答を覚えている。
〈羽生さん〉。
羽生善治三冠(王位・王座・棋聖)を連れていく、と。
無人島で将棋三昧の日々を送るつもりらしい。

当時最年少14歳でプロ入りし、
18歳でA級八段に登りつめて“神武以来の天才”と騒がれた。
服装から食事まで、
数々の伝説に「加藤一二三」と名前が彫られている強烈な個性は、
読者もよくご存じだろう。

成績の規定により、
引退が決まったという。
それが報じられた翌日(今月20日)の対局では、
「史上最年長勝利」の記録を77歳0か月で更新している。
江戸期の雑俳集『武玉川(むたまがわ)』の句を思い出す。
〈冬の牡丹(ぼたん)の魂で咲く〉。
寒風、
何するものぞ。
魂で咲く花は、
まだ枯れていない。

原稿を書きながら、
無人島に差し向かいで座る羽生さんの困惑した顔を想像しては、
ひとり、
思い出し笑いに誘われている。
最近の愛称で言えば、“ひふみん”のお人柄である。



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