10月10日 編集手帳
洗練された男のおしゃれを売り言葉に、
資生堂が微香性化粧品「アウスレーゼ」を発売したのは1980年になる。
翌年、
整髪剤のCMがあっと言わせた。
初代貴ノ花と輪島が橋の上でばったり出くわす。
ともに引退し、
髷(まげ)をやめたばかり。
貴ノ花はきれいに整えた輪島のパーマをしげしげと眺め、
尋ねる。
「それ、鬢(びん)付け油?」
「ノー、アウスレーゼ」
険しい顔で花道をずしずしと歩くのに、
笑うと目じりが下がり、
ひょうきんな人柄をにじませた。
それでいてめっぽう強い。
昭和の大相撲を華やがせた元横綱、
輪島大士さんが亡くなった。
数年前に咽頭がんの手術を受けた。
享年70歳。
「黄金の左」にしびれた世代は早すぎないかという思いだろう。
名勝負を何度も演じた大関の貴ノ花とは、
土俵の外では「親友」を互いに自任する仲だったという。
いろいろあった人である。
金銭問題で昭和の末頃に角界を去り、
プロレスラーなどを経て解説者として大相撲の舞台に戻ったのは2009年になる。
そのとき審判部で出迎えたのが親友の息子さんだった。
最近までのいろいろを、
どんな思いで眺めていただろう。