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「黄金の左」 輪島

2018-11-05 07:00:00 | 編集手帳

10月10日 編集手帳 

 

 洗練された男のおしゃれを売り言葉に、
資生堂が微香性化粧品「アウスレーゼ」を発売したのは1980年になる。
翌年、
整髪剤のCMがあっと言わせた。

初代貴ノ花と輪島が橋の上でばったり出くわす。
ともに引退し、
髷(まげ)をやめたばかり。
貴ノ花はきれいに整えた輪島のパーマをしげしげと眺め、
尋ねる。
「それ、鬢(びん)付け油?」
「ノー、アウスレーゼ」

険しい顔で花道をずしずしと歩くのに、
笑うと目じりが下がり、
ひょうきんな人柄をにじませた。
それでいてめっぽう強い。
昭和の大相撲を華やがせた元横綱、
輪島大士さんが亡くなった。

数年前に咽頭がんの手術を受けた。
享年70歳。
「黄金の左」にしびれた世代は早すぎないかという思いだろう。
名勝負を何度も演じた大関の貴ノ花とは、
土俵の外では「親友」を互いに自任する仲だったという。

いろいろあった人である。
金銭問題で昭和の末頃に角界を去り、
プロレスラーなどを経て解説者として大相撲の舞台に戻ったのは2009年になる。
そのとき審判部で出迎えたのが親友の息子さんだった。
最近までのいろいろを、
どんな思いで眺めていただろう。



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