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懐かしい故郷の母

2018-11-28 07:00:00 | 編集手帳

11月3日 編集手帳

 

 松鶴家千とせさんの記事が今春、
本紙都民版に載った。
若い方はご存じないだろうが、
昭和半ば、
「わかるかなぁ、わかんねぇだろうな」で一世を風靡(ふうび)した漫談家である。

すでに80歳となる今も舞台に立ち続ける。
♪夕焼け小焼けで日が暮れて~と歌ったあと、
こう続く。
<おれがむかし夕焼けだったころ、
 弟は小焼けだった。
 父さんは胸焼けで、
 母さんは霜焼けだった。
 わかるかなぁ>

長く同じ芸を続けて気づいたことがある。
「母さんは霜焼けだった」と言ったところで笑うのではなく、
目を潤ませる客がいるという。

一昔前までは冷たい水で炊事や洗濯をするしかなかった。
懐かしい母の背中を思いだし、
涙するのかもしれない。
千とせさん自身、
福島県南相馬市の農家に育ち、
母と畑仕事をした。
「母さんは霜焼けだった」は実話だという。

きのうの「四季」欄に福島の俳人、
永瀬十悟さんの句が紹介された。
<棄郷にはあらず於母影原は霧>。
 霧がたちこめど、
 面影さまよう懐かしい故郷にいつか帰ろう…原発事故で避難した人々のやるせない思いだろう。
千とせさんの「わかるかなぁ」が響いてきた。



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