10月26日 編集手帳
中年の身に無理とは分かっても、
つかのま夢を見るのは自由だろう。
とぼけた味のエッセーが人気の歌人、
穂村弘さん(56)が書いている。
<今からジャニーズの一員になることがあるだろうか…
記者会見のフラッシュを浴びながら、
挨拶をするところを想像する。
「最年長です」と私は恥ずかしそうに云(い)った。
「アニキ」とキムタクが云った。
「いや、芸能界では君が先輩だから」と私は云った>
(『にょっ記』文春文庫)
不肖、
野球中年。
もし指名されたら何と言おう?
穂村氏に感化され、
空想もよぎらせつつプロ野球のドラフト会議中継を眺めさせてもらった。
例年にない傾向だろう。
1巡目、
大阪桐蔭の根尾昂選手ら高校生3人に11球団の指名が集中した。
多くの方が感動を呼んだ夏の甲子園の残像をダブらせながら、
10代の笑顔をのぞき込んだことだろう。
むろん秋田の農業高校を準優勝に導いた吉田くんも1位の列に名を連ねた。
数年前、
塁上わずか1メートルのリードで牽制タッチアウトになった小欄はやはり指名されなかった。
こう言いたい。
ぼくの分まで輝いてくれ。
空想にしても過ぎる、
と周囲の声。